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地価公示」は国土交通省が1月1日時点で調査した土地の価格で、ことしは全国の約2万6000地点が対象です。

それによりますと、住宅地、商業地、工業地などを合わせたすべての調査地点の価格の平均は去年を1.4%上回り、5年連続で上昇しました。

用途別では「商業地」が全国平均でプラス3.1%と5年連続で上昇し、このうち、東京、大阪、名古屋の三大都市圏は平均でプラス5.4%、札幌、仙台、広島、福岡の「地方4市」が平均でプラス11.3%と、いずれも上昇幅が拡大しました。

さらに、これら4市を除いた「その他の地域」でもプラス0.3%となり、バブル崩壊直後の1992年以来28年ぶりに上昇に転じました。

これは外国人旅行者の増加でホテルや店舗向けの土地の需要が高まっていることなどが要因で、地価の上昇が地方にも広がっていることを示す結果となりました。

一方、住宅地も全国平均でプラス0.8%と3年連続で上昇し、このうち三大都市圏が平均でプラス1.1%となり、特に東京23区はプラス4.6%と、依然大幅な上昇が続いています。

また「地方4市」はプラス5.9%、「その他の地域」でも1996年から24年間続いてきた下落から横ばいとなり、住宅地でも利便性の高い地域を中心に地価の値上がりが地方に波及しています。

ことしの地価公示は、地価の上昇が東京などの三大都市圏や、札幌や福岡といった大きな都市だけでなく、広く地方にまで及んでいることを示す結果になっています。

都道府県別に見ますと、住宅地では山形県長崎県が平均でプラスに転じ、合わせて20の都道府県が上昇したほか、商業地は、静岡県香川県が平均でプラスに転じ、合わせて24の都道府県で上昇しました。

これは、住宅ローンの金利が低く住宅需要が堅調なことに加え、国内外からの観光客でホテルや店舗向けの土地の需要が高まっていること、それに働き方改革で職場環境を改善しようと、より広いスペースを確保しようとする会社が増えてオフィス需要が高まっていることなどが背景にあります。

三重県伊勢市伊勢神宮周辺の地点では令和への改元に伴って観光客が増え、店舗向けの需要が高まったことで、商業地の2つの地点がそれぞれ3.6%と6%上昇しました。

長野オリンピックの会場にもなった長野県白馬村の地点は、近年スキーリゾートとして外国人観光客が増加していることを背景に別荘やホテルの需要が高まり、住宅地で20.2%、商業地で15.2%の上昇となりました。

ただ、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、外国人旅行者が大幅に減少しているうえ、国内旅行を控える動きも広がっています。

地域経済を支えてきた観光関係の需要が落ち込むことで地方の地価にも影響が及ぶのではないかと懸念されています。

【住宅地】
全国の住宅地で地価の上昇率が高かったのは、1位、2位ともに北海道倶知安町でした。最も高かったのは「倶知安町山田」で、去年に比べて44%の上昇、2位の「倶知安町南3条東1丁目」は30.6%上昇しました。
いずれもスキーリゾートとして知られる「ニセコ地区」にあり、外国人の別荘地やリゾート施設で働く従業員の宿舎向けの需要が高くなっています。

3位は「沖縄県糸満市西崎2丁目」で、那覇市中心部への交通アクセスや住環境がよいことから30.3%上昇しました。

このほか、上位10地点には福岡市や名古屋市の駅に近く、利便性の高い地点が入っていて、マンション用地としての需要が高くなっています。

【商業地】
商業地でも、上昇率が最も高かったのは、北海道倶知安町でした。
倶知安町南1条西1丁目」は57.5%の大幅な上昇となりました。こちらも「ニセコ地区」にあり、観光客の増加で店舗向けの需要が高くなっています。

2位は「那覇市久茂地1丁目」で、那覇市役所や中心街の国際通りに近く、オフィスとホテル向けの土地の需要も高いことから45.9%上昇しました。

3位は「大阪・中央区宗右衛門町7丁目」で44.9%上昇しました。
外国人観光客に人気の高いドラッグストアをはじめとする店舗向けの需要が高く、地価を押し上げています。

上位10地点には、このほかにも国内外の観光客が多く訪れる沖縄県大阪府の地点が入り、観光需要が各地の地価をけん引していることがうかがえます。

【工業地】
一方、工業地で上昇率が最も高かったのは「沖縄県豊見城市豊崎」で、国道の4車線化に伴い那覇市の中心部や空港へのアクセスが向上したことなどから、32.1%の上昇となりました。

【住宅地】
全国の住宅地で地価が最も高かったのは3年連続で「東京・港区赤坂1丁目」で、1平方メートルあたり472万円でした。
周辺の虎ノ門地区などで大規模な再開発が進んでいることに加え、ビジネス街にも近く、富裕層向けのマンション用地としての需要が高まっています。

【商業地】
商業地で地価が最も高かったのは、14年連続で東京・中央区銀座4丁目の「山野楽器銀座本店」で、1平方メートルあたり5770万円でした。
高級ブランド店が立ち並ぶ銀座の中央通りに面し外国人旅行者も多く訪れることから、店舗向けの土地の需要は根強く、過去最高となりました。

【工業地】
工業地で地価が最も高かったのは8年連続で「東京・大田区東海2丁目」で、1平方メートルあたり65万6000円でした。
ネット通販が拡大する中、大消費地である東京の都心部へのアクセスがよく、物流施設向けの需要が高くなっています。

地価の上昇や人件費の高騰などを背景に、去年1年間に全国で販売された新築マンションの平均価格は、3年連続で過去最高を更新しています。

業界では、高騰するマンション価格を抑えるため、一戸当たりの面積を小さくする「コンパクト化」が加速しています。

こうした中、不動産会社が力を入れているのが、新型コロナウイルスの感染拡大で広がるテレワーク向けの作業スペースを備えた物件です。

「日鉄興和不動産」が東京・中央区で建設を進めているマンションは、1戸当たり45平方メートルが中心です。一般的には1LDKの間取りにすることが多い面積ですが、キッチンや寝室の床下に収納スペースを作ることで居住空間を広げ、2LDKの間取りを確保しました。

そのうえで、「書斎」として使える広さ8平方メートルほどの部屋を設けます。机やイスを置いてデスクワークをするのに十分な広さになっていて、自宅の中に集中して仕事ができる空間を持てるようにしました。


一方、同じ中央区で建設を進める別のマンションは、1戸当たり30平方メートルの広さで1LDKの間取りが中心ですが、1階の共用部にテレワークに使える「ワークラウンジ」を設けることにしています。

このラウンジには高速のインターネットが利用できる環境を整備するとともに、共用のプリンターやコーヒーメーカー、それに飲み物や日用品を購入できる自動販売機も設置する予定で、自宅のマンションでもオフィスのように仕事ができる環境づくりを目指しています。

マンションの購入を検討している20代の男性は「コンパクトなほうが価格的には買いやすく、暮らしやすいエリアにあるので購入を検討している。テレワークが広がっているので作業スペースがあるのはありがたい」と話していました。

日鉄興和不動産住宅事業本部の和田浩明さんは「近年、オフィスの外で仕事をするニーズが高まっているが、一方で、コピーやスキャンができないとか、インターネット環境がないとかいう声もある。テレワークができるマンションのスペースは需要が高まっていくと考えている」と話していました。

去年10月の台風19号の被災地では地価が大幅に下落しました。

このうち、豪雨で千曲川が氾濫し、大規模な浸水被害を受けた長野市豊野町豊野は去年に比べて13.6%下落し、住宅地としては全国で最も値下がりしました。

また、同じく千曲川の氾濫で浸水被害を受けた長野市赤沼も13%下落しました。

さらに、福島県阿武隈川の氾濫で浸水被害を受けた福島県郡山市安積町でも9.6%下落しました。

このほか、住宅地の下落率が高かった10地点には、台風19号で浸水被害を受けた福島県いわき市二本松市も含まれ、それぞれ7%ほど下落していて、災害が地価を押し下げる形となりました。

一方、おととしの西日本豪雨で大規模な浸水被害を受けた岡山県倉敷市真備町は、去年、住宅地の下落率で1位から3位までを占めていましたが、復旧・復興が進む中で、住宅地の需要が回復しつつあることから、ことしは、2%前後の上昇に転じました。

ことしの「地価公示」について、不動産の調査会社「東京カンテイ」の井出武上席主任研究員は、「外国人観光客が多く訪れることで、商業施設向けの土地だけでなく、そこで働く人たちの住宅地にまで、地価の上昇が広く波及している。魅力的な観光地のあるエリアは上昇する一方で、そうではない人口減少が続くエリアは下落する傾向にある」と分析しています。

そのうえで、新型コロナウイルスの感染拡大が地価に与える影響について、「影響は避けては通れないと見ている。事態がいつ収束するのか、先行きを見通すのは非常に難しく、先行きが見通せないと不動産を取得する意欲も減退してしまう。事態が長引けば長引くほど、不動産価格が下がり、最終的には地価を押し下げていく。特に、外国人観光客が多く訪れることで地価が上昇してきたエリアは影響も大きくなる」と指摘しています。

また、マンションにテレワーク向けの作業スペースを設ける動きについて、井出氏は、「今後、テレワークを行うスペースのニーズは高まっていくと思うし、マンションにワークスペースを作る動きは広がっていく可能性がある」と話しています。

国土交通省は、土地取り引きの指標とするため、毎年1月1日時点の土地の価格を公表していて、関東地方の1都6県では8000か所余りが対象となっています。

「住宅地」では、去年の同じ時期と比べて、東京都で2.8%、埼玉県で1%ちょうど、千葉県で0.7%、神奈川県で0.3%と、いずれも上昇しました。

特に東京23区では、すべてで地価が上昇し、このうち荒川区や豊島区など交通の便がよく、相対的に割安とみられる都心の北側の区を中心に上昇率が高くなっています。一方、栃木県はマイナス0.8%、群馬県はマイナス0.6%、茨城県はマイナス0.5%と下落傾向が続いています。

また、「商業地」は東京都で7.2%、千葉県で3.4%、神奈川県で2.7%、埼玉県で2%ちょうど、いずれも上昇していて、関東南部を中心とする東京圏は住宅地、商業地ともに7年連続の上昇となりました。

上昇率が最も高かったのは、東京 台東区の浅草1丁目で、去年より34%上がりました。台東区は、外国人観光客の増加で店舗やホテルの需要が高まり、東京圏の上昇率上位10地点のうち7地点を占めました。

不動産の調査会社「東京カンテイ」の井出武上席主任研究員は、「観光客の増加が商業地だけではなく住宅地などの地価も押し上げる結果となった」と分析しています。そのうえで、今後の見通しについては、「新型コロナウイルスの影響が長引けば、インバウンド効果が高いエリアを中心に地価への影響は避けられない」と話しています。

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