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弁護士失墜の大元凶、ロースクール解体勧告 | 産業・業界 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト

ロースクールの初年度学費は平均して国立で100万円、私立だと150万円程度。また弁護士になるには、司法試験合格後に1年間の司法修習を終えることが必要だが、従来は給付されていた年300万円の給料が、12年度(65期)から貸与制に移行。多くの新人弁護士たちは、ロースクールでの奨学金と合わせて数百万円、人によっては1000万円近くの借金を負ってのスタートとなる。

 だが、肝心の弁護士需要が一向に膨らんでいない。


新規事件数の指標とされる、第一審(地裁)の民事通常訴訟件数は01年の15・5万件から09年の23.5万件へと一見順調に伸びている。だがそのうち6割を占めるのが、「過払い金返還請求訴訟」だった。これを除くと、事件数は01年時よりも落ちこんでいる。


法律相談の総数は01年の47万件から11年には61万件へと増えているが、有料法律相談は半減。顧問料収入も厳しい。日本弁護士連合会によれば、顧問先のある弁護士の割合は00年の80%から09年には63.5%まで減少している。


こうした弁護士の従来業務の縮小に加え、新規分野の広がりも限定的だ。「意見書」で質的に多様化・高度化する根拠として挙げられた、専門事件の件数も伸び悩む。医療関連や知的財産権関連の訴訟はむしろ減少している。成年後見関連は数こそ増えているものの、「容易な案件は司法書士社会福祉士に回され、弁護士に振られるのは割に合わないケースばかり」(埼玉県の弁護士)だ。増加が期待された企業内弁護士は800人弱、公務員弁護士も150人弱程度にとどまっている。


6月に出た政府の法曹養成制度検討会議の取りまとめでは、弁護士など法曹有資格者の活動領域拡大を一層図るとしている。だが同会議内でも受け入れ側からは、「企業内弁護士が長期にわたり増加し続けるとは考えられない」(萩原敏孝委員・小松製作所特別顧問)「(採用増は)行財政改革推進中で困難」(清原慶子委員・三鷹市長)と否定的な声が上がる。


人員急増と裏腹に、従来業務は減少し、新たな職域拡大も望み薄。そんな逆風に直面しているのが、新人弁護士たちだ。

国の弁護士の所得に関するアンケート調査によれば、新人弁護士の所得(中央値)は07年の659万円から、10年には480万円へと落ち込んでいる。さらに状況は悪化している。「一般民事中心の事務所のイソ弁(勤務弁護士)なら、月収30万円で御の字」(20代弁護士)「同期には月収20万円台もざらにいる」(別の20代弁護士)といったあんばいだ。


それでも給料が出るだけマシだ。就職できなければ、ノキ弁、もしくは研修所卒業直後に自分の事務所を立ち上げ「即独」することになる。


イソ弁であってもほとんどの弁護士は個人事業主扱いのため、社会保険料はすべて自己負担。弁護士会費も重い。東京では新人は月額2・3万円だが、5年目には5万円にハネ上がる。会員数の少ない地方では、会費は年間100万円を超える。

かつて5年超が目安だったイソ弁期間も短期化。経験不足の若手が独立し、実務にも支障が生じている。「裁判所から指摘されても何が足りないのか理解できない若手が多い」「法的主張がまったくなく、人格非難に終始する準備書面が増えた」と、中堅・ベテラン弁護士は嘆く。

真の問題は、ロースクールでの教育内容が徹頭徹尾、法曹志望者のニーズとは懸け離れていることにある。


ロースクールでは法律を基礎から教えてくれるものだと思っていたが、違っていた」。都内の中堅ロースクールを修了した女性(26)は振り返る。法学未修者に基本科目を教える研究者の教授からは、予習で教科書に当たる基本書を読んでくるよう言われるが、法律知識がゼロなので理解は進まない。結局、予備校の入門講座で補った。


「基本書は初学者が読んでもまったくわからないものが多い。法学未修者を積極的に受け入れる建前なのに、一般的にロースクールには十分な初学者教育を行う力はない」。青山学院大学など複数のロースクールで教えた、和田吉弘弁護士は語る。


というのも、実は制度上、ロースクールの教員のうち弁護士など法曹実務家の比率は2割で足りる。残り8割は、司法試験に合格しておらず、司法修習の経験もない研究者が占めることができるためだ。特定分野の専門研究と、実務家の養成教育とでは、求められるものの差は大きい。


初学者教育の欠如に加え、ロースクールでは肝心の司法試験への対応も表向きいっさい行われない。


それは、試験の得点だけによる選抜を否定し、ロースクールを中核とする法曹養成を不可欠とした、「司法制度改革の理念」を追求すべく作られているからだ。


この理念の裏には旧司法試験対策で中核となっていた受験予備校への、研究者教員の敵愾心、嫉妬心がある。法学部の講義から受験生を奪った「主犯」であるためだ。


司法試験の要は今も昔も論文試験だが、受験生は類似問題を解いて時間内に論文にまとめる答案練習を繰り返す。これは「起案教育」として司法研修所でも行われてきた、法曹養成に欠かせない手法である。それがロースクールの授業では御法度とされてきた。理由はただ一つ。「予備校的だから」である。


「歯を食いしばって、とにかく司法試験のことはいっさい忘れて教育するように」。教育が適切に行われているかの認証を行う評価委員からこう告げられたとき、愛知大学法科大学院の森山文昭教授は耳を疑った。