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悲しいことだが、世間はマリエさんが33歳の大人の女性になってようやく口にできたそんな15年越しの告発を聞いて、「ああ、あの黒い噂で引退した大物芸人ね、さもありなん」と誰も驚かなかった。枕営業、という言葉自体にも、「だって芸能界だものね」とすっかり耳が慣れてしまっていた。

だが、あえて当事者たちの当時の年齢、つまりMC芸人50歳、中堅芸人42歳、そしてマリエさん18歳という具体性をもってあらためて状況を想像すれば、それが我々の住む一般世間であればどれだけ醜悪でひとりの女性の人生を深く傷つけるに十分な出来事か、わかるのではないだろうか。それなのに、SNSは決してマリエさんへの共感に溢れているとは言い難い。

引退した大物芸人は沈黙を守り、現在も活躍する芸人の事務所からは「事実ではない」と否定する声明が出され、材料が供給されないために報道が続かない。何より、週刊誌やウェブでいくつかの後追い報道はあっても、新聞やテレビで扱われることはなく、見事なスルーぶりに「むしろ変じゃない?」と違和感を口にする人もいる。

ひとつ目のスルーの理由、それは有り体に言って、マリエさんがカナダ系のミックスで美人で都会育ちで優秀で裕福な家庭の出身ということだ。つまり世間が喜んで「かわいそうに」と肩入れするような典型的な弱者ではないのである。枕営業を断って日本の芸能界で仕事がなくなったからといって困窮などせず、ニューヨークのパーソンズという超有名アートスクールへファッションを学びに留学し、帰国後は自身のアパレルブランドを立ち上げた成功者である。

どうしてマリエさんの告発に共感が生まれないのか。マリエさんと同世代の女性に聞くと、「18の時にそんな目に遭うなんて、可哀想だなとは思ったんです。でもそうは言っても、マリエさんって美人だしスタイルいいし、お嬢ですよね」と言う。「大物芸人にも“選ばれて”誘われるくらい綺麗だから他にチャンスはたくさんあるし、実家が裕福なら芸能界でお仕事がなくなっても食べていけないわけじゃないし、だから自分としては共感のしようがないんですよね。えーそうだったんだ、って、そこまでで」

二つめのスルーの理由は、告発の相手が引退し「過去の人物」であること。「いまさら、寝た子(大物芸人の乱行)を起こさないでほしい」。特にテレビの世界にはそんな気持ちがあるのではないだろうか。いわゆる黒い噂とともにくだんの大物芸人が引退して以来10年。その間に、芸能界はもともと歴史的に長らく内包していたグレーさをいかにクリーンにするかを迫られ、内外から改善を進めてきた。

つまり、演じる側の人々にとっては何らかの「芸のこやし」と許容してきたような無頼な反倫理的行為、制作発信する側の人々にとっては「それが我らマスコミらしさ」と自負してきたような殺伐とした俗物性にメスが入り、静かな新陳代謝を伴いながら膿を出してきたのだ。

先の大物芸人の引退は、まさにそうした新しい時代が始まるきっかけであり、象徴でもあった。だからこそ「もう今さらそこに触れたくない」「せっかく片付けたのだから、過去のものにしておきたい」というのが、10年かけてクリーンアップを進めてきた人々の本音なのだろう。

だから、確かにマスコミは積極的に擁護もせず、「黙ってスルー」していても、その代わりにマリエさんを叱ったり責めたりすることもない。それが意味することとはつまり「沈黙は静かな同意」、口にしないだけの承認なのだ。

日本では、「被害者として共感されるのにも条件がある」。条件つきで告発を認めてもらえるような社会は、まだまだグレーだということである。

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