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米中間ではすでにアメリカが鉄鋼製品などに高い関税をかけて輸入を制限する措置を発動し、中国が、報復として豚肉などに関税をかけて対立しています。


トランプ政権は、6日、今度は、中国がアメリカ企業のハイテク技術などを不当に手に入れて知的財産権を侵害しているとして、通商法301条に基づいて、中国からの輸入品に25%の関税を上乗せする制裁措置を発動します。


対象になるのは、航空や産業用ロボットなど、中国が強化を目指しているハイテク分野の製品など818品目で、340億ドル規模、日本円にして3兆7000億円余りに上ります。トランプ政権は、関税の対象を500億ドル規模まで広げていく方針です。


これに対して、中国も報復としてアメリカの大豆や自動車などに同じ規模で25%の関税を上乗せして対抗する方針で、米中の貿易摩擦は、かつてないほど激しくなります。


トランプ政権は、中国側が報復するならば、追加的に、最大4000億ドル規模の輸入品に高い関税をかける構えで、エスカレートする貿易摩擦が世界経済に及ぼす影響が懸念されます。

トランプ政権が中国からの輸入品だけに狙いを絞って関税をかけるのは、アメリカが抱える巨額の貿易赤字に強い不満があるからです。


アメリカは海外からの輸入が輸出をはるかに上回り、慢性的に、貿易赤字を生み出し、去年1年間の赤字は、7961億ドルと、9年ぶりの規模に拡大しました。中でも、中国とのやり取りで抱える貿易赤字は、3752億ドルに上り、全体の半分近くを占めています。


しかも、前の年に比べて8.1%増え、過去最大に膨らんでいます。トランプ大統領は先月、ツイッターに、「8000億ドル近い貿易赤字を抱えて、貿易戦争に負けるわけにはいかない」と投稿して、貿易赤字への不満を改めて強調しました。


ことし秋には議会の中間選挙を控えていることから、トランプ大統領は、激しい摩擦が生じても中国に貿易不均衡の是正を迫っているのです。

今回の関税は中国がアメリカの知的財産権を侵害していることを理由にした通商法301条に基づいた制裁措置に当たります。


6日から段階的に発動され第一弾は、818品目が対象で340億ドル規模、日本円にして3兆7000億円余りの輸入品に関税をかけます。


第2弾の対象は、284品目、160億ドル規模、1兆7000億円余りで、合わせて1102品目、500億ドル規模に達します。


対象品目には、航空、鉄道、原子炉、それに半導体や産業用ロボットなど、ハイテク製品が含まれています。


今回の関税の背景にあるのが、中国政府がハイテク産業の強化を狙って、3年前に発表した「中国製造2025」という政府主導の産業政策です。トランプ政権やアメリカ議会には、ハイテク産業の育成で中国がアメリカを追い抜き経済の覇権を奪うのではないかという強い警戒感があります。


中国政府が出資する企業や投資ファンドなどが、アメリカ企業を買収したり、サイバー攻撃などで企業秘密を盗み取ったりして、アメリカのハイテク技術を不当に手に入れているという反発も広がっています。


このため、トランプ政権や議会の間では、アメリカ企業の買収や投資に関する規制を強化しようという動きも出ています。

トランプ大統領保護主義的な政策や米中の貿易摩擦が世界経済にマイナスなるという反発や懸念の声が世界中に広がっています。


先月カナダで開かれた主要7か国のG7サミットはトランプ政権の対応に各国が激しく反発して激論となり、なんとか首脳宣言を採択したものの、閉幕後、トランプ大統領が「首脳宣言は承認しない」などとツイッターに投稿し、アメリカの孤立とG7内の亀裂が表面化しました。


IMF国際通貨基金のラガルド専務理事は、先月14日の記者会見で、「貿易をめぐる一方的な措置は、世界経済にとって破壊的だ」と述べ、トランプ政権の対応が先行きのリスクになりかねないと指摘しました。


アメリカの中央銀行にあたるFRB連邦準備制度理事会のパウエル議長も、先月20日、「企業の間で、投資や雇用を先送りする動きがあり、懸念が高まっている」と述べ、貿易摩擦が激しくなれば景気が冷え込むと警戒感を示しました。


また、米中の貿易摩擦が激しくなれば、中国に電子部品や、工作機械などを大量に輸出している日本企業への影響は避けられないという懸念の声が広がっています。


しかし、トランプ大統領は、先月27日の演説で、「われわれは富を略奪し、雇用を奪った、悲惨な貿易を見直す」と述べて、強硬な姿勢を崩す気配は全く見られません。

アメリカで中国との貿易の玄関口といえばカリフォルニア州のロサンゼルス港です。


全米最大のコンテナ貨物の取扱量を誇る港では、米中間の貿易摩擦によって今後、取扱量が15%程度減ると予想し、懸念を強めています。


ロサンゼルス港は、太平洋に面した全米で最大のコンテナ港で、去年の取扱量は合わせて2840億ドルにのぼりました。このうち、中国との直接の輸出入は半分以上の1450億ドルを占め、360億ドルで2位の日本を大きく上回っています。


中国から輸入される主な品目は家具や衣料品、電子機器など、アメリカから中国への輸出では電子部品や飼料、穀物などが目立ちます。


ロサンゼルス港では、トランプ政権が発動する新たな制裁措置と中国の対抗措置で、今後の貨物の取り扱いが15%程度減ると予想しています。


ロサンゼルス市の元幹部で貿易を推進する団体「ワールド・トレード・センター・ロサンゼルス」の代表を務めるスティーブン・チャンさんは、「これは第一弾にすぎず、全面的な貿易戦争に発展した場合、米中の貿易が激減することを恐れている」と述べました。


そのうえで「高い関税がかかれば商品の価格が上昇し、個人消費が鈍化しかねない。その結果、貿易量が減ってコンテナの運賃が値上がりし、さらに価格が押し上げられるという悪循環に陥る」と述べ貿易摩擦の激化に懸念を示しました。

トランプ政権の貿易政策をめぐる今後の焦点は、輸入車の関税を本当に引き上げるかどうかです。仮に自動車も対象になれば、日本経済にも深刻な影響が避けられません。


トランプ政権は、通商拡大法232条に基づいて、輸入車や自動車部品に追加の関税をかけることを検討しています。


このため、鉄鋼やアルミニウムに続いて輸入車が、安全保障への脅威になっていないか調査に入っています。


アメリカに乗用車を輸入するいまは2.5%の関税がかかりますが、トランプ大統領は関税は「20%」だと述べています。


本当に決まれば、深刻な打撃が避けられないと、日本やドイツをはじめ各国に強い反対が広がっています。自動車部品に関税がかかれば、コストが大きく増加するとGM=ゼネラルモーターズなどアメリカの自動車メーカーも懸念を表明しています。


トランプ政権は、今月19日と20日に、産業界などの意見を聞く公聴会を開き、月内にも調査を終える見通しです。


調査の結果を受けて、アメリカ商務省が自動車や部品への関税について原案をまとめ、トランプ大統領に判断を委ねることにしています。


日本からアメリカへの自動車の輸出額は、年間で4兆5600億円余りに上り、アメリカへの輸出全体の30%を占める主要な輸出製品だけに、トランプ大統領の判断は日本にとって極めて重いものになります。