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堅実なメーカーとバイオベンチャー、社長になるならどっち?|あれか、これか ― 「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門|ダイヤモンド・オンライン

では、オプションの価値はどのように決まるのだろうか?それを明らかにしたのが、アメリカの2人の経済学者、フィッシャー・ブラックとマイロン・ショールズが導き出したブラック・ショールズ式だ。


オプションの価格評価モデルを示したこの式は、1973年に2人の共著論文で『ジャーナル・オブ・ポリティカル・エコノミー』に発表された。1997年にショールズは、これに対する厳密な証明を与えたロバート・マートンとともに、ノーベル経済学賞を受賞することになった。なお、すでに他界していたブラックは、残念ながらその栄誉に与ることはできなかった。


その後、ショールズやマートンも参加したヘッジファンドのLTCM(Long-Term Capital Management)が大きな損失を出して破綻したことなどから、ブラック・ショールズ式の妥当性に疑問が集まったことをご存知の人もいるかもしれない。


しかし、この考え方が依然としてオプション価格評価モデルの代表選手であることに変わりはない。モデルの信憑性と運用成績の結果は必ずしも比例しない。投資判断をしているのはモデルではなく人間だからだ。

【問題】2つの会社から「経営者として迎え入れたい」とオファーが来た。
Q社――産業機械メーカー。年率10%ペースで業績と株価が上昇中。
R社――創薬系バイオベンチャー。新薬開発のメドは立たないまま赤字続き。市場の思惑が先行し、株価も激しく乱高下。
双方とも、同額のストック・オプションを用意してくれている。
どちらかを選ぶべきだろうか?

まず、ここで報酬として用意されたのが、ストック・オプションではなく自社株そのものであれば、どちらを選ぶかはあなたの好み次第である。確実なリターンが見込めそうな産業機械メーカーにするか、大化けしそうなバイオベンチャーに賭けるか。


やはり安全そうなほうを手にとりたくなるが、ストック・オプション報酬となると話は別。ここで将来の業績見込みの安定したQ社を選ぶのは、間違いなく愚かな行為だ。


ストック・オプションの価値を考えるならば、ここは絶対にベンチャーR社を選んだほうがいい。


ファイナンスの世界では「株価はランダムウォークする」というのが大前提だ。これまで株価が上昇してきたからといって、明日も上がるとは限らない。ずっと業績のよかった産業機械メーカーQ社も、来年から市場環境の変化に耐えきれず、赤字を出すかもしれない。


これだけでは産業機械メーカーを選びたい気持ちは変わらないはずだ。どれだけランダムウォークを頭で理解していても、やはりQ社のほうがR社よりも株価が上がる可能性が高そうだからだ。


「それでも、あなたはR社を選ぶべきだ」とファイナンス理論は主張する。ストック・オプションの価値は、過去の株価成長実績のみならず、将来の株価成長見込みにもまったく影響を受けない。もしもR社の成長を本当に確信しているのであれば、ストック・オプションなど受け取らず、いますぐ現物の株式を購入すればいいのだ。

オプションの価値を決めるのは、将来の株価予想ではない。むしろ、将来の予想がつきにくい銘柄ほど、オプションの価値は高くなる。


そう、オプションの価値を決めるのは、リスクの大きさ、すなわちボラティリティなのである。したがって、この例では明らかにリスクの高いR社株のストック・オプションのほうが圧倒的に価値が高いというわけだ。

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