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アングル:英EU離脱で復活する「量的緩和の呪縛」 | ロイター

金融危機を受けて2009年に各国中央銀行量的緩和(QE)を導入した際、緩和のeasingを「永久の」を意味するEternalに置き換えた「QEternal」という言葉が半ば冗談で叫ばれていた。危機のどん底から世界経済を立て直すには何年も続く可能性もあったからだ。


欧州連合(EU)からの離脱派が多数を占めた英国民投票のショック後は、これが冗談ではなくなり、ポンドやユーロ、円を何百億もつぎ込む新たな量的緩和の波が今にも来そうな気配となっている。


国民投票後、世界の債券市場の利回りは数年来の低水準となり、史上最低を記録するものも。欧州格付け大手フィッチ・レーティングスによると、利回りがマイナスの債券は11兆ドル分を超える。


さらなる利回り下落で、銀行や年金基金のほかさまざまな投資家の収益は一日ごとに萎んでいく。


イングランド銀行(英中銀)の債券買い入れ額は3750億ポンドで、この4年間は量的緩和を停止しているが、再開する見通し。欧州中央銀行(ECB)、日銀も追加緩和が予想されている。英中銀のカーニー総裁は6月30日、EU離脱ショックによる国内経済への打撃を和らげるため、数週間以内の追加緩和は「おそらくある」と述べた。


米連邦準備理事会(FRB)でさえも、2014年10月に終了した量的緩和を復活させ「QE4」に踏み切らざるを得ない状況に追い込まれるかもしれない。元FRB当局者で09年の量的緩和導入の際、重要な役割を果たしたピーターソン国際経済研究所のシニアフェロー、ジョセフ・ギャグノン氏は「まず利下げがあり得る。マイナス0.25%にすることでさえ」と指摘する。


「(利下げの後)、さらに必要があればQEが選択肢になる。確率は低いが、離脱ショックでそれを検討する時に少し近づいている」という。


FRBは債券購入によりバランスシートを3兆6000億ドル拡大。その後も償還債の再投資を続けてバランスシート規模を維持しており、再投資は2016年に約2160億ドル増え、さらに3年後には9000億ドル増える見通しだ。


少なくとも早期の追加利上げを予測する投資家はほとんどいなくなった。世界の基準となる米10年国債の利回りは1日、過去最低水準の1.38%だった。<「量的失敗」?>


英国や日本、スイスのほか、ユーロ圏諸国でも10年債の利回りは過去最低レベルで、マイナス圏が多い。景気回復の持続性への懸念や低水準にとどまる物価上昇率、中銀の政策の限界説を背景に、英国民投票前から債券の利回りは下がっていたが、投票後にはこの傾向が特に、英国や欧州を中心に顕著になった。


クレディ・スイスエコノミストは来年の英国の成長率は従来予想の2.3%から1%落ち込むと予想。QEの額も4500億ポンドに拡大するとしている。


ダートマス大のデビッド・ブランチフラワー教授(経済学)は、英中銀の利下げ実施はほぼ確実で、その後QE拡大が続く可能性があると指摘する。


同教授は英中銀の元金融政策委員会(MPC)メンバー。「2008年は深刻な経済危機だった。今回は深刻な政治危機が経済危機をもたらせた」


物価上昇率の目標を2%程度に引き上げたいECBも、来年3月までを予定している1兆7400億ユーロ規模のQEを拡大する見通しだ。ただ、ユーロ圏では数兆ユーロ分の債券の利回りが、ECBの購入基準の下限であるマイナス0.40%を下回り、買える債券が限られてきている。


しかも、皆が皆、追加緩和で事を解決できると考えているわけではない。現に、何兆ドルもの資金供給にもかかわらず、世界中で経済成長は鈍化し、物価上昇率の見通しも上がらない。


バンク・オブ・アメリカメリルリンチのアナリストはQEを「量的失敗」と皮肉る。大手監査法人プライスウォーターハウスクーパース(PwC)のシニア・エコノミック・アドバイザーで英中銀の元MPCメンバーのアンドリュー・センテンス氏は、これから得られる統計を基にEU離脱による影響がはっきりとするまではQEを待つべきだと考える。


センテンス氏は「追加緩和や小規模な利下げをしても効果は限定的だ。政策決定に関与していたら、金利の据え置き、追加緩和なしを主張する」と話している。

#リフレ #ECB #FRB