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焦点:中国の今年の課題は経済安定化、不均衡是正の前提条件

中国の新指導部は今年、住宅価格の急騰とインフレを防ぎながら雇用を高水準に保つことで、経済を安定化させる必要がある。経済の安定なしには輸出主導型の成長モデルを見直し、金融、産業、所得の不均衡に挑むことは不可能だ。

<インフレ>


多くのアナリストによると、全人代で決まると見られる2013年成長率目標の7.5%から実態が大きくかい離しないよう導くことが最優先課題だ。減速し過ぎると雇用が脅かされ、加速し過ぎると投機的な投資が膨らむ。


世界金融危機の2008年には政府が即座に4兆元(6400億ドル)の景気対策を実行したことで、不動産バブルに火が付き地方政府はインフラ投資のための借り入れに殺到。政府は以来、インフレと地方政府債務10兆7000億元を抑えようと格闘してきた。政府はこの二の舞を避けるため、迅速に行動を起こす必要がある。


<根を下ろした貧富の格差>


最大の不均衡は国民13億人の貧富の格差だ。胡潤研究員の報告書によると、中国には年収数百万ドルの富裕層が270万人、数十億ドルの富豪が251人いる。一方で国連のデータによると国民の13%は日給1.25ドル未満で暮らし、都市部住民の平均可処分所得は年平均2万1810元(3500ドル)にとどまっている。


アジア開発銀行(ADB)中国経済部門を統括するヨランダ・フェルナンデス・ロメン氏は「不公平の根源は30年前に採用された成長モデルにある」と言う。


多くのアナリストによると、最も緊急の改革を要するのは「戸口」と呼ばれる戸籍制度だ。これを改革すれば不公平感が和らぎ内需が押し上げられて経済成長けん引の主役が入れ替わる。


農村部労働人口2億5000万人強のうち、約1億5800万人が出稼ぎで都市に移動しているが、医療や教育などのサービスを受けられず、貯蓄に精を出さざるを得ない。


HSBCのアナリストチームによると、中国の31州は現在、「第三世界」の最貧諸国に等しい状態だが、戸籍制度を変更すれば2020年までに一番手、二番手の先進国を合わせたのと同水準の富を生み出せるようになる。


マッキンゼーの調査では、2020年までに中国都市部家計の51%は可処分所得が1万6000─3万5000ドルに達し、世界の主要消費者層の一角を占めるようになる。2010年にはこの比率がわずか6%だった。


内需


国内消費が増えれば輸出依存度は減る。中国の輸出は国内総生産(GDP)の約30%を占め、外需、あるいは外資系ビジネスは中国で推計2億人の雇用を支えている。


政府は、中国経済にこれほど強く寄与する輸出を抑え付けることは避け、企業が高付加価値製品へと軸足を移すことを望んでいる。


しかし、中国企業が単純な組み立てと海外輸出から脱し、製品開発を模索するようになれば、貿易相手国との緊張を生むだろう。


中国テレビメーカー首位のTCL(000100.SZ: 株価, 企業情報, レポート)は、技術を革新して国内競争力を付けるためにもグローバルな規模への拡大が必要だと主張する。同社は海外に生産拠点を20カ所抱えており、トムソン・リー会長兼最高経営責任者(CEO)は、海外市場向けの生産能力確立は実質的な参入コストだと言う。


企業の海外進出は、中国のもう一つの不均衡である3兆3000億ドルの外貨準備を減らすことにも役立つ。


<金融自由化>


国内株式市場の透明性と規制を改善し、消費者への投資信託販売を拡大すれば、不動産と影の銀行という問題部門から投機資金を移動させられる可能性がある。


中国における影の銀行部門は、預金を集めて正規の銀行ルート外に貸し出す資産運用商品で、その与信総額は最低1兆ドル規模と推計され、伝統的な融資の3倍の速度で拡大している。影の銀行は政府が抑制を狙う投機的な不動産開発の主な資金源だ。


2010年以来、数々の不動産価格鎮静策が導入されたにもかかわらず、昨年実施された緩やかな金融緩和は既に住宅価格を押し上げ始めている。


不動産価格の高騰は社会的緊張をもたらしているが、重債務を抱えた地方政府にとっては不可欠の収入源であり、影の銀行部門においては簿外貸し出しというビジネスを生み出している。格付け機関と国際的投資家はこの点を懸念する。


都市化に伴う課題は、既にGDPの約50%に及ぶ設備投資をさらに増やす必要が生じることだ。国際通貨基金IMF)はこの結果、世界的な設備過剰が生じて不均衡是正が不可避になると懸念している。


昨年12月の中央経済工作会議では経済改革に向けた「明確な全体計画と工程表」が約束された。しかしコンサルタント会社GKドラゴノミクスのマネジングディレクター、アーサー・クローバー氏は「必要と考えられている措置を断行する力が彼らにあるだろうか」と不安を示した。