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日銀は、20日までの2日間、金融政策を決める会合を開き、今の大規模な金融緩和策を一部修正することを決めました。

これまで、短期金利をマイナスにし、長期金利をゼロ%程度に抑えるとしたうえで、長期金利は「プラスマイナス0.25%程度」の変動幅で推移するよう調節するとしてきましたが、この変動幅をプラスマイナス0.5%程度に変更しました。

欧米の中央銀行がインフレを抑えるため利上げを続け、日本でも長期金利の上昇圧力が高まる中、日銀はこれまで0.25%を上限に金利の上昇を抑え込んできました。

今回、長期金利の上限を0.5%程度まで変動幅を拡大することで市場の動きに柔軟に対応できるようにするねらいがあるとみられます。

日銀は引き続き、緩和的な金融環境を維持するとして長期国債の買い入れについて、来月から3月まで、これまでの1か月あたり7兆3000億円から、9兆円に増額するとしています。

ただ、今回の日銀の決定に対し、外国為替市場では事実上金融引き締めにあたるという受け止めから円高ドル安が加速し、株式市場では株価が大幅に値下がりしています。

20日の債券市場では日本国債が売られ、長期金利の代表的な指標となっている10年ものの国債の利回りは、一時、0.460%まで上昇し2015年7月以来、およそ7年ぶりの水準となっています。

これを受けて20日の東京外国為替市場では円を買う動きが広がり、円相場は1ドル=133円台前半と4円以上値上がりし、ことし8月以来、4か月ぶりの円高水準となりました。

市場関係者は「日銀の金融政策の修正は市場から驚きだと受け止められている。日本とアメリカの金利差が縮まるとの見方からドルを売って円を買う動きが広がっている」と話しています。

20日の東京株式市場は、日銀がいまの大規模な金融緩和策の一部を修正することを決めたことを受けて、午後の取り引き開始直後に幅広い銘柄に売り注文が広がり、日経平均株価は一時、800円以上値下がりしました。

市場関係者は「日銀の金融緩和政策の一部修正は市場にとって大きな驚きだ。外国為替市場で急速に円高が進み、輸出関連企業の業績悪化への懸念が出たほか、金利の上昇により企業の設備投資や個人の住宅などへの投資が控えられるのではないかとの懸念も出ている」と話しています。

日銀が金融緩和策を修正し長期金利の変動幅を拡大したことについて市場では事実上、金融引き締めにあたるという受け止めが広がっています。

これについて日銀の黒田総裁は、記者会見で、金融緩和の効果がより円滑に波及するために行うものであり利上げではないという考えを示しました。

会見で黒田総裁は今回の長期金利の変動幅の拡大について、「金融緩和の効果が企業金融などを通じてより円滑に波及していくようにする趣旨で行うものであり、利上げではない」と述べました。

また、このタイミングで変動幅を拡大した理由について、「春先から世界的な金融資本市場の変動が高まり、それが一時、低下したように見えたのに、またこのところ非常に高まっていることを踏まえて今回の見直しを行った」と述べました。

長期金利の変動幅をさらに拡大する可能性について黒田総裁は、世界経済の動向は不確実で楽観はできないが、今のところ、変動幅をさらに拡大することは考えていないと述べました。

さらにいまの金融政策の枠組みや大規模な金融緩和政策を直ちに見直すような状況になるとは思わないと述べました。

また、20日決定した金融政策の一部修正が金融緩和を縮小する出口戦略につながるのかという質問に対して「今回の措置は、出口戦略の1歩というものでは全くない。いまは経済をしっかりと支えて賃金の上昇を伴う形で物価安定の目標を持続的・安定的に実現するために金融緩和を継続することが適当だ」と述べました。

一方、デフレ脱却に向けて2%の物価上昇率を目標と定めた2013年1月の政府・日銀の共同声明を修正する必要があるかという質問に対し黒田総裁は、「政府と日銀の共同声明に沿って必要な政策を実施した結果経済・物価は着実に改善し、デフレではない状態を実現した。現時点で共同声明を見直す必要があるとは考えていない」と述べました。

【会見詳細】

黒田総裁が着席し、午後3時30分、記者会見が始まりました。

政策の一部修正が正午すぎに発表されると円相場は1ドル=137円から一気に133円台まで円高方向に変動。

会見開始時の円相場は1ドル=132円台後半です。

会見冒頭で、黒田総裁は「緩和的な金融環境を維持しつつ、市場機能の改善を図り、より円滑なイールドカーブ全体の形成を促していくため長短金利操作の一部を見直すことを決定した」と述べました。

見直しの理由について「春先以降、海外の金融資本市場の変動が高まり、日本の市場もその影響を強く受けている。こうした状態が続けば金融環境に悪影響を及ぼすおそれがある」と述べました。

「物価安定の目標実現目指す」

今回の金融緩和策の一部見直しの狙いについて黒田総裁は、「今回の措置により金融緩和の効果が、企業金融などを通じてより円滑に波及していくと考えている。金融緩和の持続性を高めることで物価安定の目標の実現を目指していく」と述べました。

金融政策について点検や検証「時期尚早」

黒田総裁は2%の物価上昇率の目標やいまの金融政策について点検や検証をする考えがあるかという記者の質問に「日銀は賃金の上昇を伴う形で2%の物価安定の目標を持続的安定的に実現することを目指している。現状ではその実現までになお時間を要する見通しで金融政策の枠組みや出口戦略などについて具体的に論じるのは時期尚早であると考える。物価安定の目標の実現が近づいてくれば出口に向けた戦略や方針などについて金融政策決定会合で議論し、適切な情報発信していくことになると考えている」と述べました。

「今回の措置 利上げではない」

黒田総裁は、「今回の措置は市場機能を改善することでイールドカーブコントロールを起点とする金融緩和の効果が企業金融などを通じてより円滑に波及していくようにする趣旨で行うものであり、利上げではない」と述べました。

そのうえで「イールドカーブコントロールの運用の一部の見直し、これはイールドカーブコントロールをやめるとかあるいは出口というようなものは全くない」と述べました。

「今回の措置 出口戦略ではない」

20日決定した金融政策の一部修正は金融緩和を縮小する出口戦略につながるのかという質問に黒田総裁は、「今回の措置は、出口政策とか出口戦略の1歩とかそういうものでは全くない。いまは経済をしっかりと支えて賃金の上昇を伴う形で物価安定の目標を持続的・安定的に実現するために金融緩和の継続が適当だ」と述べました。

将来の長期金利の変動幅の拡大「今のところ考えてない」

将来の長期金利の変動幅の拡大の可能性について黒田総裁は、「ウクライナ情勢に加え、欧米の金利引き上げによる経済や金融資本市場への影響は不確実だ。最近は中国でのゼロコロナ政策の転換以降、コロナ感染症の動向が非常に分かりにくくなっており不確実だということもある。楽観はできないがさらなる拡大といったようなことは今のところ考えてない」と述べました。

「景気にはプラス」

今回の長期金利の変動幅の拡大の措置が住宅ローン金利の上昇など経済に与える影響をどう考えるかという質問に黒田総裁は「長短金利操作=イールドカーブコントロールの基本は変わらない。経済に対する刺激効果や成長を促進し経済の拡大を図る方向感に基本的な変更はない。経済への波及がよりスムーズ・安定的に起こり、むしろ景気にはプラスではないかと思われる」と述べました。

「世界的な金融資本市場の変動の高まり踏まえ見直し」

黒田総裁は、記者会見でなぜこのタイミングで長期金利の変動幅を変更したのか質問されたのに対して、「春先から世界的な金融資本市場の変動が高まり、それが一時、低下したように見えたのに、またこのところは非常に高まっていることを踏まえて今回の見直しを行った。あくまで長短金利操作がより安定的に機能するようにしたわけで、何もいわゆる金利引き上げとか金融引き締めを行ったわけではない」と述べました。

「大幅な金融緩和政策 直ちに見直すような状況にはならない」

黒田総裁は、「いまの長短金利操作についても大幅な金融緩和政策にしてもそれを直ちに見直すような状況になるようには思われない」と述べました。

物価上昇率2% 実現できる状況にはない」

黒田総裁は今後の物価の見通しについては、「来年度は、やはり今年度よりも物価上昇率は低下していくとみられ、賃金の上昇を伴って持続的・安定的に2%が実現できる状況にはまだない」と述べました。

金利引き上げでないこと 十分市場関係者にも伝えたい」

黒田総裁は、市場とのコミュニケーションについて問われたのに対し、「金利の引き上げでないことは十分、市場関係者にも伝えたい。企業金融を通じて経済にプラスの影響を及ぼすことを考えて行った決定だということを、今後とも十分説明していきたい」と述べました。

政府・日銀の共同声明「見直す必要ない」

デフレ脱却に向けて2%の物価上昇率を目標と定めた2013年1月の政府・日銀の共同声明を修正する必要があるかという質問に、黒田総裁は、「2013年以降、政府と日本銀行の共同声明に沿って必要な政策を実施してきた。そうしたもとで我が国の経済物価は着実に改善し、デフレではない状態を実現した。現時点で共同声明を見直す必要があるとは考えていない」と述べました。

「経済にマイナス影響 完全に防げる」

黒田総裁は、長期金利の変動幅の拡大で日本経済にマイナスの影響はないのかと質問されたのに対して、「今回の見直しは市場機能の改善に焦点を当てたものだ。必要に応じて国債の買い入れの増額などをやるということにしているので、経済に何かマイナスが出てくるということは完全に防げるというふうに思っている。私自身は、金融緩和の効果がより進み経済にプラスの影響を及ぼすということを狙っている」と述べました。

日銀の国債大量買い入れ「財政ファイナンスではない」

日銀が国債を大量に買い入れていることについて黒田総裁は「財政ファイナンスではなく、私どもの金融政策が何か、財政政策をゆがめているというようなことは考えてない。財政政策はあくまでも政府、国会がお決めになることだ」と述べました。

その上で、今回の緩和策の一部修正の意図について、「為替などへの影響はあり得るかもしれないが、そういうものではない」と述べました。

社債などへの影響も配慮

黒田総裁は今回、変動幅を拡大したねらいについて企業が発行する社債などへの影響も考えたという認識を示しました。

黒田総裁は「国債金利社債や銀行の貸し出しの基準になっているので、その基準がはっきりしないとか、市場に信用されないことになると企業金融全体にマイナスになる。企業金融に緩和効果がスムーズに及ぶようにすることにした」と述べました。

会見終了

黒田総裁の記者会見は、予定の45分間を超え、1時間以上に及び、午後4時30分すぎに終了しました。

みずほ銀行金融市場部の南英明チーフディーラーに聞きました。

「サプライズ感で大幅な動きが」

Q. 一気に円高が進んだ。その時のディーリングルームは?

A. 今年1番の忙しさと言っても過言ではない。完全に想定外だったので、緊張感が高い1日だった。

為替が一方向に動き(日銀が)いったい何を発表したのだろうとサプライズ感に包まれた。

一時、1ドル=150円台に達した円安がピークアウトし、市場も円高に戻る理由を探していた。
市場は日銀の政策の修正はないと思っていた中で、サプライズ感でこれだけ大幅な動きがでた。

また海外の中央銀行の金融政策を決める会合が先週、終わり今週から休みに入るトレーダーも多かったので取り引きが薄かったことも変動に影響したと思う。

「金融政策の大きな転換点」

Q. 事実上の金融引き締めに当たるとみるか。

A. 日銀の金融政策において大きな転換点だと捉えていいと思う。

黒田総裁は利上げではないと話しているが市場の受け止めは違う。

これから徐々に引き締めに向かって動いていくというメッセージだと受け取っている。

「来年にかけては円高方向」

Q.今後の為替の見通しは。

A.中期的には円高に向かうと思う。

ことしは強烈に円安が進んでいた。

その前提条件の1つが日銀の金融緩和政策の維持で、この前提状況がなくなったため巻き戻しが進むと思う。

これまでドルの独歩高だったがアメリカのインフレもどうやらピークアウトしたと見る声も多いので、来年にかけては為替の方向は円高方向と見る市場参加者も多い。

日銀が、いまの大規模な金融緩和策の修正を決めたことについて、東短リサーチの加藤出チーフエコノミストに聞きました。

「とまどう市場参加者は多い」

Q.今回の日銀の決定をどのように受け止めたか。

A.非常にサプライズだった。

金融政策によって市場はゆがんだ状況にあるため、変更すること自体は歓迎をしたいが、今までの説明とはずいぶん異なっており、とまどう市場参加者は多い。

通常であれば、先行きのインフレの見通しが上方修正され、金利を上げることが一般的だが、今回はそこの見通しは変わっていない。

非常に分かりづらい説明になっている。

「金融引き締め方向への第一歩」

Q.日銀は否定しているが、事実上の「金融引き締め」との受け止めも市場にはある。これについてどう考えるか。

A.日銀としては、引き締めではないという説明だが、事実上の金融引き締め方向への第一歩だと受け止めている。
一方で、まだ微調整の範囲にとどまっていることは確かだ。

今後、物価の上昇率がさらに高まることを警戒し、世界的に金融引き締めが進む中、政策を変更しない日銀のかじ取りは難しく、次期総裁にとって、動きやすい環境づくりをしているのではないか。

「長期の住宅ローン金利 いくらか上昇も」

Q.私たちの生活への影響は。

A.それほど大きな金利の上昇ではないものの、10年国債金利が上昇すれば、長期の住宅ローン金利がいくらか上昇するかもしれない。
また、このまま為替が円高方向に進むのであれば、輸入物価の上昇からくる食品価格上昇のペースがいくらか和らぐ可能性がある。

「今回の修正はかなりイレギュラー」

Q.今回の金融緩和策の修正は、あくまで緊急的な措置なのか、それとも今後も続く可能性があるのか。

A.今回の修正はかなりイレギュラーであるため、市場機能のゆがみを和らげるという理由で今回と同じような手法で政策を変更する可能性は低いと考えている。

また、そのゆがみをどのくらい許容するのかという基準が示されていないため、黒田総裁の在任期間は現状維持となり、新総裁のもとで、インフレの見通しを背景とした政策変更の余地を探るのではないか。

Q.市場では事実上の金融引き締めと受け止めた

A.金利の変動幅の上限を引き上げたわけですから、日銀は金利の上昇を容認したわけです。

市場の受け止めは当然です。

記者会見で黒田総裁は「利上げや金融引き締めを意図したものではない」と繰り返し説明しました。

ただ、日銀はこれまで、変動幅の拡大は「金融引き締めにあたる」と説明してきました。

ですから20日の決定は、唐突な印象が否めません。

多くの市場関係者も、サプライズだと受け止めて、激しく反応し、円高、株安が進みました。

Q.欧米が利上げのなか緩和策修正してこなかったがなぜ動いた?

A.欧米の相次ぐ利上げで、日本でも長期金利に上昇圧力が高まっていました。

これに対して日銀は、強引に金利の上昇を抑えつけようと、大量に国債を買い続けてきました。

その結果、国債を売買する債券市場では、秋以降、さまざまな取り引きの指標にもなる10年ものの国債の取り引きが成立しない日が相次ぎ、ゆがみが目立ち始めていました。

日銀は、その副作用で、市場が正常に機能しなくなったことを、なんとか是正しないといけないと判断したのだと思います。

ただ、専門家も黒田総裁の説明だけでは、今回、なぜ修正したのか分かりにくいと指摘しています。
東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは「非常にサプライズだった。金融政策によって市場はゆがんだ状況にあるため、変更すること自体は歓迎したいが、今までの説明とはずいぶん異なっており、とまどう市場参加者は多い」と話しています。

Q.いま金利が上昇して大丈夫なのか?景気はこの先どうなる?

A.今回の政策修正で、円相場は円高に向かう可能性があります。

円安は、原材料価格の高騰の要因にもなっていただけに、短期的にはプラスの面がありそうです。

一方で、長期金利が上昇することになるため、専門家の間では、企業向けの融資の金利や住宅ローンの固定金利が上昇する可能性があるという指摘も出ています。

日本経済はコロナ禍からの回復途上にあります。

そして海外経済は、欧米の大幅な利上げでブレーキがかかり、この先、減速していくという懸念も強くなっています。

それだけに、今回の決定が、日本経済や金融市場にとって果たしてプラスになるのか、マイナスになるのか。

その影響を注意して見ていく必要があると思います。

#日銀#金融政策決定会合
#アベノミクス#リフレ#金融政策#円安政

11月に首都圏で発売された新築マンション1戸当たりの平均価格が、3か月ぶりに下落しました。ただ、原材料価格の高騰で高止まりの状態は続いているとしています。

調査会社「不動産経済研究所」によりますと、11月に東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県で発売された新築マンション1戸当たりの平均価格は6035万円で、去年の同じ月より1.4%下落しました。

3か月ぶりの下落について、調査会社は、高額の大型物件の販売がそれほど多くなかったことが主な要因としています。

ただ、原材料価格の高騰で建築コストがかさみ、価格は高止まりの状態が続いているとしています。

地域別では、
▼東京23区の平均価格は去年の同じ月より7.5%上昇し、8530万円となったほか、
▼埼玉県は0.2%上昇し、4930万円となりました。

一方で、
▼神奈川県は3.3%下落し、5110万円、
▼千葉県は10.8%下落し、4083万円となりました。