ことしの防衛白書は、「海洋をめぐる動向」という新たな項目を設け、「国際法秩序とは相容れない独自の主張に基づき、自国の権利を一方的に主張し、または行動する事例が多く見られるようになっている」として、中国が、南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島で埋め立ての開発活動を急速かつ大規模に推進していることなどを取り上げています。
そのうえで、中国が南シナ海や東シナ海で海洋進出を活発化させていることについて、「不測の事態を招きかねない危険な行動だ」として、強い懸念を示しています。
さらに、自民党から「記述が少ない」という指摘が出されていた、中国が東シナ海で進めている新たなガス田の開発について、別の章で、「新たな施設の建設作業などを進めていることが確認され、一方的な開発を進めていることに対し繰り返し抗議し、作業の中止などを求めている」としています。
また、北朝鮮については、弾道ミサイルを潜水艦から発射する実験に成功したと発表したことを取り上げ、「より現実的で差し迫った問題となっており、その動向が強く懸念される」としています。
一方、集団的自衛権の行使を可能にすることなどを盛り込んだ安全保障関連法案について、検討の経緯や法案の概要を紹介しているほか、ことし4月に決定した、新たな日米防衛協力の指針、ガイドラインの内容なども盛り込んでいます。
中谷防衛大臣は閣議のあとの記者会見で、中国に関係する記述について、「中国軍の活動が、わが国周辺での海空域において急速に拡大、活発化している現状について国内外にその事実を正確に伝え、防衛省の分析・評価を示す目的で記述した。透明性の不足と相まってわが国を含む地域や国際社会の懸念事項であり、今後も強い関心を持って注視していく」と述べました。