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IMF 人民元を世界の主要な通貨に NHKニュース

IMFは、ドル、ユーロ、イギリスのポンド、それに日本の円の世界の主要な4つの通貨をもとに「SDR」と言われる特殊な資産を作っています。SDRは、IMFの加盟国内でお金のような働きをし、外貨不足に陥ったときなどの支払いに充てることができます。
IMFは世界各国の経済力などを踏まえ、SDRの通貨を5年ごとに見直していて、今回、中国の人民元を5つ目の通貨に加える方針を決めました。IMFは、中国の貿易額の大きさは採用の基準を十分に満たしているうえ、貿易の決済などでの利用も着実に拡大し、国際的な金融取引の中で使い勝手がよいかどうかという基準も満たしていると判断しました。
ラガルド専務理事は声明で、「人民元を主要通貨に加えることを支持している」と表明し、今月30日、理事会を開いて承認を求めるとしています。
中国は、人民元の存在感を高めるために主要な通貨に加えるよう強く求めていて、IMFの理事会が採用を決めれば、人民元がドルや円など先進国の通貨と並ぶ主要通貨に位置づけられることになります。


中国の中央銀行に当たる中国人民銀行は14日朝、「歓迎する」というコメントを発表しました。この中で中国人民銀行は「人民元をSDRに加えることは、現在の国際通貨システムを完全なものにするのに役立ち、中国と世界の両方にとって利益になる」と主張したうえで、「中国は各国が人民元のSDR入りを支持することを望む。30日の理事会の結果に期待し、それを尊重する」としています。

IMF国際通貨基金の「SDR」は、加盟各国で対外的な支払いに充てる外貨が不足したときに、ドルやユーロ、円などと交換できる特別な資産です。仕組みがスタートしたのは1969年で、当時の為替制度、固定相場制のもとで、世界の各国は支払いのためにドルや金を蓄えていましたが、ドルが不足してきたことからそれを補うため、いざというときの支払いに充てられる資産としてIMFが作りました。
その当時、SDRの価値は1SDR=1ドルと決められていました。その後、世界の主要国の為替制度が今のような変動相場制に変わってからは、SDRは、世界の16の通貨の変動に連動して価値が決まるようになりました。その後、通貨の絞り込みが進み、現在は、貿易量が大きく金融市場で頻繁に利用されるドル、ユーロ、イギリスのポンド、それに日本の円の4つの主要な通貨を組み合わせて、SDRの価値が決まる仕組みになりました。
ちなみにSDRの価値は4つの通貨のレートに応じて日々変動し、11月13日時点では、1SDR=およそ1.38ドルとなっています。
IMFは、SDRのもとになる通貨の組み合わせを、世界各国の経済の実力に見合う形で5年に一度、見直していて、ことしがその見直しの年に当たります。中国は、以前から見直しに合わせて人民元をSDRの通貨に含めるようIMFに求めてきました。認められれば、人民元がドルや円など先進国の通貨と並ぶ世界の主要な通貨に位置づけられ、人民元の国際化につながるためです。
IMFは、5年前の2010年の見直しでは、中国の貿易量はすでに十分な基準を満たしているものの、人民元は世界の金融市場で広く利用されているとは言えないとして、採用を見合わせました。しかし、その後、貿易の決済などで人民元の利用は年々拡大していて、自由な取り引きが制限されるなどの課題はあるものの、IMF内部や加盟各国の間にも人民元が主要な通貨の仲間入りをするのは「時間の問題だ」という見方が広がっていました。

人民元を、ドルや円などと並ぶ世界の主要な通貨に位置づけてSDRの通貨に加えることについて支持を表明する国が広がっています。
このうちイギリスは、人民元の海外での取り引き拠点の中心となって世界的な金融センター「シティ−」の競争力を強化しようと、中国と金融面での関係強化を進めてきました。
またドイツなども人民元の海外取り引きの拠点を目指していて、存在感を増す人民元の勢いを取り込もうという競争が激しくなっています。
このため、ヨーロッパの主要国は、中国主導の国際金融機関AIIB=アジアインフラ投資銀行にいち早く参加したのと同じように、早い段階からSDRの通貨に人民元を加えることに前向きでした。
一方、アメリカや日本は「IMFが設定した基準を満たすならば人民元を加えることを支持する」という立場で、IMFの判断を待つ姿勢を示してきました。アメリカなどには、人民元がドルや円などと並ぶ主要な通貨に位置づけられれば、政府による介入などで為替レートが管理され、自由な取り引きが制限されている人民元改革の加速を迫ることも可能になるという思惑もあるものとみられます。

人民元が世界の主要な通貨に位置づけられ、SDRの通貨に加わる見通しになったことは、AIIB=アジアインフラ投資銀行の設立と並び、国際金融の世界で影響力を増す中国の勢いを象徴しています。ただ、今の国際通貨を巡る秩序が直ちに大きな変化をするわけではなさそうです。
IMFによりますと、世界各国が対外的な支払いに備えて、どれだけの外貨を保有しているかを見ますと、アメリカのドルが全体の63.7%を占め、基軸通貨として圧倒的な割合を占めています。次いでユーロが21%、イギリスのポンドが4.1%、日本の円が3.4%と続き、中国の人民元は1.1%となっています。
人民元がSDRの通貨に加われば、人民元の存在感は徐々に高まっていくものとみられますが、ドルが世界をリードする今の国際通貨体制が揺らぐことは考えにくいのが実態です。ただ、中国が、欧米主導の既存の金融秩序に対して、AIIB=アジアインフラ投資銀行を設立して主導権を確立しようという試みと並び、国際金融での影響力を強める中国の勢いを象徴しています。
一方、日本にとっては円の存在感が低下し、国際金融での影響力を失うことにつながっていく可能性があるため、長年の課題となっている円の利用をいかに高めて国際化を進めていくかが、改めて問われることにもなりそうです。


#IMF #通貨バスケット制