小1女児殺害事件 無期懲役の判決 被告は控訴の方針 | NHKニュース
判決で、宇都宮地方裁判所の松原里美裁判長は、被告が捜査段階では犯行を認めるうその自白を強要されたと主張したことについて「取り調べで厳しいことばはあったが強要されたとは認められない。自白の内容も遺体や現場の状況と矛盾せず、供述の態度からは犯行を認めるべきかどうか葛藤している様子もうかがえる」などとして、自白は信用できると判断しました。
そのうえで、「事件の発覚を免れるために殺害した身勝手極まりない犯行で、わずか7歳で命を奪われた被害者の恐怖や苦しみは計り知れない」などと指摘し、検察の求刑と同じ無期懲役を言い渡しました。
この事件の裁判は、有力な物的証拠がないなか、自白を信用できるかどうかが最大の争点となり、録音録画された自白が異例とも言える7時間以上にわたって法廷で公開されました。
弁護側は「現場や遺体の状況と自白の内容には矛盾があり、信用できない」などと主張し、判決が注目されていましたが、裁判所は、録音録画された取り調べの状況も踏まえて自白は信用できると結論づけました。
裁判のあと勝又被告の一木明弁護士が取材に応じ、「全く納得できない不当な判決だ。客観的証拠よりも自白が重視されていて、本当にこれでいいのかと感じた」と話しました。
そのうえで、「被告本人は『法廷で真実を述べたのに、どうしてこんな判決が出てしまうのか』と話し、すでに控訴の意思を固めている。必ず控訴する」と述べました。
判決について、元検事の落合洋司弁護士は「今回は取り調べの様子を録音・録画したことで自白の信用性を立証できたケースとなった。これまで検察は、自白があっても客観的な証拠の裏付けが弱い事件の起訴には消極的だったが、今回を参考にし、起訴に踏み切る可能性もあるのではないか」としています。
さらに今後の課題について、落合弁護士は「自白を中心とした捜査は誤った判断を導きやすいという危険性がある。捜査機関は自白によって有罪の印象を持ったとしても、ほかの証拠で裏付けられるよう常に意識するべきだ」と指摘しています。
日本国憲法第38条第2項は、強制、拷問、脅迫による自白、不当に長く抑留、拘禁された後の自白について、証拠とすることができない旨を定める。刑事訴訟法第319条第1項は、これに加え、任意性のない自白を排除すべきものとしており、これを自白法則という。
日本国憲法38条3項が「何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。」と定め、補強法則の採用を宣言している。これを受けて刑事訴訟法第319条2項が「被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない。」と規定する。
日本国憲法・刑事訴訟法が補強法則を導入した趣旨は、被告人が架空の犯罪で裁かれることを防止するためである(最高裁判決昭和24年4月7日)。すなわち、補強法則とは、捜査機関がまったくありもしない架空の犯罪をでっちあげ、被告人を有罪とするということを防止するための法則であり、ある犯罪について真犯人がいるにもかかわらず、被告人が犯人であると有罪を受ける、という冤罪を防止するための法則ではない。
そこで、ある証拠が補強証拠として十分かという点については、被告人が裁かれている犯罪が架空の犯罪ではない、ということを証明するに足りるか否かという点から決せられる。
被告人の供述書面(322条)
被告人の供述書及び供述録取書一般(同条1項)
被告人が作成した供述書又は被告人の供述を録取した書面(供述調書)については、不利益な事実の承認を内容とするとき(任意性が必要)又はその供述が特に信用すべき情況においてなされたときに証拠能力が認められる。任意性の立証は319条1項に準じる(自白法則を参照)。