【はるかに上回る性能か】
— NHKニュース (@nhk_news) October 24, 2019
“従来なら1万年かかる計算問題を3分20秒で終わらせた”
次世代コンピューターの性能実証と発表。このあとニュース7で詳しくお伝えします。総合テレビ夜7時からです。https://t.co/5JurQ4KYnn
アメリカの大手IT企業「グーグル」などの研究チームは、23日付けのイギリスの科学雑誌、「ネイチャー」に、量子コンピューターについての論文を掲載しました。
それによりますと、実験用に開発したプロセッサーを使って、乱数を生成する問題を計算させたところ、従来のコンピューターではおよそ1万年かかるという結果が出ましたが、量子コンピューターは3分20秒で計算を終わらせたということです。
量子コンピューターは、理論的には従来のコンピューターでは不可能な計算ができるとされていましたが、実証されたのは今回の研究が初めてだとみられ、グーグルは、実用化に向けた「大きな飛躍だ」としています。
将来的には、より複雑な計算が必要な医薬品の合成や、経済や金融分野の予測などへの応用が期待されていて、開発競争が今後、さらに激しくなりそうです。
量子コンピューターは、従来のコンピューターとは異なる仕組みに基づいて計算を行います。
従来のコンピューターは、「0」または「1」のいずれかの状態の組み合わせで計算するのに対し、量子コンピューターは量子力学の原理に基づき、「0でも1でもある」という「重ね合わせ」の状態も利用できることから、より多くの情報を扱うことができ、理論上は従来のコンピューターをはるかに超える性能を実現できるとされてきました。
しかし、実際に計算を行える量子コンピューターを開発するには技術的に解決しなくてはならない問題が数多くあり、従来のコンピューターにはできない計算が本当にできるのかは証明されていませんでした。
今回の研究は、量子コンピューターでなくてはとけない問題があることを実際に示し、その可能性を実証しました。
マサチューセッツ工科大学のコンピューターの専門家は「ネイチャー」に寄せた記事で、初めて飛行機を飛行させたライト兄弟の業績になぞらえて「初めて量子コンピューターの超越性が示された」と評価しています。
また、グーグルのサンダー・ピチャイCEOは「今回の成果はコンピューターの世界の新たな可能性を開いた」とコメントしています。
一方で、今回の発表に関してはIBMなど一部の研究者から、検証の方法に疑義があがっているほか、計算で起きるエラーの訂正の手法や、新たな記録媒体の開発など、解決しなくてはならない課題が多くあり、従来のコンピューターのように一般に普及するまでには、まだ時間がかかる見通しです。
論文が発表された23日、ビットコインなどのいわゆる仮想通貨=暗号資産の価格が一時、10%以上、急落しました。
背景には、
▽フェイスブックが計画していた暗号資産「リブラ」の発行を先送りする方針を示したことに加え、
▽量子コンピューターの開発によって、暗号資産を支える暗号技術が揺るがされるのではないかという懸念が広がったためとの見方が出ています。現在、インターネットなどの通信で使われている暗号技術は、巨大な数の素因数分解など、従来のコンピューターでは計算するのに現実的ではないほどの長い時間がかかる問題を応用して作られています。
しかし、量子コンピューターがこうした計算を短い時間でとけるようになれば、暗号が解読される危険性が高まると指摘されています。
計算速度を飛躍的に向上させる量子コンピューターの出現は、私たちの生活をより便利にしてくれる可能性がある一方で、情報や通信の安全に対する脅威ともなり得ます。
このため、量子コンピューターでも解読できない「耐量子コンピューター暗号」の技術開発も進められています。