鈴木敏文氏が語る、GMSの衰退に歯止めがかからない理由|セブン&アイ・ホールディングス名誉顧問 鈴木敏文|ダイヤモンド・オンライン
GMSが長い苦境に突入したのは、皮肉なことに、成功をもたらしたチェーンストア理論の破綻にある。
ダイエーも西友も、そしてヨーカ堂も、GMSは皆、アメリカの流通理論を金科玉条にしてきた。それは本部が強いバイイングパワーをもとに安く商品を仕入れ、それを店舗に流して大量に売る、という供給側主導の理論だ。このビジネスモデルは、流通チェーンにとってはきわめて理にかなった形だと言われた。
私は2015年春の「取引先懇談会」で、「ヨーカ堂はチェーンストア理論から脱却する」と表明した。チェーンストアの発展を支えてきたアメリカ仕込みの理論はすでに役割を終え、また、決して日本の商売風土に合ったものではないことが明らかになっているのではないか。このことが明らかになって長い年月が経つにもかかわらず、日本のGMSはいまだに、この「アメリカの物まね」から脱却できていない。数々の取引慣行を変えることができず、ビジネスを時代の変化に対応させられないまま、今ここに至っている。
いろんな人たちから、ときどき、こう聞かれる。
「鈴木さんは長くセブン-イレブンとヨーカ堂の社長を兼任して両社の経営を担ってきたのに、なぜセブンは最高益を更新し続け、ヨーカ堂はいっこうに伸びないのですか」
それはヨーカ堂の社員が、私が訴えてきた「変化への対応」を、残念ながらきちんと腑に落としていないということなのだ。
一方、セブン-イレブンは創業時、社員になりたがる人材がおらず、商売の素人集団でスタートせざるを得なかった。大型スーパー全盛期だったから、小型店の将来に可能性を見出すことなどできなかったのだろう。しかし、それが結果的には奏功した。私はセブンの社員たちに、「絶対にヨーカ堂のまねはするな」と厳命し、問屋任せの仕入れに甘んじることなく、必死で売れる商品開発をするように教育し、彼らもそれに応えてくれた。
物の売れ方が変わっているのに、未だにお客さまの立場で考えることができていないのだ。物の売れ方は、かつては売れ始めと売れ行きが落ちていく段階では裾野がなだらかになる「富士山型」だった。それが、あるときに突然爆発的に売れ始め、しばらくするとピタッと売れなくなる「茶筒型」になり、今はほんの一瞬売れるだけですぐに売れなくなる「ペンシル型」だ。
こうした時代には、売れる瞬間に合わせてタイムリーに品揃えをしなくては、販売の機会を逃してしまう。お客さまの立場でものを見て、あらかじめ自分たちでなにをどう売るかを計画し、商品を開発し、販売しなければならない。それを実現するために仕事の仕方も見直さなければならない。
しかしながら、それができていないのだ。
私はGMSという業態がダメなのではないと思っている。「ダメだから」と見限って、すぐに店舗閉鎖をするような経営も良いと思わない。お客さまから支持される、時代の変化に対応した店に変えられないことが悪いのだ。ヨーカ堂だけでなく他社でも、「改革を急ぐ」と叫んで取り組むのは、店舗の大型化や立派な内装の店に変えるようなことばかりだ。しかしどの店も坪効率はよくならず、大赤字になっている。
変えるということの意味をまったく理解していない取り組みなのだ。
今、小売りで伸びているのはユニクロやニトリなど「自主マーチャンダイジング」を確立した企業だけだ。自分たちが売る商品は、自ら仕様を決めて開発するというのが商売の本来のあり方だ。セブン-イレブンも自主マーチャンダイジングの企業だ。弁当やおにぎり、おでんなど、自分たちの手で開発して品質や味を追求してきた。
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160711#1468233254
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160419#1461062757
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— ウォール・ストリート・ジャーナル日本版 (@WSJJapan) 2016年9月5日