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 まず、早稲田の文学部心理学コースのOBは、

「2年進級時にコースを選択しますが、希望のコースの志望者が定員を超えたら、1年次の成績をもとに選考が行われます。人気があったのは日本語日本文学や社会学。私が進んだ心理学コースは、課題が多いという噂が流れ、人気が落ち着きつつありました。3年からのゼミは1学年10人程度の少人数でした」

 文化構想学部との違いは、

「ほとんど感じません。多くが両学部を併願していて、両方に受かれば、学びたいことに近いほうに進みます。演劇やジャーナリズムなど今風のことを学べるからなのか、文構のほうが若干派手な感じはしました」

 文化構想学部の側から眺めるとどうか。文芸・ジャーナリズム論系のOBの話。

「文学部はコースが決れば一つのことをするので専門性が身につきますが、文構は幅広くなんでもやれるので、いろいろ知っているけど詳しくない人になりがちです。映画やパフォーマンスも学べますが、自分でもそういう表現がしたい人が多いのも特徴です。人気の論系は多元文化、表象・メディアなど。周囲はIT系やWEB広告業界に進んだ人が多かったですね」

 慶應の文学部はどうか。仏文学専攻のOBが言う。

「2年に進級するとき専攻を選択し、定員を超えると専攻ごとに参考試験が行われます。筆記試験や、進級時に研究したい内容を書いたレポートの提出などです。人気の専攻は社会学、人間科学、教育学、心理学のほか美学美術史学、国文学などですが、希望者は多くても定員の1・5倍くらいでした。2年次にキャンパスも日吉から三田に移りますが、仏文学専攻は少人数だったので、2年からフランス語を集中的に読む演習などがありました」

 別の角度からの比較も。

「イケイケの人が目立つ法学部や経済学部とくらべると、文学部生は小さくまとまっている人が多い。また、ゼミ以外の先生との距離も他学部より近く、仲間意識が強い。私は早稲田も受かったけど、入試問題の大半がマークシート方式。こんな試験で判断されたくなくて慶應を選びました」

 ちなみに、早稲田は2021年の入試から全学部共通で、WEB出願時に、主体性、多様性、協働性に関する経験の記入を義務づけるなど、入試を改革する姿勢を示してはいるが。

 最後に、早稲田の教育学部教育心理学専修OBの話。

教育学部は受験時に専攻が決まっていて、私の専修は高校時代に教育心理を学ぼうと決めていた変わり者が多かった。1、2年次は基礎教育ですが、専修の人数が少ないため小規模の授業も結構ありますね。教員志望者は多いけど教職課程は負担が重く、途中でやめてしまう人も多いです」

早慶に多くが入学する進学校の出身者は、“早慶それぞれの進学者同士で大学の話をすると、校風がこんなに違うとは思わなかった、という感想の人が多い”と言います。早稲田はなんでも受け入れる気質がありますが、慶應同調圧力が苦手なタイプは、居場所がないかもしれません

 と語るのは、『早稲田と慶應の研究』の著者でライターのオバタカズユキ氏。気質の違いは、就職活動で覿面(てきめん)に現れるようだ。

「企業の人事に聞くと“早稲田にはたまに当たりがいるけど、外れも多い。慶應は当たりもないけど、外れがない”と言います。実際、就職活動に対する学生の意識は、慶應のほうが断然高く、就活を始める時期も早い。“慶應病”という言葉もあって、業界を問わずトップ企業ばかり受けて全落ちするというブランド志向を指すんです。早稲田はもう少し幅が広い」

 その結果か、18年の文学部の就職先は、慶應は多い順に、みずほ銀行三菱UFJ銀行全日空三井住友海上火災保険など錚々たる企業名が並ぶ。一方、早稲田は東京23区職員、富士通、東京都、ゆうちょ銀行……。かなり毛色が違う。

慶應の就職におけるブランド志向は文学部生も変わりません。世間から“すごい”と言われる業界トップ企業や超有名企業に入りたがって、そのための縦のつながりが三田のゼミ中心に存在する。“ふうん”と流されてしまう地方公務員は、あまり志望しません。対して早稲田の文学部は、学内でも就職意識が低く、周囲の就活が進んでから“企業研究でもやるか”と腰を上げる学生が多い」(同)

 大学通信常務取締役の安田賢治氏も、

「企業は学部を見て学生を選ぶわけではないそうです。それでも文学部の学生の就活が振るわないのは、就活に対する意識が低い人が多く、動き出す時期が遅いからのようです」

 と話す。オバタ氏が、

「地方公務員が多いのは、自分の時間や趣味を優先していきたい人が、少なからずいるからでしょう」
 と言うように、マイペースな点は早稲田のよさだろうが、世知辛いこのご時世、慶應が選ばれるのもわかる。早稲田はかつての人気を回復しうるのか。

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