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量子コンピューターとは電子や光子といった極めて小さな物質の世界で成り立つ特殊な物理法則を応用したコンピューターです。


従来のコンピューターでは情報は「0」か「1」で表されます。半導体にかかる電圧が低い状態を「0」。高い状態を「1」とし、これを「1ビット」という情報の基本単位にしています。


一方、量子コンピューターは「重ねあわせ」と呼ばれる量子力学の現象を利用し、「0」でも「1」でもある状態を作り出すのが特徴です。


これが「1量子ビット」と呼ばれる単位です。この2種類のビットの違いが量子コンピューターに画期的な計算速度をもたらすのです。


どのくらい違うのか。3ビット分の情報処理を行う場合で比較してみます。従来のコンピューターでは「111」「110」「101」「100」など8種類の情報を作り、処理も8回必要になります。ところが「0」でも「1」でもある状態を表せる量子コンピューターなら処理は1回。速度は8倍です。


これが30ビット分の情報処理になれば、組み合わせは一気に増えて10億通り。ところが、この場合も量子コンピューターなら処理は1回。処理する情報量が多くなればなるほど計算速度に差が出るのです。


量子コンピューターが1回の処理で済むには理由があります。


実は、量子コンピューターは従来のコンピューターのようにすべての組み合わせを処理して比較し、答えを出している訳ではありません。10億通りの組み合わせがあるなら、このうちのどれが最も効率的な組み合わせなのか、量子ビットのエネルギー量が最も安定した状態を見つけ出すことで、瞬時に選んでいるのです。


こうした計算能力は「組み合わせ最適化問題」という膨大なデータを処理する現代社会のさまざまな問題で必要となるものです。


例えば、この問題の1つが「巡回セールスマン問題」です。セールスマンが都内の5か所を1日に回る場合、どの周り方がいちばん効率的か。120通りの組み合わせから探すことになります。これが30か所に増えると回るパターンは1兆の1万倍をはるかに上回る膨大な数字になります。


量子コンピューターはこの「組み合わせ最適化問題」で従来のコンピューターの1億倍の処理速度で計算できることがグーグルの研究で分かっていて、今後、こうした現在のスーパーコンピューターでも時間がかかりすぎて解けない問題を解くことができると期待されています。


量子コンピューターは1980年代から研究開発が進められてきましたが、「重ね合わせ」状態を制御するのが難しく、実用化は遠いと考えられてきました。こうした中、6年前にカナダのベンチャー企業が「アニーリングマシン」というタイプの量子コンピューターを発売し、世界を驚かせていました。