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起訴されたのは、日本大学の前理事長の田中英壽被告(75)です。

東京地検特捜部などによりますと、田中前理事長は、背任事件で起訴された大阪市の医療法人の前理事長、籔本雅巳被告(61)や日本大学の理事だった井ノ口忠男被告(64)から受け取ったリベートなどおよそ1億1800万円の所得を隠し、平成30年と去年の2年間に合わせて5200万円を脱税したとして所得税法違反の罪に問われています。

関係者によりますと、所得隠しの内訳は、
▽籔本前理事長と井ノ口元理事から再任祝いなどとして渡されたおよそ7800万円、
▽キャンパスの補修工事を受注した建設会社側から提供された3000万円、
▽大学の付属病院の建て替え工事で業者の選定に関与した大阪の設計事務所側から提供された1000万円で、
これらの多くは田中前理事長の妻が受け取っていたということです。

田中前理事長は、特捜部の調べに対し当初は現金の受け取り自体を否定していましたが「急に大金が入り、迷った末に税務申告しないよう妻に指示した」などと供述し、起訴された内容を認めているということです。

田中前理事長は保釈を請求するとともに、今後修正申告する方針です。

一連の事件を受け、日本大学の現職の理事を務める紅野謙介文理学部長がNHKの取材に応じ、これまでの理事会の運営実態を証言するとともに「責任を痛感している」と述べました。

この中で、紅野学部長は「いつか権力の中枢に大きな問題があることが、あらわになる瞬間が来るのではないかと不安を持っていた。理事会メンバーとして情けなく、恥ずかしいし、責任を痛感している」と述べました。

そのうえで、前理事長の体制での理事会の運営実態については「田中前理事長が会議室に入ると、全員が起立をして着席するまで立っていた。議事についても全部シナリオができていて、それを議長である田中前理事長が読み上げながら進めていた。そうした一連のプロセスが繰り返されるうちに、発言できないような空気ができあがってしまっていた」証言しました。

また、田中前理事長は、ことし9月に大学が強制捜査を受けたあとも、ふだんと同じように学内の会議に出席していたということで「事件についての釈明は、ひとことも無かった。まわりも、本人が逮捕されるまで、できるだけことを荒だてないよう前理事長に配慮したり、そんたくしたりして、正面からおわびし改革するという形には程遠い状態が続いていた」と述べました。

今後の大学改革については「比較的、似たものどうしで酒を飲んでコミュニケーションが取れてると思うのはダメで、理事会、評議会の中に、もっと多様な価値観の人たちを入れなければならない。あらゆることを目に見える形で透明化し、学生、保護者、社会から監視の目が向けられているという意識を持って、改革に当たる最後の機会だ」と話しています。

田中前理事長を知る元大学関係者は、長年、相撲部の監督を務め、領収書の無いご祝儀や付け届けを受け取ってきた前理事長のいわゆる「ごっつぁん体質」が事件の背景にあるのではないかと指摘します。

この関係者は、NHKの取材に対し「田中前理事長の自宅のちゃんこ屋の一階で、理事長就任祝いとして、妻に現金10万円を包んで渡したことがある。10万円は序の口、最低限の気持ちで、喜ばれるか不安だったが一応、慣習として渡した」と証言しました。

そのうえで「長年、相撲部で監督を務めていた前理事長は『お祝い』と言われたら『うんうん』と受け取ってしまう。お前はよい奴だなとなってしまう。建築関係なら数億、数十億の仕事になるので、1000万円単位のお金が動いていたのではないか。一般的にありえない金額でも『ごっつぁん体質』で素直に受け取ってしまったのだと思う。今回の事件は、そういう体質から生まれたのではないか」と述べました。

慶應義塾大学商学部の中島隆信教授は、領収書が出ない個人的なお金のやり取りは、脱税の温床になりやすいとして、コンプライアンスの意識を高める必要があると指摘します。

日本相撲協会の組織改革にも関わった中島教授は「『ごっつぁん体質』と呼ばれるようなご祝儀など領収書の無い個人的な金のやり取りは相撲界に限ったものではなく、金額が大きくなれば感覚がまひし、脱税の温床になるおそれがある」と指摘しました。

そのうえで「今回の問題が学校法人の中で起きたことは非常に驚きで、もらった側はコンプライアンスの意識を高め、少額でも申告する癖を付けておく必要がある」と話しています。

関係者への取材で明らかになった事件の経緯と現金提供の詳細です。

関係者によりますと、田中前理事長は十数年前、アメリカンフットボール部の元監督からアメフト部出身の井ノ口元理事を紹介され、側近として重用するようになったということです。

その後、井ノ口元理事から大阪の大手医療法人のトップだった籔本前理事長を紹介され、相撲部OBの後援活動などを通じ親交を深めました。

所得隠しと認定された1億1800万円のうち、1000万円は3年前、平成30年の12月に、都内の飲食店で誕生日祝いとして籔本前理事長から提供されたということです。

さらに去年2月には、都内で開かれた日大ボクシング部のパーティーの会場で、大阪の設計事務所から現金1000万円が井ノ口元理事を通じて田中前理事長の妻に渡されたということです。

この設計事務所は、大学から籔本前理事長側に2億2000万円が流出したとされる付属病院の建て替え工事をめぐる背任事件で設計業者の選定に関わっていました。

また、去年8月には、都内の焼き肉店で籔本前理事長側から、現金3000万円を提供されたということです。

その2日前には、付属病院の建て替え工事の業務を受注した業者から、籔本前理事長のペーパーカンパニーに、実態のないコンサルタント料の名目で2億2000万円が送金されていて、大学から流出した資金の一部がリベートとして田中前理事長に渡った疑いがあります。

籔本前理事長は、ほかにも去年10月に、都内の飲食店で再任祝いとして3000万円を提供するなど、所得隠しと認定された1億1800万円のうち、7500万円は籔本前理事長から、300万円は井ノ口元理事から提供されたとみられます。

これらの現金は会食の場で、酒と一緒に紙袋に入れるなどして提供され、田中前理事長や妻が、その場で現金を確認することはなかったということです。

このほか、去年9月には、福島県郡山市の工学部のキャンパスの補修工事を受注した建設会社から、井ノ口元理事を通じて再任祝いなどの名目で現金3000万円が提供されたということです。

この3000万円について、建設会社の幹部は「井ノ口元理事から『今後もいろんな工事があるので理事長の世話にならないといけない』と迫られた」などと周囲に説明しているということです。

一方、田中前理事長は起訴された内容を認めたうえで「受け取った資金がリベートだという認識はなかった」などと周囲に説明しているということです、

田中前理事長が起訴されたことを受け日本大学は「関係者の皆様にご迷惑とご心配をおかけし、大変申し訳ありません。大学の130年の歴史の中で理事長が起訴されるという前代未聞の不祥事により、伝統ある日本大学の名が汚されたことに悲しみと憤りを感じております。今後このような事案が決して再発しないよう改革を速やかに実行するとともに、コンプライアンスの遵守を徹底し信頼回復に努めます」などとするコメントを発表しました。

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