フランス南部のニースで今月14日、チュニジア人の31歳の男が大型トラックで花火見物の群衆に突っ込んで暴走し、84人が死亡しました。
このテロ事件を受けてオランド大統領は、今月末の期限に解除するとしていた非常事態宣言を継続する方針に転換していましたが、19日、訪問先のポルトガルで、延長の期間を6か月にすることを明らかにしました。法案は議会で可決される見通しで、去年11月、130人が犠牲となったパリ同時テロのあとフランス全土に出されている非常事態宣言は、来年1月まで継続することになります。
またオランド大統領は、「単なる宣言にとどまらず、あらゆる措置を取っていく」と述べ、批判を受けて取りやめていた裁判所の令状なしで行う家宅捜索を再び実施するなど、テロ対策を強化する方針を明らかにしました。
国民の間では、今回のテロ事件を防げなかったとして政府の対応を批判する声が高まっていて、支持率が10%台に低迷するオランド大統領としては、来年春の大統領選挙を前にテロの再発をなんとしても食い止めたい考えです。
仏・緊急事態延長法は下院で20日の早朝4時53分に可決されたようです。19日午前に法案の閣議決定を経て、その後下院の委員会、本会議で審議・採決が行われました。短時間にもかかわらず議員は政府案を修正しており、修正案は約100件提出されています。
— 井上武史 Takeshi INOUE (@inotake77) 2016年7月20日
政府案は3カ月の延長だったのですが、野党右派の要求で6カ月に修正。しかも今回は単なる延長法案だけでなく、新たな強権的措置も盛り込まれています。上院は右派が多数なので、さらなる措置を求める修正があるかもしれないという見方もあります。右派はテロを防げなかった政権を批判。
— 井上武史 Takeshi INOUE (@inotake77) 2016年7月20日
3カ月に区切るのは議会の承認をその都度得るだけでなく、政府に従来の状況や延長の必要性を示させる意味もあると思います。例えば、今回の政府法案の理由説明から、昨年11月以来3594件の令状なし家宅捜査が行われたことやニース事件で77人が居所指定処分を受けたなどの事実がわかります。
— 井上武史 Takeshi INOUE (@inotake77) 2016年7月20日
テロ対策のための行政権の強化に伴って、議会のコントロール権も強化されるのが一連の法案審議の特徴。昨年11月の改正法でも、その後の憲法改正論議でも同じ。今回の下院可決案では、緊急事態下でとられた措置の議会への即時報告義務や政府統制のための両院合同委員会の設置などが盛り込まれている。
— 井上武史 Takeshi INOUE (@inotake77) 2016年7月20日
フランスでの一連のテロは昨年10月からのシリア空爆と関係していると思われるが、事件を受けてそれを止めろとの批判はほとんどない。実際ニース事件後、フランスは空爆を強化しており、野党の政権批判もテロ対策(治安対策)が不十分であることの責任を問題にしている。
— 井上武史 Takeshi INOUE (@inotake77) 2016年7月20日
相次ぐ緊急事態の延長に対しては効果がないという批判があるが、だからといって現時点で解除するわけにはいかないだろう。おそらく新たなテロ事件が発生するたび自由と引き換えに強権的な措置が憲法上の根拠なしに法律だけで強化されていくのだろう。日本がこういう状況になった場合どうするのだろう?
— 井上武史 Takeshi INOUE (@inotake77) 2016年7月20日