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地価公示」は国土交通省が1月1日時点で調査した土地の価格で、ことしは全国のおよそ2万6000地点が対象となりました。

それによりますと、住宅地、商業地、工業地などを合わせたすべての調査地点の価格の平均は去年を1.2%上回って4年連続の値上がりとなりました。

用途別では「住宅地」が全国平均でプラス0.6%と2年連続で上昇し、このうち東京、大阪、名古屋の「三大都市圏」は平均でプラス1%でした。
さらにそれ以外の「地方圏」も平均でプラス0.2%と、平成4年以来27年ぶりに上昇に転じ、地価の上昇が地方にも広がっていることを示す結果となりました。

これは、住宅ローンの金利が低い水準で推移し、住宅ローン減税などの効果もあって、交通の便や住環境の優れた地域を中心に、住宅に対する需要が堅調なためです。

商業地も、外国人旅行者の増加に伴うホテル需要の高まりやオフィス賃料の上昇などを背景に、全国平均でプラス2.8%と4年連続の値上がりとなりました。このうち、「三大都市圏」はプラス5.1%、「地方圏」はプラス1%でいずれも上昇基調を強めています。

ことしの地価公示は地価の上昇が東京や大阪、札幌や福岡といった大都市だけでなく、そのほかの地方にも広がってきていることを示す結果となっています。

都道府県別に見ると、住宅地は、北海道と石川県、山口県、それに佐賀県の4つが平均で上昇に転じ、合わせて18の都道府県が上昇しました。
また、商業地も、佐賀県が上昇に転じ、合わせて22の都道府県が上昇しました。

平均では下落が続いている県でも、一部には上昇に転じる地点も出てきています。このうち、JR秋田駅前の商業地は「男鹿のナマハゲ」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことなどを契機に地域を訪れる人が増えて、飲食店などの需要が高まり、プラス1.8%と27年ぶりに上昇に転じました。

また、大分県日出町は、空港へのアクセスがよく定住促進に向けた町の施策の効果もあって住宅の需要が高まり、住宅地の2つある調査地点がいずれも値上がりし、平均でも18年ぶりの上昇となりました。

ただ、地方で地価が上昇に転じる地点がある一方で、交通の便が悪く人口の減少に歯止めがかからない地域などは依然として地価の下落が続いていて、同じ県内でも地価の2極化が進む状況が鮮明になっています。

ここ数年、都市部の地価を押し上げるひとつの要因となってきたのが積極的な不動産投資です。安定した賃料収入を目当てに、オフィスやマンションへの投資が相次いできましたが、このところ変調の兆しも出てきています。

首都圏でオフィスやマンションを中心に投資してきた東京 港区の投資運用会社では、去年から、新たな物件の購入に慎重になっていると言います。価格が高騰し、投資に見合った収益が得られる物件が少なくなっているためです。

会社によりますと、マンションの価格やオフィスの賃料の値上がりで、去年以降、不動産への投資額を1割から2割程度積み増す必要が出ているということです。しかし、賃料を簡単に引き上げることが難しいため、不動産投資によって得られる利回りの目標を引き下げているということです。
こうしたこともあって、この会社がことしになって取得した物件はまだ1棟にとどまっています。

不動産のコンサルティング会社「CBRE」によりますと、去年、投資ファンド機関投資家などが国内のオフィスやマンションなどに投資した額は、前の年を27%下回ったとしていて、東京の都心部を中心に不動産投資にかげりが出始めているという指摘も出ています。

「リストアセットマネジメント」の遠藤晋民社長は「都心部などでは価格が天井近くまで来ていて、投資先は立地が良いなど、収益性が高い物件に絞り込んでいる。新たな物件を取得できない状況が続けば今後、事業に悪影響を及ぼすおそれもある」と話しています。

ことしの地価公示について不動産の調査会社「東京カンテイ」の井出武上席主任研究員は、「景気の回復や日本を訪れる外国人旅行者の増加などを背景に、地方の都市でも上昇の傾向が強まってきた。過疎に悩む都市でも観光地として人が集まり、新たなビジネスが生まれて地価が上がるという循環に入ってきている」と話しています。

一方、「特に東京都心部の住宅地は、人手不足と資材の高騰という2重のコスト増により、マンション価格が高騰している。一般の人が買いづらい価格水準に達しているほか、投資家も投資に見合う収益が得られないとして、去年の後半から投資は低調になっている。市場は1つの転換点に来ていると考えられる」と指摘しています。

そのうえで、今後の見通しについて「地価は全体として上向いていて急に反転することは考えにくいが、上昇のペースは次第に鈍化するのではないか。中国の景気減速など、世界経済の不透明な情勢が、日本の不動産市場にも影響を及ぼす可能性があり、今後の状況を注視する必要がある」と話しています。

住宅地

全国の住宅地で地価の上昇率が最も高かったのは北海道倶知安町山田で、去年より50%上昇しました。2位と4位も倶知安町で30%前後の上昇でした。いずれもスキーリゾートとして知られる「ニセコ地区」にあり、別荘や宿泊施設のほかその従業員の宿舎向けに土地の需要が旺盛な状況が続いています。

3位は那覇市おもろまち3丁目で、住環境がよくオフィス街にも近いことから県外からの転勤者や移住者のニーズが高く、30%上昇しました。

このほか、上位10地点までの5つを、名古屋市中区や東区にある地下鉄の駅近くの利便性が高い地点が占めました。

商業地

商業地でも上昇率が最も高かったのは北海道倶知安町南1条西1丁目で、58.8%と大幅に上昇しました。

2位は大阪市の道頓堀に近い中央区日本橋1丁目。3位も同じ大阪市で、阪急梅田駅に近い北区茶屋町で、いずれも外国人観光客の増加を背景に店舗の需要が根強く、44%余りの上昇となりました。

上位10地点には、このほかにも国内外の観光客が多く訪れる京都市那覇市の地点が入り、観光客向けの店舗やホテルの需要が各地の地価をけん引していることがうかがえます。

工業地

工業地で最も上昇率が高かったのは沖縄県豊見城市豊崎で、国道の4車線化に伴い空港へのアクセスが向上したことなどから、28.6%の上昇となりました。

被災地では大幅に下落も

西日本豪雨震度7の揺れを観測した北海道地震など、去年、相次いだ自然災害の被災地では、地価が大幅に下落しました。

このうち去年7月の西日本豪雨で大規模な浸水被害にあった岡山県倉敷市真備町岡田は、去年より17.7%下落し、住宅地としては全国で最も値下がりしました。
住宅地の下落率2位と3位も真備町の地点が占め、いずれも17%余り下落しました。

4位は、土砂崩れの被害を受けた広島県坂町小屋浦3丁目。5位も、同じく被害を受けた広島県呉市天応西条3丁目で、6位までを西日本豪雨の被災地が占め、いずれも10%を超える大幅な下落となりました。

一方、震度7の揺れを観測した去年9月の北海道地震の被災地では、土砂災害の被害が出た厚真町の7つある調査地点がすべて値下がりし、2%から5%程度の下落となりました。

液状化の被害が出た札幌市清田区でも4つの地点がマイナス1%前後の下落となりました。