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 対面販売でグレードの高い商品を扱うことが多い百貨店だが、消費者のニーズが多様になり、対応できなくなった。衣料品は最新の流行を低価格で提供するユニクロなどファストファッションや、ネット通販に顧客を奪われた。家電も量販店などに、家具はニトリなどに顧客が流れてしまった。

「昔はハレの日に行くところで、子どもはおもちゃを買ってもらい、食堂で食事をした。ところが平成の30年間で百貨店が大きく変わり、行くとしてもデパ地下くらい」

 こう話すのは流通アナリストの渡辺広明さん。「ブランド品は値段が高すぎて、一部の人しか買えず、アパレルは商品価値と価格が一致していないと考える消費者が多い」(渡辺さん)

 百貨店は駅前など好立地だが、さらに好立地な駅ビルのような強力なライバルが現れ、若者が行かなくなった。百貨店が生き残る道は富裕層ビジネスや、食品を扱うデパ地下、いつもにぎわう北海道展などの催事という。

「デパ地下は、本店以外で買えないお店が出ていて、存在感がある」(同)

 百貨店の低迷は「消費者がモノを買う場がデジタルに移っているため」と指摘するのが、ニッセイ基礎研究所の久我尚子上席研究員。消費者は買う前にネットで実売価格を調べるなど、賢く行動していると話す。百貨店は「一等地のメリットで不動産業の展開や、衣料品中心から業態転換の動きが強まっている」(久我さん)。百貨店の販売に限界が見えてきており、ネット通販のブランドなどにテナント業態を広げているという。

 百貨店には医療関係の診療所や公共の図書館、進学塾や英会話教室、フィットネスクラブなどを誘致する動きもある。パルコの錦糸町店(東京都墨田区)には7階に「きんしちょう駅前歯科」などがあるほか、大丸の須磨店(神戸市)には4階に神戸市が3月、名谷図書館をオープンさせた。

 大丸心斎橋店大阪市)は、老朽化した本館を建て替え、19年9月にオープン。本館は「売り場面積の65%が定期賃貸借契約の家賃収入」(広報担当)になっている。松坂屋の静岡店(静岡市)は22年のリニューアルオープンで、7階に都市型アクアリウムを導入する。

 一方で、百貨店が従来得意としてきたのが富裕層ビジネス。外商と呼ばれる富裕層専門の担当者が訪問販売し、来店の際には付き添う。

三越伊勢丹などの百貨店で売り上げ全体の15%程度が外商からとみられる」と話すのは、金融コンサルタントの高橋克英マリブジャパン代表。著書の『地銀消滅』(平凡社新書)では地方銀行と同じように、百貨店の閉店や再編が相次いでいると指摘するが、百貨店にしかない外商の強みは「ワンストップ」という。

「なじみの外商に頼めば、高級外車の購入先や旅行の手配先などにつないでくれる。富裕層には利便性がいい」(高橋さん)

 ただ、富裕層も世代替わりして、ネット通販に慣れた若い世代になると「ブランド価値がどこまで通用するのか」(同)。外商の将来は安泰でないという。

 そんな百貨店の外商ビジネスについて、オンライン接客で顧客層を広げられるとみているのが青山さん。

「外商が訪問販売できるのは1日に3件くらいが限度。オンラインになると、北海道や沖縄の顧客にも対応できる」(青山さん)

 従来の外商は例えば年間購入額1千万円クラスしか対応できなかったが、100万円クラスの顧客にも、それほどコストをかけずに対応できるとみる。「カジュアル外商」のようなもので、顧客層を拡大できるという。

 外商の商品の目利きや、ワンストップの接客サービス、さらに外商と付き合いがあるという社会的なステータスに価値を感じる富裕層はいそうだ。