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技能実習制度は、発展途上国の人材育成を主な目的としていて、ことし6月末時点で32万人余りが日本に在留していますが、賃金の未払いや不当解雇など企業側との間のトラブルが後を絶ちません。

実習生の支援などを行う国の認可法人「外国人技能実習機構」では、実習生からの相談窓口を設けて対応していますが、昨年度、寄せられた相談件数は2万3701件でした。

相談内容の内訳を見ると、「管理に関すること」が3967件で最も多く、次いで「賃金・時間外労働などの労働条件に関すること」が3877件、「途中帰国に関すること」が3002件などとなっています。

窓口は5年前に設けられ、コロナ禍で技能実習生の入国が制限されていた期間も含めて幅広い内容で相談は増え続けていて、全体の件数は、昨年度は前の年度・2020年度の1.8倍、2019年度の3.2倍になっています。

技能実習制度をめぐっては、安い労働力として実習生が使われるなど、目的と実態がかけ離れているという指摘もあり、政府は、制度の見直しに向けた有識者会議を設置し、近く初めての会合を開いて具体的な議論を進めることにしています。

日本に最も多くの技能実習生を送り出しているベトナムでは、円安が続く中で現地通貨ベースでの収入が実質的に減ることなどから、行き先を日本から別の場所に変更する人や、来日後にベトナムに帰国する人も出始めています。

出入国在留管理庁によりますと、ことし6月末時点で、国内で働きながら技術を学ぶ外国人技能実習生の数は32万7000人余りにのぼり、出身国別ではベトナムがおよそ55%を占め、最も多くなっています。

ベトナム国内には、国外に出て働くことを目指す人たちに対して、ことばや生活習慣などを教える送り出し機関が数多くあります。

このうちハノイにある送り出し機関では、これまではおよそ8割の人が技能実習生として日本を目指してましたが、このところ、行き先を台湾などに変更する人が増えているということです。

送り出し機関によりますと、背景には、円がベトナムの通貨、ドンに対してもことし始めから最大20%ほど値下がりし、日本で得た収入を現地通貨にした際に実質的に目減りしてしまうほか、ベトナムからの距離が近い台湾は渡航にかかる費用が少なく済むこと、日本の入国制限の今後の動向が不透明だと感じる人がいることなどがあるということです。

この送り出し機関では、日本に行くことを希望する人が減り、十分な人数を集められないとして、日本にある受け入れ先の団体に対して採用面談の日程を延期するよう依頼するなど対応に追われていました。

行き先を日本から台湾に変更した男性は、「日本も調べたが円がかなり安くなっている。現地にいる友人などがお金がたまらないと言っていた」と話していました。

送り出し機関のブイ・スアン・クアン会長は、「実習生は日本に行くか非常に迷っている。私たちは円のレートがあがり実習生たちが安定した収入を得られるようになることを望んでいる」と話していました。

35歳のグエン・チュン・タインさんは、ベトナム中部で妻と7歳の娘、それに3歳の娘の4人で暮らしています。

グエンさんは、新たな技能を学ぶとともに、子どもたちの教育費を賄いたいと技能実習生として日本へ行くことを決めました。

しかし、新型コロナの感染拡大で1年以上、入国できない状態が続き、水際対策が緩和されたことし5月末に来日して建設会社で働き始めました。

会社では、丁寧に仕事を教えてくれた上、職場環境もとてもよかったということです。

ところが家族への仕送りもしないといけない中、円安の影響で日本で得た収入がベトナムの現地通貨ベースで実質的に減ってしまう上、日本の物価が高くなり、生活費が想像していたよりもかかり、仕送りする金額を減らさざるを得なかったということです。

一方で、ベトナム国内では経済成長が続き、ことし7月には最低賃金がおよそ6%引き上げられるなど日本との差が徐々に縮まっていると感じたグエンさんは、来日してから3か月もたたないことし8月、ベトナムに帰国しました。

グエンさんは、帰国直後に3社からオファーを受けて、現在は地元の会社で働いています。

給料は日本にいたときと比べて4割ほど減ったということですが、家族と一緒に過ごせることや、今後の昇給が見込まれることなどから現在の生活に満足しているということです。

グエンさんは、「円の価値が非常に低くなる中で給与は期待していたほどではありませんでした。日本では勤務時間が非常に長く多くの時間を費やします。日本とベトナムの給料を比べると、3年間、妻や子どもと離れて暮らすだけの価値はないと思います」と話していました。

先月、愛媛県西予市の縫製会社で働くベトナム人技能実習生に対する残業代の不払いが明らかになりました。

支援団体などが開いた会見によりますと、技能実習生11人について、多い月では残業時間が150時間を超えていましたが、縫製会社からは、その大半が最低賃金の半分ほどの時給350円から400円程度しか支払われていないということです。

おととし以降の11人分の不払いの総額は、 2700万円ほどに上るということです。

こうした状況で同じ職場では働くことができず、会社も破産に向けた準備を始めたことから実習生たちは支援団体の協力によって岐阜県の別の縫製会社で受け入れてもらうことになりました。

問題の発覚後、縫製会社に製造を委託していた衣料品大手のワコールは、実習生の生活資金にあててもらうためとして500万円を寄付しました。

縫製会社の代理人は国の立て替え制度を使ってなるべく支払いたいとしていますが、不払いの総額には届かない見通しです。ベトナムに2人の子どもがいるディン・ティ・ビック・タックさんは、「残業代の未払いで子どもに十分な教育を受けさせてあげられず非常に残念です。会社からは何も連絡はなく、憤りを感じています」と話していました。

支援団体には、こうした相談が連日のように寄せられ、コロナ禍で制限されていた外国人の入国が緩和されたことし春ごろからは特に多くなっているということで労働団体の「連合東京」とも協力して対応にあたっています。

NPO法人「日越ともいき支援会」の吉水慈豊代表理事は「一日10件以上の相談がありますが、これはまだ氷山の一角です。私たちのようなNPOが毎日支援に飛び回っている状況は本来あってはならないことで、国の支援体制を整えてもらいたいです」と話していました。

外国人の労働問題に詳しい日本国際交流センターの毛受敏浩執行理事は、「技能実習生が20万、30万と増えてきた中で、すべてを今の制度でモニターするのは不可能になってきている。労働と人権の問題が世界中でクローズアップされる中で、人権上の問題は最初にクリアすべきだ」と指摘しています。

また、技能実習制度の見直しにあたっては、円安傾向もあって働き先としての日本の魅力が下がってきているとして、「日本でよりよい人材に活躍してもらうにはどうしたらよいのかという視点で制度を見直す必要がある。コロナ禍がある程度、落ち着き、世界中で人手不足が起きて人材獲得競争が起きている中で世界標準で考えて日本が本当に選ばれる国になっているのか、考える必要がある」と話していました。