東京新聞:80歳まで務め譲位したい 天皇陛下、6年前に意向:社会(TOKYO Web)
天皇陛下は二〇一〇年七月、八十歳をめどに生前退位したいとの意向を宮内庁参与会議で示されていた。この席で陛下は摂政設置に難色を示し、皇太子さまに皇位を譲ることへの強い思いをにじませていた。現在八十二歳の陛下が生前退位の意向を固めるに至る経緯の一端が、関係者への取材で明らかになった。 (編集委員・吉原康和)
参与は天皇、皇后両陛下の私的相談役。陛下が意向を示した会議は一〇年七月二十二日夜、両陛下の住まいの皇居・御所の一室で開かれた。
関係者によると、両陛下と、当時の参与で元宮内庁長官の湯浅利夫、元外務次官の栗山尚一(たかかず)(故人)、東京大名誉教授の三谷太一郎の三氏をはじめ、当時の宮内庁長官、侍従長らが出席した。会議は午後七時に始まり、深夜まで続いた。
冒頭、当時七十六歳だった陛下は、八十歳までは象徴としての務めを果たしたいと思っていると述べた。その上で、天皇が高齢化した場合に身を処す方法として、摂政設置と譲位があると選択肢を示し、自分としては譲位したいと思っていると話したという。
これに対し、参与からは「摂政の設置で対応されるのが望ましい」などと翻意を促す声が多く出た。天皇の生前退位は皇室典範にも規定はなく、実現するには皇室典範の改正か特別法が必要となる。しかし、陛下は難色を示したという。
陛下は〇三年に前立腺がんの手術を受け、〇八年には「ホルモン治療の副作用で骨粗しょう症に至る恐れがある」と診断された。〇九年には、式典での「お言葉」の廃止など、陛下の負担軽減策を宮内庁が発表していた。
会議に出席した三谷氏は「陛下はご自身の健康問題だけでなく、大正天皇と香淳皇后の晩年の健康問題を先例として意識されていたように受け止めた」と語る。
「陛下は大正天皇の悲運に深く同情されていた。また、今の自分の健康はそれほど問題ではないが、(香淳皇后と)同じような状況が自分にも将来、生じないという保証はないということを懸念されていたのではないかと私は理解した」
参与会議での議論について、宮内庁幹部は「両陛下による私的な集まりなので記録もなく、宮内庁としては把握していない」としている。生前退位や法整備の在り方などを検討する政府の有識者会議の初会合は十七日に開かれる。
<宮内庁参与会議> 皇室の重要事項について、両陛下から私的に相談を受けて話し合う宮内庁の任意組織。無報酬で定員は設けられていない。戦後、昭和天皇の話し相手として設置され、首相経験者や学者、裁判官、財界人ら有識者が選任された。現在の参与は元最高裁長官や元宮内庁長官ら5人。会議は1、2カ月に1回ほど開かれる。
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20161014#1476441453
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160930#1475231773