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Netflixで「ザ・クラウン(王冠)」のシーズン4が配信となり、話題を呼んでいる。

シーズン1・2は若きエリザベス女王と父親のジョージ6世の時代、20世紀前半をとりあげ、思いがけず王冠の座の重責が降りかかってきた家族に焦点をあてている。

シーズン3・4は熟年を迎えたエリザベス女王の最盛期ともいえる時代となり、チャールズ皇太子とダイアナ・スペンサーの結婚、やがて破局へ向かう兆候が見え始め、限りなく現代に近づく。


チャーチル首相からジョンソン首相まで、これまで14人の首相と共に生き、エリザベス女王の任期は最長となり、今も記録は更新中だ。

現在、94歳のエリザベス女王は自ら退位するということがなければ2022年に即位70年という在任最長記録で祝賀会が盛大に開かれることであろう。

「ザ・クラウン」は20世紀の現代史を駆け抜けるようなシリーズである。

「ザ・クラウン」のシーズン4まで見て、イギリス王室がいかに「ドイツ的」であったかを筆者は改めて認識させられた。

というのもイギリス王室は、この300年あまりドイツとのゆかりがとても深い。はじまりはステュアート朝が後継者に恵まれず、ドイツの遠戚、ハノーバー家からジョージ1世を王として迎えたことにあった。

1714年から1837年までイギリス王家は「ハノーバー朝」として栄え、ジョージ1世から数えて4代目にあたるヴィクトリア女王は夫をドイツ、コーブルク家から迎え、以降、イギリス王家は「サクセン・コーブルグ・ゴータ朝」となった。

ところが、第1次世界大戦中、敵国となったドイツに対し、イギリス人の反感が強まったことで、王室も「ドイツ外し」をせざるをえなくなった。

おりしも第1次世界大戦ではロシアで革命が起こり、ニコライ2世一家が銃殺され、ドイツでもヴィルヘルム2世が退位し、オーストリア・ハンガリー帝国は消滅し、各国で王室の存続が問われることとなった。

このことはイギリス王室に危機感を募らせた。ニコライ2世の妻、アレクサンドラはヴィクトリア女王の孫、ヴィルヘルム2世もヴィクトリア女王の孫であったからだ。ギリシャやスペインでは政変が繰り返され、王室が廃止されたり、復活したりできわめて不安定な時代でもあった。

そこで家名をイギリス的な名前に変更してはどうか、「どの名前がふさわしいか」あれこれ候補があげられた。

「ザ・クラウン」では、「ウインザー城に住んでいるからウインザーにしたらどうか」ということで「ネーミング変更」を行う場面が出てくる。ウインザー城のもとはノルマン朝(つまりフランス人)であったころ、ウィリアム1世が11世紀に基礎を作った城であった。

こうしてイギリス王家はいとも簡単に「ウインザー朝」と生まれ変わり、「ドイツ外し」が進められた。

視聴者はあたかもすべてが事実であるかのような錯覚に陥りやすいが、王家からすればとんでもないことかもしれない。一体、王室の物語はどこまでが事実で、どこまでがフィクションなのか。

イギリス王家は、第2次世界大戦後、「市民に近い王室」を求められる一方、王家であるからには気品を保ち、市民とは隔絶した生活を余儀なくされる。

特にメディアが新聞やラジオからテレビへと発展していった時代に、テレビの影響力を最初に認知したのはエジンバラ公、フィリップ殿下であったということが「ザ・クラウン」から伝わってくる。

今ではすっかり「影役」に徹しているエジンバラ公だが、本来ならばれっきとした一家の長である。エリザベス女王は「意中の人」と結婚できたことでは幸福であったのではないか。

イギリス王室は18世紀のはじめごろから、王室の婚姻相手はプロテスタントの王家からという継承法を用いてきたため、婚姻はとかくデンマークやドイツのプロテスタントの王室からということになりがちであった。その後、1917年には婚姻法も大幅に改正され、王家ではない家系からでも婚姻が可能になった。

しかし、そうはいっても長年、伝統に縛られてきたイギリス王家がすぐに庶民的になるわけもなく、エリザベス女王の叔父、エドワード8世は「意中の人」と結婚するために在位わずか1年を経ずに2度離婚を経験していたアメリカ人、シンプソン夫人と結婚し、退位を迫られた。

「意中の人と結婚すること」がままならないイギリス王家の伝統は、チャールズ皇太子へと脈々と続いたわけだが、その後の経緯がどうなったかはみなの知るところだ。

「王室にふさわしい結婚相手」を選ぶことは王室の存続にとって死活問題である。まして「貴賤結婚」という言葉に象徴されるほど、王室にとって身分のちがう結婚相手を配偶者として迎えた場合、なんらかの制裁が待っている。

そこで30歳を過ぎたチャールズは、将来の王として「正しい配偶者を選ぶべき」ことから、わずか13回しか会ったことがなかったダイアナ・スペンサーと結婚を決めたという。法をいくら改正したところで、それまでの伝統を骨抜きにすることはなかなかできなかったのではないだろう。

チャールズ皇太子の父、フィリップ殿下の父方はデンマーク王家とギリシャ王家の出身ということで出身は過不足がなかったが、母親はドイツ、ヘッセン公の傍流の家系、バッテンベルク家の出身であった。

ギリシャでも革命が起こると母親のアリスは精神が不安定になり、サナトリウムに送られ、父親はフィリップを寄宿学校に入れた。なおフィリップの姉たちはいずれもドイツ人と結婚し、ナチスドイツに住んでいた。

フィリップを精神的に支え、父親代わりになったのが母の弟、ルイス・バッテンベルク卿であったのだが、この「バッテンベルク」というドイツ名も、第1次大戦後、イギリス風に「マウントバッテン」と改名された。

マウントバッテン卿は、のちにチャールズ皇太子の良き父親代わりとして心のささえになるとともに、チャールズ皇太子に行動の規範を示したという。

なお、エリザベス女王は、曾祖父がドイツ人、アルバート公のひ孫である。そして、フィリップ殿下だけでなくチャールズ皇太子もドイツ人であったマウントバッテン卿の規律正しい時代の人物の影響を受けていたわけだ。

イギリス王家はすなわち、規律と礼節を重んじるドイツ的伝統の影響を脈々と受け継ぎ、現在にいたるまで伝統に縛られてきたのではないだろうか。

しかし、そうはいってもイギリス王家には日本の皇室に比べて、「自由」がある。

「ザ・クラウン」では、チャールズ皇太子エリザベス女王の妹、マーガレット妃など、自分で自動車を運転し、外出したりする場面があるが、日本の皇族にはありえない「自由」ではないだろうか。

そういえば、チャールズ皇太子は80年代、ロンドンの建築に関するドキュメンタリーで案内役を担ったこともあった。文化や芸術に自分なりの見解を述べ、テレビの番組に出演するということは、日本の皇族にはありえないことである。

イギリス王室が「ドイツ的」であったことで、ひとつ、良い話がある。クリスマスに飾られるクリスマスツリーだ。クリスマスにクリスマスツリーを飾る風習は、ドイツが発祥地だ。

クリスマスはキリストの誕生を祝う行事であるが、もともとキリスト教にはクリスマスツリーを飾る伝統はなかった。キリストが生まれた中東では針葉樹はおろか、緑葉樹を探すことさえままならない。

クリスマスツリーを屋内に飾るということは、森の民族であったドイツ人が5月に収穫を願い、家の中に緑の針葉樹の枝を飾ったことがはじまりであったらしい。クリスマスツリーは、北方で針葉樹がふんだんにあった中世ドイツから現代社会へと広がった、最も「ドイツ的なもの」である。

9人の子供を産んだヴィクトリア女王は夫、アルバート公ととても仲がよかったことで知られるが、アルバート公が故郷ドイツのクリスマスを感じられるよう、イギリスの宮殿にクリスマスツリーを飾ったことがはじまりであった。その仲睦まじさが伝えられるとともに、イギリス全国にクリスマスツリーが広められた。

なお、アメリカでは、19世紀半ばから大量に渡ったドイツ人の移民たちがクリスマスツリーをポピュラーなものにした。もともとイギリスからアメリカへ渡ったピューリタン清教徒)たちは17世紀ごろは「異教徒による侮蔑」としてクリスマスを祝うことさえ禁止しようとした。まして木に飾り物をすることはもってのほか、ということであった。


『ザ・クラウン』シーズン4 予告編 - Netflix

イギリスでは、感染力が強いとされる変異した新型コロナウイルスの感染が拡大していて、ロンドンを含む南東部では今月20日から外出制限などの厳しい措置が続いています。

感染はほかの地域でも広がっていて、26日には、イングランドの南東部で外出制限などの対象地域がさらに拡大されたほか、北部のスコットランドや西部ウェールズなどでも同様の措置が始まりました。

26日はクリスマス翌日のボクシングデーと呼ばれる祝日で例年、多くの店が大規模なセールを行いますが、ことしは規制のため、小売店などは原則として営業できず、ロンドンの街なかは閑散としています。

イギリスでは、感染拡大を受けて、予定されていたクリスマスの時期の規制緩和も急きょ、大幅に縮小されたほか、南アフリカで見つかった別の変異したウイルスも確認されています。

1日に新たに感染が確認される人はここのところ、4万人近くにのぼる日もあるほか、入院している人の数は、ことし春のピーク時に迫っていて、警戒が強まっています。

イギリスで確認された変異ウイルスは、海外では少なくともイギリスを含め18の国と地域で確認されています。

26日にも、スペインのマドリード州がイギリスから帰国した人など4人から変異ウイルスが検出されたと発表したほか、スウェーデンの保健当局もイギリスから入国した1人の感染が確認されたことを明らかにしました。

さらにカナダのオンタリオ州も、外国への渡航歴などがない2人から、感染が確認されたと明らかにしました。

また、南アフリカでは、イギリスで確認されたものとは別の変異ウイルスが検出されていて、各国は水際対策を強化するなど対応に追われています。

【イギリスと同じ変異ウイルス】
イギリス、アイスランド、イタリア、オランダ、デンマーク、オーストラリア、イスラエルシンガポール、香港、ベルギー、ドイツ、スイス、レバノン、フランス、アイルランド、スペイン、スウェーデン、カナダ

【別の変異ウイルス】
南アフリカ(イギリスでも南アからの渡航者と接触した人で検出)

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