https://d1021.hatenadiary.com
http://d1021.hatenablog.com

「借金」にまつわるノーベル賞理論、知っていますか? ざっくりわかるMM理論|あれか、これか ― 「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門|ダイヤモンド・オンライン

「お金を借りていようといなかろうと、企業の価値には何の影響もない」と断言した理論があった。それがMM理論である。

【問題】
同じ建物内にあり、間取りも内装も同じの中古マンション2部屋のうち、どちらを買うかで悩んでいる。それぞれの部屋の所有者に話を聞くと、こんな答えが返ってきた。
部屋Cのオーナー「5000万円のローンを組んで買いました。しばらく返済は滞っていますが……部屋はとても素敵ですよ。ぜひ4000万円でどうでしょうか?」
部屋Dのオーナー「この部屋は5000万円全額を自己資金で一括購入しました。事情があって手放すことにしましたが、いい部屋ですよ。4010万円でどうでしょうか?」
外見的にはまったく差のない2つの部屋、どちらを選ぶか?

実際、抱えている資産や売上・利益などがまったく同じ会社2つがあったとして、一方は多額の負債を抱えており、もう一方は借金ゼロなのだとすれば、後者のほうがいい会社だと考えたくなる人は多いはずだ。


つまり、「借金でつくられた資産は価値が低くて当たり前」「自己資本でつくられた資産のほうが価値が高い」というわけだ。


しかしこの考え方は、売り手の立場に立ってみると、ちょっと腑に落ちない部分が出てくる。

【問題】
マンションの一室を売りに出したところ、購入希望者が2人現れた。それぞれの買い手は次のように語っている。
買い手E「1割は自己資金ですが、残り9割は銀行からの借入を予定しています。4010万円でいかがでしょうか?」
買い手F「全額自己資金のキャッシュで買います。4000万円でいかがでしょうか?」
このとき、あなたはどちらに売りたいと思うだろうか?

整理しよう。自分が買い手のときには、僕たちは「借金が少ない資産」により高い価値を置く傾向がある。一方、自分が売り手となったときには、「借金で買われる資産」のほうにより高い価格をつけようとする。このねじれはどう考えればいいのだろうか?

これに対して、「資産購入のための資金調達方法と、その資産の価値は無関係である」と主張したのが、2人の経済学者、フランコ・モディリアーニ(1918〜2003)とマートン・ミラー(1923〜2000)だった。


1958年に彼らの共同発表論文で提出されたモディリアーニ・ミラーの定理は、両者のイニシャルをとってMM理論と呼ばれている。その後、モディリアーニは1985年に、ミラーは1990年にノーベル経済学賞を授与されている。


それまでは、債権者の価値(負債の価値)と株主資本の価値はお互いに独立しており、両方を足し合わせることで企業価値が求められると考えられていた。つまり、「企業価値はバランスシートの右側から考える」というのが、従来の常識だったわけだ。


これに対して、モディリアーニとミラーは「企業価値は資産そのものの価値で決まる」と主張した。従来はバランスシートの右側(負債と資本)で企業価値を見ていたのに対し、MM理論は左側(資産)こそが価値のメインステージだということを証明してみせたのである。

先ほどまでの例で言えば、キャッシュで一括購入されたマンションも、ローンで購入されたマンションも、まったく価値は変わらない。これは売り手だろうと買い手だろうと同じである。企業の価値も同じだ。バランスシートの右側の負債比率がどれだけ高かろうと、保有している資産が同じであれば、企業価値は変わらない。すべてはバランスシートの左側(資産)だけで決まるのである。

さらに突っ込んで言えば、「誰が債権者か」「誰が株主か」というのも、企業や資産の価値には影響しない。極端な話だが、消費者金融から借りたお金で購入されたマンションも、銀行から借りたお金で購入されたマンションも、価値は同じだ。株主が国内の大企業であろうと、外国の投資ファンドだろうと、企業価値には何も影響しないのである。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160525#1464172646