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ことしの「東芝」の株主総会で、総会の事務を受託していた三井住友信託銀行が、議決権行使の書面の扱いをめぐって期限内に届いた書面を、議案を採決する集計の対象から外していた問題で、みずほ信託銀行でも同様の不適切な扱いが371社であったと発表しました。

一部の株主の権利が損なわれる事態が起きていました。
株主総会の議案への賛否を株主が表明する「議決権」の行使をめぐり、三井住友信託銀行は書面の集計作業の委託を受けた975社で不適切な対応があったと発表しました。

期限内に届いていた書面を集計の対象から外していたということで、一部の株主の意見が採決に反映されなかったことになります。

三井住友信託銀行の発表によりますと、株主が議決権を行使するために事前に郵送する書面について、株主総会の事務を担うグループ会社の日本株主データサービス」が、実際は総会の前日に書面が届いていたのに締め切りが過ぎた総会当日に届いたものとして扱い集計の対象から外してしまう不適切な処理を行っていたということです。

こうした処理は、「日本株主データサービス」が事務作業の時間を確保するため行われていて、株主などには知らされないまま少なくともおよそ20年にわたって続けられていたということです。

この結果、ことしは集計業務の委託を受けた975社で、一部の株主の意見が採決に反映されていませんでした。

ただ、再集計したところ株主総会の議案の結果に影響を及ぼすケースはなかったとしています。

記者会見した三井住友信託銀行の海原淳取締役専務は、「集計結果に修正が生じることとなり、深くおわび申し上げます」と陳謝したうえで、今後こうした処理は取りやめるとしました。

今回の問題は、ことし7月の「東芝」の株主総会で、海外の投資ファンドが、郵送した書面が採決に反映されていないと主張したのをきっかけに明らかになりました。

同様に「日本株主データサービス」に事務を委託していたみずほ信託銀行も、24日不適切な扱いが371社で確認されたと発表しました。

2つの信託銀行で合わせて1346社の集計業務で誤りがあったことになり、株主の権利が損なわれる事態が広がっています。

集計作業を委託していた三井住友信託銀行が不適切な対応があったと発表したことについて、東芝は「再集計の結果を待つとともに、監査委員会による三井住友信託銀行の調査の方法や、その結果の妥当性についての検証結果を踏まえ、適切な措置を講じていく」とコメントしています。

日本株主データサービス」は、株主総会に向けて事前に株主から郵送される書面の集計などを主な業務としています。

2008年、「三井住友信託銀行」と「みずほ信託銀行」が50%ずつ出資して設立しました。会社によりますと、業務を委託している企業はことし3月末時点で上場企業全体のほぼ6割にあたるおよそ2200社に上るということです。

このうち、ことしの株主総会が集中する期間に総会を行った1346社で、不適切な処理が明らかになりました。

三井住友信託銀行によりますと、今回の問題では議決権行使書の取り扱いで「先付処理」と呼ばれる特別な慣例が長く続いていたことが背景にあるとしています。

総会の事務を担う「日本株主データサービス」は、株主総会が集中する時期などに、株主から郵送される議決権行使の書面を、本来よりも1日早く受け取れるようにしていました。

株主総会の前に集中する議決権行使の書面の集計など事務作業に必要な時間を確保するためで、「先付処理」と呼ばれるこの慣例は、少なくともおよそ20年にわたって続けられてきたということです。

この「先付処理」では、書面の配達日を示す「交付証」には本来、到着する予定だった日付、つまり実際の到着より1日遅い日付が記されます。日本株主データサービスは、締め切り前の総会前日に届いた書面でも、交付証の日付に基づいて締め切りが過ぎた総会当日に届いたことにしていました。

民法では、郵送などでの意思表示は相手に到着した時点で効力が生じると定めています。しかし「先付処理」の慣例に基づいて、書面は期日までに届かなかったと見なされ、株主総会の採決の対象外とされていたのです。一連の処理は、株主や委託元の企業にも周知されずに行われていました。

三井住友信託銀行は、「先付処理」と呼ばれる方法を長年にわたって続けてきた理由について、「議決権行使の処理をできるだけ的確にやるために、“現場の知恵”みたいな形で続いてきたと考えている。今回のように集計方法に問題があるというのは、認識できなかったというのが正直なところだ」と説明しています。

ただ、こうした不適切な書面の処理は株主の権利を損なうことになるとの指摘も出ています。

株主総会での議案の採決について、会社法では一連の事務処理を外部に委託することができると定めています。

今回のケースでは、株主総会を開催する企業から、三井住友信託銀行などが事務処理の委託を受け、信託銀行のグループ会社の「日本株主データサービス」に再委託していました。

株主総会に向けて、日本株主データサービスは株主から事前に郵送された議決権を行使するための書面を集計し、委託元の企業に報告することになっています。

不適切な処理を続けていたことについて、三井住友信託銀行は、行内の一部で把握していたものの、長年の慣例としてとらえ、問題があるという認識を持てなかったとしています。

この問題について企業統治に詳しい日比谷パーク法律事務所の久保利英明弁護士は、「議決権を行使し、書面が届いているのにカウントされなかったことは投票する株主の権利はどこに行ったのか、と、株主にとっては心外な事態だ。全く公表も発表もしないまま20年間堂々と行われてきたことも問題だ」と指摘しています。

そのうえで、「透明性や正確性にも欠ける今回の事態は、日本のマーケット全体の信用や信頼を損なうことにもなりかねず、信託銀行は説明を尽くしたうえで、期限内に届いた書面はすべてそのとおり集計するという正直な姿勢をとるようのぞみたい」と話しています。

#法律