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 受験最大手で「東進ハイスクール」や「四谷大塚」を傘下に持つナガセが、子会社の「早稲田塾」で校舎の半分近くにあたる11校を閉鎖すると発表した。


 このニュースから3年前に、予備校の代々木ゼミナールが全国27ヵ所の校舎のうち20ヵ所を閉鎖したという報道を、思い出した人も多いかもしれない。しかしナガセのケースでは、少子化の煽りで教育市場が縮小しているという捉え方ももちろんできるのだが、実情はもう少し複雑で興味深い。

 いずれにしても、代ゼミの閉鎖は「浪人率減少」が最大の引き金だったことを考えると、現役生中心の早稲田塾の場合は、少し事情が異なる。構造変化の2つめのキーワードは「一般入試とAO入試」である。

 東進ハイスクールは、タレントとしても有名な林修センセイを筆頭に、有名講師がきらびやかに揃った「講師陣が強み」の予備校で、受験生に試験突破のための勉強のポイントを教える技術では、日本の最先端を行っている。


 一方の早稲田塾は、試験ではなく論文や面接で選考されるAO入試に強い予備校として知られている。講師が生徒1人1人の強みを引き出しながら、個人のアピールポイントや関心をどうAO受験につなげるかを考えてくれるところがウリなのだが、ここにビジネスモデルとしては1つ問題がある。

 一方で、AO入試で合格が決まるとどうなるか。筆者の娘について言えば、9月に本命の大学から合格通知をもらったら、そこで予備校は実質退会状態になってしまった。本当は合格後も、大学で学ぶための学力維持プログラムなどを受講すればよかったのだが、本人のモチベーションとしては、もう予備校へは通えなくなってしまった。まあ、当然といえば当然だろう。

 さて、3つ目の構造変化として、大学受験の重要度の低下が挙げられる。これは現在進行形でこれから先、10年くらいの期間でもっとはっきりとしてくる傾向と思われ、教育・学習塾産業をさらに大きく変化させるだろう。


 今の40〜50代が18歳当時に経験してきたのは、「大学入試がとても重要だ」という実体験だ。だから親は、子どもに対して大学受験に一番お金を投資している。しかし、現代社会の実態はと言うと、子どもの人生にとって本当に重要なタイミングは中高受験と就活に変わりつつある。


 はっきり言って、「いい大学に入れるか」で人生が決まるという考えは、古い常識になりつつある。今では「いい仲間に恵まれた中学・高校生活を送ることができるか」「就活で成功できるかどうか」の2つの要素の方が、人生にとってはるかに重要である。

 一方で、重要なわりにまだ市場が大きくなっていないのが就活予備校だ。

 さて、就活教育という観点では、実は代ゼミは経営的視点からちゃんと力を入れている。少子化を見据えて早めに校舎を不動産ビジネスに転用したのと同様に、代ゼミは就活についても常に時代の先を見ているのかもしれない。


 就活教育は、受験以上に個別に個人の強みを引き出しながら、合格する可能性が高い企業への対策を考えて、伴走するサービスだ。その観点で言えば、東進ハイスクール型の「有力講師による最強コンテンツ」に力を入れるビジネスモデルよりも、早稲田塾型の「伴走ビジネスモデル」の方が、未来に通用するビジネスアセットとしては重要だ。