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日本はこの3年間、ノーベル医学・生理学賞と物理学賞を合わせて6人が次々と受賞し、日本の科学研究のレベルの高さを世界にアピールしてきました。
ところが、去年、ノーベル医学・生理学賞を受賞した大隅良典さんは「日本の大学の状況は危機的でこのままいくと10年後、20年後にはノーベル賞受賞者が出なくなると思う」と強い危機感を訴えています。


実際、技術革新の源となる研究論文の数を2015年までの10年間で見ると日本は低迷が続いています。


ことし3月、世界的な科学雑誌「ネイチャー」は、日本の科学研究が失速し、このままではエリートの座を追われかねないと指摘しました。


研究論文の数を比較するとアメリカ、中国、イギリス、韓国などいずれも増えているのに日本だけが伸び悩んでいるのです。


おととしノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章さんは「2000年以降、世界の国々で科学技術の重要性が強く認識され多くの国で科学技術予算を増やした」と指摘したうえで、日本の大学などの研究現場では、論分の数を左右する研究者の数、研究時間、予算の3つの要素がいずれも減っていて、特に研究時間の減少が顕著だといいます。


文部科学省科学技術・学術政策研究所が全国の大学の教職員6000人近くを対象にした調査でも、2002年の時点で職務時間の46.5%あった研究にかける時間は、2013年には35%と10%以上低下していました。


研究所では「国立大学が法人化して以降、教員が大学の運営に関わるようになり、やるべき業務が増している。一方で専門性の高い実験の補助や書類の作成などを行う研究支援者の数が、海外と比べて少ないことも問題になっている」と話しています。


これについて梶田さんは「大学法人化以降、毎年運営費交付金が1%削減されていて大学は、基礎体力をここ10年奪われてきた。まずはその基礎体力を回復させる方向にかじを切り、次世代を担う若い人が育つ環境を作っていく必要がある」と指摘します。


一方、大隅さんも若手の研究者を少しでも応援したいとノーベル賞の賞金と同じ1億円を拠出して研究費を支援する財団を設立しました。大隅さんは「ことしも来年もノーベル賞の候補にあがる人は間違いなくいるし、日本人がもらってくれればうれしいが、日本はこのまま行けばいいんだという風潮になると困る。このままでは中国に若者が流れる事態がうまれる可能性すらある」と訴えていました。

研究時間を増やすための有効な手段についてたずねると、およそ6割以上の教職員が「大学運営業務・学内事務手続きの効率化」を挙げ、研究以外の業務の負担軽減を求めていることがわかったということです。


文部科学省科学技術・学術政策研究所の伊神正貫室長は「国立大学が法人化して以降、教員が大学の運営に関わるようになり、やるべき業務が増している。一方で、専門性の高い実験の補助や書類の作成などを行う研究支援者の数が海外と比べて少ないことも問題となっている」と話しています。

物質表面の性質について研究を行っている東京大学の高山あかり助教は「研究するために研究者になったが研究時間に割ける時間がほとんどないのが現状だ」と訴えています。

おととしノーベル物理学賞を受賞した東京大学教授の梶田隆章さんは、今の日本の科学研究の現状について「2000年以降、世界の国々で科学技術の重要性が強く認識され、多くの国で科学技術予算を増やした」と指摘したうえで、「残念ながら日本が科学技術で優れた国であるとはもはや言えないと思う」といいます。


そしてノーベル賞の受賞者が相次いでいることについても「1980年代から90年代の仕事を、今、評価してもらっている。2000年以降研究環境が急激に日本で悪化しているので、ノーベル賞がいままでのように出るかというと、怪しいといわざるをえない」と話しました。


そのうえで「戦後、日本は科学技術によって大きく発展し、私たちもその発展によってある程度の暮らしができている。今後、それが難しくなると日本がどういう国になってしまうんだろうと非常に心配だ。あまり遅くならないうちに手を打たないといけない重要な課題だ」と訴えました。