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アングル:原油安で国際収支の構図激変、中東産油国は大幅悪化 | Reuters

過去3年間の各国の国際収支を振り返ると、輸入原油に依存する新興国が底堅さを示す一方、中東湾岸の石油輸出国では大幅に悪化していることがJPモルガンの調査でわかった。急激な原油安進行で、国際収支をめぐる世界的な構図が激変した格好だ。


一部新興国は2013年半ば、米連邦準備理事会(FRB)による金融緩和縮小をめぐる市場の混乱「テーパータントラム」の際に資金の流出に見舞われた。原油価格が100ドルを超える状況下、インド、トルコ、インドネシア、ブラジル、南アフリカの5カ国は「フラジャイル5(脆弱な5通貨)」と呼ばれた。


しかし14年半ばから原油価格が半分以下に下がり、通貨安が進んだことで、赤字幅はおおむね縮小した。


JPモルガンの調べによると、インドの今年の赤字の対国内総生産(GDP)比は0.9%に低下。トルコも5.2%に下がった。


フラジャイル5以外ではウクライナで対GDP比8%の赤字がわずかながら黒字に転じた。


UBSのストラテジストのマニク・ナライン氏は「油価の下落が貿易収支の改善を後押ししたのは明らかで、良いことだ」とした。その上で「輸出の好調によって経常収支を改善した国はない。政府は内需に大きな痛みを負わせて経常収支赤字を抑え込んだ」と指摘した。


これに対してコモディティへの依存度が高く、為替にペッグ(連動性)を導入している国では正反対の結果が出た。


ベネズエラは12年に対GDP比2.9%の黒字だったが、今年は8.1%の赤字に転落。サウジアラビアクウェートカタールオマーンバーレーンアラブ首長国連邦(UAE)の湾岸協力会議(GCC)加盟6カ国の黒字は、12年には22%、14年には13.2%だったが、今年は3.8%に低下した。


国際通貨基金IMF)の試算によると、GCC加盟6カ国の今年の石油収入は14年と比べて2750億ドル減少する見通しだ。


さらに6カ国のうちクウェートを除く5カ国は自国通貨にドルとのペッグ制を導入している。そのため為替変動によるプラスの効果がほとんどなく、政府は輸入需要を抑えるために歳出を削らざるを得ない。


キャピタル・エコノミクスの中東エコノミストジェーソン・ターベー氏は、クウェートカタールではヘッドラインの黒字幅が縮小し、サウジでは7%程度の赤字だと指摘。オマーンバーレーンでは赤字が拡大したとした。


政府はペッグ制の緩和を迫られるとの見方もあるが、ターベー氏はサウジが1980年代の原油価格急落時に設備投資を大幅に圧縮した事例から、今回も歳出削減で対応する公算が大きいとみている。


自国通貨安を容認している他の石油輸出国の状況はそれほど悪くない。ロシアは12年が対GDP比3.5%の黒字だったが、今年は5%の黒字。マレーシアは黒字の対GDP比が半分程度に低下したが、テーパータントラム以降の大幅なリンギ安で輸入が減少し、輸出が増えるなど、収支に改善の兆しがみえる。