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焦点:もうひとつの権力闘争、中国国有企業の光と影

来月、指導部交代を控える中国共産党が、大胆な改革に踏み出している。巨大国有企業の独占解体だ。しかし、国有企業の抵抗は激しい。

大手国有企業の中でも、特に強大な力を持つ送配電会社、国家電網公司――。7月31日、インドが2日連続で大規模な停電に見舞われると、同社の劉振亜・総経理(党中央候補委員)は、すかさず北京に管理職を集めた。緊急会議の議題は「いかにしてインドの二の舞を避けるか」。劉総経理が下した結論は「送配電事業の独占を崩してはならない」というものだった。

温家宝首相は今年、「鉄道・電力産業などの改革を進め、非国有経済の発展を促す政策を実行・完成させる必要がある」と表明、独占事業の解体に乗り出した。

現在、国有企業とその関連会社は、国内の生産と雇用の半分以上を生み出している。米経済誌フォーチュンの2012年版世界企業500社にランクインした中国本土企業は70社。うち65社が国有企業だ。劉総経理が率いる国家電網公司は世界7位に位置する。

エコノミストは、肥大化した国有企業がイノベーションを妨げ、民業を圧迫していると批判。「今後、輸出の伸び悩みが予想されるため、国有企業の独占を崩し、民間の潜在力を活かす必要がある」(中信証券のチーフエコノミスト、諸建芳氏)との見方が多い。


ただ、共産党が公有制の根本的な転換や、巨大国有企業の民営化を検討しているわけではない。党が目指しているのは、大企業の分割や、現在国有企業が独占しているエネルギー・通信・鉄道・銀行業への民間資本の導入だ。

新指導部が大手国有企業との対決姿勢をどこまで強めるかは、まだ不透明だ。ただ、複数の規制当局筋は、次期最高指導者への就任が確実視されている習近平副主席などの経歴を踏まえると、民間を活用する方向で改革を進める公算が大きいと指摘する。習氏は、市場経済が発達する福建省浙江省上海市でトップを務めた人物だ。

もっとも、国有企業も強大な権限を握っている。大手国有企業は、国有銀行からほぼ無制限に融資を受けられ、国の重要産業を独占。そのトップは共産党内で要職を担い、政治的なコネクションも豊富だ。劉総経理も、党の最高指導機関である中央委員会で候補委員を務めている。


党の中央理論誌「求是」は先月、国有企業批判は中国経済をおとしめようとする欧米の陰謀だとする論文を掲載。「民営化が事業独占の問題をすべて解決すると夢想してはならない」と論じた。

銀行業界では今年、改革派が白星をあげた。6月7日、中国人民銀行中央銀行)は預金・貸出金利の一部自由化を発表。預金者や融資先の獲得で、銀行に競争を促した。


改革を主導したのは、ここでも温首相だ。首相は4月「銀行があまりにもたやすく利益を得ている」として、改革の必要性を訴えていた。


ただ、関係筋によると、この改革は国有銀行の激しい抵抗にあった。発表の数日前、北京で開かれた極秘会議では、改革を進める周小川・人民銀行総裁に、国有銀行幹部が激しく詰め寄った。会議に出席した中国銀行の肖鋼総経理は感情的になり、金利自由化は銀行業界を危機にさらすと、何度も机を叩いて訴えたという。