売上をいくら上げれば目標利益に届くのか?|ビジネスにいちばん使える会計の話|ダイヤモンド・オンライン
会計の勘所を押さえているかどうかでビジネスの成果は大きく変わります。
売上と費用(売上原価と販管費)が釣り合って、ちょうど損益(営業利益)がゼロになる売上高を、損失と利益の分かれ目という意味で「損益分岐点」と呼びます。
費用をかけて商品を売って1円も利益が出ない代わりに、損もしない状態をそういいます。逆にいえば、損益分岐点の費用がどんな状況になっているのかわかれば、売上をいくら上げれば営業利益がプラスになるかわかるということなのです。
ふつうのPLは、まず売上高から売上原価を差し引いて「売上総利益(粗利)」を出し、そこから販管費を引いて「営業利益」を出します。
損益分岐点を求めるPLだと、まず費用(売上原価と販管費)を変動費と固定費に分けて、売上高から変動費を引いて「限界利益」を出し、そこから固定費を引いた残りが「営業利益」ということになります。
簡単にいえば、「変動費」は売上に比例して発生する費用のことで、「固定費」は売上の増減に関係なく発生する費用です。たとえば、ケーキ屋さんの材料費は売上が増えた分だけ必要になりますから「変動費」に、その店の家賃は売上がゼロでも発生するので「固定費」になります。
また、「限界利益」は売上高から変動費を引いたもので、150円の商品の変動費が100円だとすれば、限界利益は50円になります。限界利益から固定費を引いたものが営業利益になるので、この金額が大きいほど利益に貢献できるということです。
変動費と固定費に分ける方法はいくつかありますが、あまり難しく考えずに科目の性格によって分ければいいと思います。
[問題]A社は変動費率30%で固定費5000万円、目標利益1000万円です。B社は変動費率70%ですが、固定費と目標利益はA社とまったく同じです。それぞれの損益分岐点を計算してみてください。
答えは、A社が約8600万円、B社が2億円となります。
A社は変動費率が30%と低く、限界利益率(1−変動費率)は70%ときわめて高いので、目標利益に届く売上高も8600万円と低くて済みます。反対にB社は変動費率が70%と高く、限界利益率は30%ときわめて低いので、目標利益に届く売上高は2億円と高くなってしまいます。どんな商売だとしても、この構造で売上を上げるのは大変ですね。
いま出てきた「限界利益率」とは限界利益を売上高で割ったもので、粗利率(売上高総利益率)と近い数値です。大ざっぱには粗利率と置き換えて考えてよい場合もあります。
「粗利率をいかに高くするか」ということと「固定費をなるべく低くする」ということが、目標利益を上回る売上高を達成するために大切なのです。このようなことが損益構造の違う二つの会社の比較でわかります。