https://d1021.hatenadiary.com
http://d1021.hatenablog.com

『若い読者のための世界史(上)』
P119

 コリントスの集会で、このようなアレクサンドロスギリシアの指導者の前にあらわれたとき、人びとはひきつけられ、彼に親しいことばをなげかけた。例外が、ひとりいた。それは、ディオゲネスという名の、奇人として知られていた哲学者であった。彼は、ブッダの教えと似た考えをもっていた。何かを所有し、何かを必要とすることは、考えることを邪魔し、安らかに生きることをさまたげる、というのである。それゆえ彼は、すべてを投げすて、コリントスの広場の樽のなかで、ほとんど裸で、あたかも野良犬のように、だれにもかまわれず、自由に暮らしていた。アレクサンドロスは、この不思議な変人を知ろうと彼の住まいを訪ねた。彼は、豪華なよろいをつけ、みごとな羽飾りのついた兜をかぶり、樽の前に立った。「わたしはおまえが気に入った。何でものぞむものをかなえてあげよう」と彼はいった。そのとき、気持ち良く日向に寝ていたディオゲネスは、「王さま、ひとつのお願いがあります」と答えた。「何だ?」−−「王さま、あなたのせいで陰になります。少しばかりよけてくださいませんか」。このことは、アレクサンドロスに強い感銘をあたえたとみえ、彼は「もしアレクサンドロスでなければ、わたしはディオゲネスでありたい」といったという。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20150124#1422096187
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20120430#1335797106