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外れ馬券も経費と認める判決 最高裁 NHKニュース

この裁判は、競馬の勝ち馬を予想するソフトを使って、インターネット上で馬券の大量購入を繰り返していた大阪の元会社員の被告が、当り馬券で得た通算の払戻金30億円余りを税務申告せず、脱税の罪に問われていたものです。
元会社員は29億円を外れ馬券も含む馬券の購入に費やしていて、本人にとっての利益は1億円余りでしたが、国税庁は当り馬券の購入費だけしか必要経費として控除を認めていないため、起訴された脱税額は5億7000万円に上りました。
この裁判で最高裁判所第3小法廷の岡部喜代子裁判長は、「長期間にわたり、網羅的な購入をして多額の利益を恒常的にあげ、外れも含む一連の馬券の購入が経済活動と言える場合には、外れ馬券の購入費も経費と認めるべきだ」とする判断を示しました。そのうえで脱税額を5000万円余りと認定し、元会社員に執行猶予のついた有罪判決を言い渡しました。
国税庁は運用の見直しを迫られますが、競馬の目的が娯楽なのか経済活動なのかをどう見極めていくのか、課税の公平性を保つうえで難しい課題を突きつけられることになりました。

弁護士で、税金を巡る訴訟に詳しい、青山学院大学法学部の三木義一教授は最高裁の判決について「インターネットで馬券を網羅的に購入する行為は、もはやギャンブルといえず営利を目的とした経済活動だと判断していて実態に即している」と評価しています。
そのうえで「国税庁は昭和40年代に作られた判断基準を画一的に運用するのを改めて、不合理な課税問題が起きないように実態に合った課税をしていく必要がある」と指摘しました。

馬券を大量に購入して得た巨額の払戻金について、国税庁と裁判所では所得の分類に対する判断が異なりました。
国税庁の運用では、競馬の払戻金は、福引きの賞金や保険の満期で受け取る金などと同じ、一時的または偶発的に生じた所得、「一時所得」に分類されています。
税法では、「一時所得」を計算する際に必要経費として控除できるのは、「収入の発生に直接要した金額」と規定されています。
このため国税庁は、競馬の払戻金への課税では、当り馬券の購入費だけを必要経費とし、外れ馬券の購入費は経費と認めていませんでした。
今回の裁判で元会社員は払戻金を得ても納税分を残さず、その大半を次の馬券の購入費に充てていました。
こうして得た払戻金は、通算で30億円余りに上りますが、その一方で、このうち29億円は馬券に費やしていて、元会社員にとっての「もうけ」は差し引き1億円余りでした。
ただ国税庁の運用では、29億円のほとんどを占める外れ馬券の購入費は一切経費として認められないため、30億円余りの払戻金から当たり馬券の購入費だけを控除して計算した、5億7000万円が納税すべき額とされました。
これに対して裁判所は、網羅的に多数回、馬券を購入する行為は競馬を娯楽として楽しむものとはいえず、もはや経済活動に当たるとして「雑所得」に分類すべきだと判断しました。
この「雑所得」には先物取引やいわゆるFX取引などがあり、年間を通じた実質的な利益に課税されます。
税法では、「所得につながる業務で生じた費用の額」を経費として控除できるとされているため、外れ馬券の購入費も一連の経済活動に必要な経費として認められることになります。
その結果、元会社員の納税すべき額は5000万円まで大幅に減ることになったのです。