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もう従来の「資源ナショナリズム」では説明がつかない? 原油・穀物の高騰が暗示する新たな“パラダイムシフト”|今週のキーワード 真壁昭夫|ダイヤモンド・オンライン

 重要なポイントは、穀物やエネルギー資源などが、世界的に不足状態に陥りつつあることだ。多くの人口を抱える新興国諸国で経済が大きな成長を遂げているため、食料品や工業製品の原材料に対する需要は、飛躍的に拡大している。


 ところが、穀物や天然資源の産出量は、そう簡単に増えない。しかも、穀物の生産量は、天候などの自然条件に大きく影響される。その結果、供給が需要の増大に追い付けず、価格が上昇しているのである。


 当面、こうした状況が続くと見られ、商品市況の価格上昇傾向が一段と鮮明化することが考えられる。問題は、それがさらに進むと、おカネを出しても穀物などを買うことができない状況になることだ。


 それが現実のものになると、世界経済の様々な分野で「隘路=ボトルネック」が発生し、「経済構造が大きく変わること=パラダイムシフト」が起きることが想定される。原油価格の上昇は、そうした大変革の兆候とも考えられる。

 さらに、世界的に当該品の需要が拡大すると、国がリーダーシップを取って、当該品の国内向け利用を優先し、時には輸出を全面的に禁止する措置を取ることも考えられる。そうしたケースは、一般的に「ナショナリゼーション」と呼ばれる。

 ただ、最近の傾向を見ていると、ナショナリズムよりももう少し大きな範囲の変化が起きている。穀物や資源の生産段階、あるいは、流通の段階で「寡占化=囲い込み」の動きが鮮明になっていることだ。


 つまり、国に代わって民間企業が、自己のベネフィットを増大するために、穀物などの生産、流通に大きな支配力を発揮することを目指して、企業規模を拡大しているのである。

 一方、おカネを払っても、従来ほど多くの量を買うことはできないということは、おカネの価値が下落していることを意味している。つまり、インフレ現象が起き始めているのである。

 第二次世界大戦後の約60年間の世界経済を振り返ると、1989年秋の「ベルリンの壁崩壊=冷戦構造の終焉」までは、基本的に世界経済はインフレ基調が続いていた。第二次大戦で、わが国やドイツの生産設備は大きく破壊され、世界全体の供給能力が低下した。


 その意味では、大規模な戦争は、極めて効率の良い生産調整とも言える。復興需要の拡大と供給能力の低下によって、世界経済はインフレ体質となり、それが冷戦終了まで続いた。


 89年秋にベルリンの壁が崩れ、冷戦構造の終焉を迎えると、旧共産圏諸国が世界経済の枠組みに入ったこともあり、世界的な供給能力は大きく上昇した。それに伴って、モノを売りたいという人が、買いたいという人よりも多くなった。


 その結果、世界的なデフレ、あるいはディスインフレ(インフレでない状態)が優勢になった。90年代に入って、中国などからの安価な製品流入によって、わが国で“価格破壊”という言葉が流行ったことを考えると、わかりやすい。


 ところが今度は、中国やインド、ブラジルなど、多くの人口を抱える国が工業化の段階に入り、庶民の所得水準が大きく上昇し始めた。所得が増えると、人々がまず、「おいしいものを食べたい」「きれいなものを身に着けたい」と思うのは人情だ。


 一挙に需要が盛り上がると同時に、おカネの価値が下落する。経済のパラダイムが、デフレからインフレへとシフトするのである。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20110305#1299295654