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“新型コロナ特需”で会計士は増えているのに…

難易度が高いとされる公認会計士試験ですが、出願者が急増しています。

ことしの出願者数は2万人を超え、この10年でその数は実に1.8倍となっています。

コロナ禍で自宅で過ごす時間が増えたことも背景にあるとみられ、資格学校の関係者からは「新型コロナ特需だ」という声も聞かれました。

出願者数の急増に伴って会計士の数(公認会計士登録者数)は2023年3月末の時点で3万4436人と、この10年間で3割増えています。

一方で、監査の仕事を担う「監査法人所属者数」は横ばいが続いています。

今月14日、金融庁公認会計士・監査審査会が公表した「モニタリングレポート」によると、その数は会計士全体のおよそ4割に過ぎません。

金融庁「会計士の資格は人気だが監査の仕事は不人気」だと指摘しています。

こうした現状に会計士の業界団体は危機感を強めています。

日本公認会計士協会 鶴田光夫副会長

「監査の仕事に就く公認会計士の数は不足している状況だ。経済のエコシステムの中で監査人は非常に重要な役割を担っていると自負しているが、なかなか理解されていないのが課題だ。SNSや啓発活動を通じて、社会や公認会計士の受験生に監査の仕事の魅力を伝えたい」

監査はつらいよ

なぜ会計士が監査の仕事を選ばなくなったのか。

現役の会計士に聞くと、監査の仕事が「激務」なことが背景にあると口をそろえます。

監査の現場では膨大な企業の財務データに向き合わなければなりません。

データにおかしなところがあれば、資料を取り寄せ、監査対象の企業側にヒアリングも行います。

データの整理やチェックなど地道な作業は若手の会計士の仕事です。

会計士は下積みの期間が長いとも言われています。

監査法人に入社してから管理職となる「マネージャー」に昇格するには10年程度かかることもあります。

そこから経営幹部となる「パートナー」となるのはさらに狭き門です。

若手の会計士がなかなか将来のキャリアをイメージしづらいという指摘もあります。

監査の仕事は多くの企業が決算期とする3月から、株主総会のシーズンである6月の間に集中するため、この期間は特に忙しくなります。

業務の繁忙感は昔より改善されたという声も聞かれますが、忙しい仕事であることは変わりません。

さらに財務諸表を見る際の原則となる「監査基準」などは毎年のようにルールが改正され、チェックすべき項目が年々増えています。

基準が書かれた本は2000ページ近く。

これを理解するだけでも大変な激務です。

中小監査法人は人手不足に直面

繁忙感に拍車を掛ける事態も起きています。

中小の監査法人が直面する深刻な人手不足です。

背景には、企業の間で、監査費用を抑えるため、大手の監査法人から中小に切り替える動きが相次いでいることもあります。

金融庁によりますと、この3年間で毎年200社余りの企業が大手から中小に切り替えたということです。

監査法人の関係者によりますと、大手監査法人で上場企業の監査経験がある会計士が非常勤で繁忙期の監査を手伝うことは日常的に行われているということです。

非常勤で監査を行っている会計士は、「中小規模の監査法人は常に人手不足だ。非常勤の監査は日給5万円が相場だが、最近では上昇傾向が見られる」と話していました。

他業界への流出にどう対応?

こうした中、監査を担ってきた会計士がほかの業界に流出する動きもみられます。

企業の会計監査の仕事に比べ、高い収入が得られるといわれるコンサルタントやアドバイザリーの仕事、さらにはスタートアップ企業の創業メンバーとしてIPO=新規株式公開の業務に携わる会計士もいるということです。

このように会計士のキャリアが多様化する中で、相対的に監査の業務の魅力が薄れているという指摘もあります。

これに対し、大手監査法人は対策に乗り出しています。

AIの導入や会計士のITスキルを高めることなどで業務の省力化に取り組んでいます。

また、会計士の資格がなくても可能な業務を専門の従業員に任せ、業務全体の効率を高める取り組みも進んでいます。

そして、多様なキャリアの形成のため、海外法人や自社のグループ内のコンサルティング会社、一般の事業会社に出向できる制度を設けるなどの工夫を行っているところもあります。

EY新日本有限責任監査法人 山中彰子パートナー

「監査にあたる会計士は、企業の幹部と話せるような知識や経験が必要で、1人前になるのに時間がかかるという面はある。一方で、単純な作業を減らして付加価値の高い仕事に集中してもらう取り組みや多様な経験を積んでもらえる機会を用意してやりがいを高めたい」

監査の魅力 どう高める?

監査の魅力をどのように高めるのか。

各国の金融当局でつくる国際機関、「監査監督機関国際フォーラム」の長岡隆議長は、企業の情報開示の対象は環境への対応や人的資本など「非財務情報」に広がり、会計士の役割とその意義は今後ますます大きくなると指摘します。

監査監督機関国際フォーラム 長岡隆議長

「監査の人手不足は日本だけではなく世界的な課題となっている。監査という仕事がただ財務の数字を見るだけでなく、非財務情報を通じてより広く世の中を見る仕事になっていく可能性がある。監査のおもしろさを感じてもらえるような取り組みを進めたい」

企業の成長や株式市場の健全化には欠かせない会計監査の仕事。

その担い手を確保し、「市場の門番」としての機能を維持するためには、業界をあげて繁忙感の解消に取り組むとともに、仕事の魅力を高めていくことが喫緊の課題となります。

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