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 アップル共同創業者スティーブ・ジョブズによる2005年のスタンフォード大学卒業式スピーチは有名だが、その中のある言葉がとくに印象に残っている。「点と点をつなげ」である。


「今やっていること(点)が将来何に役立つかはわからない。できるのは後から(その点を)つなぎ合わせることだけだ。だから、人生のどこかでつながることを信じて前へ進みなさい」という意味だ。


 ジョブズは大学を中退した後も、もぐりの学生として興味のおもむくままに授業を受けていた。その中に、カリグラフィーの講義があった。文字を美しく見せる技法を学ぶ授業だ。


 そこで身につけたスキルが、すぐに何かの役に立ったわけではなかった。だが、10年後、それを思い出したのだという。現在のMacの原型であるマッキントッシュのデザインに「美しいフォント」を取り入れた。それが同機種のヒットの要因の一つになる。カリグラフィーの授業という「点」が、マッキントッシュのデザインという「点」につながったのだ。


 この「点と点をつなげ」の精神は、実はアップル創業から約20年前の、日本人によるある偉大な発明にも存在していた。安藤百福氏(1910-2007)によるインスタントラーメンの発明である。

 日清食品の創業者と聞くと、生涯を通じてインスタントラーメンを作り続けてきたと思うかもしれない。実は違う。チキンラーメンの発明は安藤が48歳、カップヌードルはなんと61歳の時の発明なのだ。


 それまでには、実にさまざまな事業を手がけている。後に安藤は「何か人の役に立つことはないかと周辺を見渡すと、事業のヒントはいくらでも見つかった」と振り返ったそうだ。


 安藤は、手がけたほとんどの事業について「素人」だった。自ら現場で頭と手を働かせながら必要な知識をほぼゼロから吸収し、そこに独自の工夫を加えていったのだという。


 さらに安藤は、一度やると決めたら、うまくいく方法が見つかるまで試行錯誤を繰り返し、執念深く考え抜いたそうだ。


 この「素人性」と「執念深さ」こそが、安藤流イノベーションの大きな特徴なのだ。

ソニーと松下は、創業者が創業者精神を忘れて自分たちとは全く異なる学生を採用した。