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「資本家が実際に仕事を奪われる人に対して、『それは気持ちの持ちようだ』とか『もっと気持ちを明るく持って何とかしたらどうなのか』と言うのは私は無責任だと思う」

 さらに「AI弱者」への救済措置として議論されているベーシックインカム(BI)について、その財源としてロボット税や法人税の引き上げといった資本家側の負担が求められていることに関し、孫氏はロボット税には反対と表明。ならばと、法人税引き上げには賛成なのかと迫る新井氏を前に彼はしばらく絶句してしまう。さらに彼女に、

法人税を上げて、それでBIを支えてくださるんですか」

 こう畳掛けられると、渋々といった様子で孫氏は、

法人税は必要ですよね」

 と答えざるを得ない事態に追い込まれたのである。

「孫さんの記者会見などを長年チェックしてきましたが、彼が口ごもるようなことは一度もなかった。よほど想定外のことを問い詰められ、二の句が継げなかったんでしょう。彼はダーウィンの『進化論』を愛読書にしている究極の市場原理主義者で、競争社会で脱落した人のことなんか端(はな)から考えていませんからね」

 剥(は)がされた「強欲資本家」の化けの皮。孫氏に代表される、大資本家が技術競争に勝ち儲けを「下々(しもじも)」に配分すればいいという考え方を、京大名誉教授の佐伯啓思氏が一蹴する。

「全くナンセンス。仕事を失い、多数の人の所得が下がるような社会が、どうして発展できるんですか。消費する力がないというのに。過去のIT革命で日本のGDPは上がりましたか? 企業による行き過ぎた開発競争は、社会の格差を招くのです」