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『刑法総論講義案(三訂補訂版)』
P88

 刑法上の因果関係は,一つの構成要件要素として構成要件該当性判断の対象になるものであるから,事実的な条件関係が認められるだけではなく,さらに,刑法の規範的見地からこれに限定が加えられなけらばならない,そして,具体的事実の中で多種・多様な経過をたどる因果関係の性質にかんがみると,条件関係の肯定される構成要件的結果のうち,行為者に帰属させるにふさわしい(=相当な)結果だけを選び出し,このような結果についてのみ行為者の刑事責任を問うのが適切であるとするのが相当因果関係の基本的な考え方である。このようにして,相当因果関係説は,条件関係のあるものから不相当な場合を除外することができる点,行為の時点を基準に,原則として,一般人の目から相当性を判断できる点に特色があるとされている。

刑法 - 基本書まとめWiki@司法試験板 - アットウィキ

裁判所職員総合研修所監修『刑法総論講義案』司法協会(2016年6月・4訂版)……通称「講義案」。伝統的行為無価値論。本書は元大阪高裁判事の杉田宗久氏(2013年に他界)による書記官への講義レジュメが元になっている。裁判官の手によって書記官の研修用テキストとして書かれたものということもあって、学説の対立など理論的に高度な部分には深く立ち入らず、判例と伝統的通説に基づいて淡々とまとめられている。そのため、総論における激しい学説対立に辟易した受験生からは高い支持を集めており、高度な学説対立が問われない判例・実務重視の新司法試験の出題傾向とも相まって、総論の基本書の中では高いシェアを誇っている。理論刑法学を割り切るのであれば、選択肢としては真っ先に本書があげられよう。4訂版は、3訂補訂版(2008年9月)以降の法改正に伴う修正が行われ、また、危険の現実化や退避義務論、中立的行為による幇助など近時の学説の展開を踏まえつつ、新たな判例が補充され、大幅な加筆修正が行われた。A5判、514頁。

『刑法総論の思考方法(第4版)』

P97

 以上、三基準総合判断説にしたがって危険の現実化の有無を検討してきました。この見解に対しては、因果関係は構成要件該当性の問題であって定型的・類型的に判断することを要するから、三つの実質的な相関関係によって相当性を判断するのは適当でないという批判(大谷229頁)や、総合的判断の中身が不透明であり三つの判断要素の相互関係をどのように理解すべきであるのかを明確化する必要があるという批判(井田133頁)がある。

 危険の現実化の有無を判断する方法として、前述の三要素はあくまでも判断資料に過ぎず、それ自体が危険の現実化を判断する基準ではないという理解を前提に、結果を惹起する危険性が実行行為に含まれていたかを確認し、そのような危険が介在事情の存在にもかかわらず現実化したプロセスを検証するという見解(以下、危険実現過程検証説と呼ぶことにする)も有力に主張されています(山口60頁以下)。この見解は、危険の現実化説をとる判例の考え方を端的に説明するものといえると思います。

平成20年度卒業研究|教育活動・実績 卒業研究|一般の方|弘前大学 人文社会科学部・人文社会科学研究科

齋地美菜子 実行の着手時期に関する一考察 PDFをダウンロード

『刑法概説(総論) 第4版』(大塚仁)

P171

おもうに、自由主義的観点から犯罪概念を厳格に捉えようとするときは、客観説が基調とされなければならない。そして、構成要件論を基礎とするわれわれの立場においては、実行行為、すなわち、犯罪構成要件の実現にいたる現実的危険性を含む行為を開始することが実行の着手であると解すべきである。単に、犯罪構成要件に密接する行為が行われただけでは足りないのである。だが、同時に、実行行為が客観面と主観面との統合体である以上、構成要件上必要とされる主観的要素を無視することはできないのであり、主観説の諸見解にも、この面の認識を強めた意味が認められるべきである。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20180403#1522751707

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