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「紋繍院」は82年に完成した、平壌市民に人気のスポット。1階には大浴場やプール、2階には家族風呂と美容室などがある。

「男女のカップルが家族風呂を利用するためには、結婚証明書が必要です。ただ、ワイロを払えば誰でも使える。北朝鮮には一般人が気軽に泊まれる宿泊施設がないので、結婚前の恋人や不倫相手同士が使用していました」(韓国紙記者)

性行為を黙認していた施設の責任者が目をつけたのは、教育関係者だ。平壌音楽舞踏大学や平壌演劇映画大学の教授らと結託。在学中の20代前半の女子大生に「1ヵ月に500ドル(約5万3000円)以上稼げるおいしい仕事がある」と勧誘し、施設内のカラオケ店で売春させたのだ。客は、中央や平壌市党(朝鮮労働党平壌市委員会)の幹部だった。前出の高氏が話す。

「教育当局は、大学に対し『経済課業』という名の上納金を求めています。大学の多くは、そのノルマを学生に転嫁し、さまざまな名目で金品を提供するよう強いているんです。

『紋繍院』と結託した教授たちは、大学からカネを無心され困っていた女子学生の足元を見たのでしょう。事態が露見し、摘発のキッカケとなったのは内部告発。斡旋された『仕事』が売春とは知らずに、性行為を強要された女子学生が通報したんです」

この集団売春に金正恩氏は激怒。北朝鮮の刑法249条「売淫罪」では、「売淫行為を行った者は1年以下の労働鍛錬刑に処す。罪状が重い者には5年以下の労働教化刑に処す」と記されているが、超法規的に厳罰を科す。平壌市党の幹部4人と斡旋者2人を公開銃殺。女子大生約50人を処分したのだ。

「この事件だけが取り締まり厳格化の要因とは言い切れませんが、金正恩氏が風紀の乱れに危機感を覚えたのは事実でしょう」(高氏)

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