https://d1021.hatenadiary.com
http://d1021.hatenablog.com

『ワープする宇宙 5次元時空の謎を解く』

 子供のころ、私は頭を使う遊びが好きだった。数学の問題を解くのも楽しかったし、『不思議の国のアリス』のような本にも夢中になった。ただ、読書は大好きだったのだが、科学の本にはあまり心をひかれなかった。どうも自分に合わないというか、とにかく夢中になって取り組む気にはなれなかった。科学者をやたらと褒めちぎって、読者を見下しているような感じがしたし、そうでなければ、ただ退屈だった。著者は答えをぼかし、その答えを見つけた人を称えるばかりで、科学そのものや、科学者がどうやってその答えにたどりついたかを書くのは二の次にしているように思えた。私が知りたいのはそちらの部分だったのに。
 でも科学を学んでいくうちに、やがて大好きになった。当時はよくわかっていなかったけれど、実際に自分が物理学者になってみて、いまはこんなふうに思うのだ――私が子供のころに接したものは結局のところ科学ではなかったのだと。未知のものに取り組むのは、ぞくぞくするほどおもしろい。一見まったく関係なさそうな現象のあいだに意外なつながりを見つけたり、問題を解いて、この世界の驚くべき特徴を予言したりするのは、とても刺激的なことだった。そして物理学者になったいま、私はあらためて思う。科学はまさに生き物で、つねに発展しつづけているのだと。科学の魅力は、答えだけではない。そこのいたるまでのゲームやなぞなぞに参加すること自体も楽しいのだ。

 いま、私たちのまえには、無視できない新しい世界観が現れている。余剰次元によって、物理学者はこの宇宙に関する考え方を変えさせられた。そして余剰次元をこの世界に結びつけようとすると、必然的に、すでに確立されているさまざまな物理学の考えが関わってくる。だから余剰次元というのは、興味をそそられる新しい見方を通じて、すでに正しいと証明されている旧来の宇宙についての事実を見直させるものでもあるのだ。