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コラム:ギリシャと中国で露呈した「金融システムの問題」 | Reuters

2011年に危機が始まる前の6年間にギリシャの経常赤字は、国内総生産(GDP)比で平均で12%に達していた。外国の貸し手が赤字をファイナンスして、実質的にギリシャ国民の支出の8分の1近くの資金を提供した。その結果、債務額は国際通貨基金IMF)の推計で3110億ユーロ、つまりGDPの170%に膨らんでしまった。これほどの額なら、IMFが一部減免する必要があると考えても不思議でない。


債権者の立場で見ると、ほとんどの資金は無駄に使われた。しかし元来、あまりきっちりした国とはいえないギリシャなら、そうなるであろうと予想すべきだった。誤算を招いたもう1つの要因は、債務に備わった標準的な構造が間違った信頼感を債権者に植え付けたことだ。利払い額と返済期限が確実に決まっていることで、ギリシャ政府と銀行への融資が本当はどういう性質なのかが見えなくなった。リスクが低い金融取引にみえたが、実は基本的資源の恒久的な移転だった。


ついに貸し手は逃げ出してしまった。ギリシャは過去の債務の返済要求と購買力の急低下に直面。対外赤字がもはやファイナンスできなくなり、GDPが12%目減りする事態は不可避となった。そして実際のGDPの減少規模は、政府に対する金融面の圧力が非常に強かったこともあって、想定のおよそ2倍に達した。


もう少し地に足の着いた金融システムであったなら、与信の規模はずっと小さかっただろうし、突然新規の融資が消えても衝撃度ははるかに弱かっただろう。

一方で中国株の足元の混乱が示唆するのは、株式もまた非現実的な世界を招き寄せるものだということだ。15日現在、上海総合指数は1年前を80%強上回る水準にあるものの、6月初めにつけた高値からは25%を超える下落となっている。ところが実体経済の観点では、株価高騰とその一部が剥げ落ちた事態は双方ともまぼろしにすぎない。


株価の乱高下はまだ中国経済にはっきりした影響を及ぼしてはいない。15日発表された政府統計によると、第2・四半期GDP成長率は7%と堅調さを保っている。


中国人は幸運でもある。もっと金融市場が発達した国なら、株式市場のバブルは流行産業への無益な投資を生み、株価急落で投資家と、投資家から値上がり益が消し飛んだことを聞いたすべての人の信頼感が動揺をきたして経済が打撃を受けかねない。


それでも中国当局は、株安が同国を危険にさらすと考えているようだ。値上がり局面はほぼ野放しにしてきたのに、値下がりが加速するのを防ごうと極めて活発な介入に乗り出している。


こうした一方に偏った規制のやり方は象徴的だ。金融システムが持続不可能な自信を生み出している場合、それが実体経済をゆがめていたとしても政府は一般的に熱狂の渦へと吸い寄せられてしまう。

ギリシャでは、足場の脆弱な経済に大規模な資金を積極的に投入することがユーロ圏への信用の証拠として歓迎された。


反対にどの国の当局も、金融システムが破裂した際には対応に動く傾向がある。08年の世界金融危機後には、金融の枠組みを根本的に変える必要があるとの議論があった。もっともそれは実現しておらず、欧州連合(EU)から中国に至るまで、当局者たちは一様にどうしたらよいか方針が定まっていないように見える。


その理由は能力の欠如や金融業界の影響力が強過ぎることにあるのかもしれないが、一番の問題は考え方そのものという面が大きい。規制する側とされる側はともに、金融が実体経済からあまりにかけ離れるのを放置する危険性を十分に認識していない。


利払い額と満期が確定した融資に頼り続けているのが典型例だ。そうした金融商品は、インフレがめったに発生することなく投資ファンドもほとんど存在せず、人や資金の移動はずっと困難で情報も少ないといった前近代の経済においては最も害が少なかったのかもしれない。


ただ現在は、金融システムがより耐久性と柔軟性を備えた商品を求めていることは明らかだ。ギリシャの債務再編が実施されれば、その面で重大な試金石になる可能性がある。


中国は、株式市場に入ってくるギャンブラーが少なくなれば経済は安全になるだろう。


税制と介入措置を適切に組み合わせれば、そうするのはさして困難でもない。


もっとも当局は、金融市場が自律的に規制するのだとなおも信じている気持ちを捨て去る必要がある。むしろ金融は実体経済の手におえない使用人で、すぐに暴れ出してしまう性質を持っているとみなして取り扱う方が望ましい。