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内戦が続くエチオピアを逃れてサウジアラビアを目指す多くの移民を、サウジアラビアの警察や兵士がイエメン国境沿いで殺害しているという報告を21日、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチHRW)が発表した。

「雨のように銃弾を浴びせられた」と題されたHRWの報告書は、内戦で揺れるイエメンを経由してサウジアラビアを目指した数百人の移民が、射殺されたとしている。その多くはエチオピアだという。

BBCの取材に対して複数の移民は、銃で腕や脚を撃たれたと話した。移民ルートのあちこちで複数の遺体を見たという。

サウジアラビア政府はこれまで、定まった方針のもとに国境沿いで移民を殺害していると非難されても、これを否定してきた。

HRW報告書には、複数の移民から聞き取った生々しい証言が含まれている。それによると、サウジアラビアとイエメンの間の国境地帯でサウジアラビアの警察や兵士が、銃や爆発物で移民を攻撃しているという。

BBCが独自で取材した複数の移民は、夜間に国境を越えようとする際、多くの女性や子供を含むエチオピア人の集団が、一斉射撃を受けたと話した。エチオピア人たちは職を求めて、原油収入でうるおうサウジアラビアを目指している。

「射撃はいつまでも果てしなく続いた」と、ムスタファ・スフィア・モハメドさん(21)はBBCに話した。

ハメドさんは昨年7月、45人のグループで国境を越えようとした最中に銃撃されたという。

「自分が撃たれたことにも気づかなかった。でも立ち上がって歩こうとすると、自分の脚の一部がついてこなかった」

エチオピア出身のムスタファ・スフィア・モハメドさんは、イエメンとサウジアラビアの国境沿いで撃たれたと話す

ハメドさんは、イエメンとエチオピア密入国業者たちから暴力を受け、危険と飢えに苦しみながら、3カ月かけてサウジアラビアを目指したが、新天地への旅はそこでいきなり残酷な形で中断された。

後日撮影された動画には、左足がほとんどなくなっているモハメドさんの姿が映っている。膝下から左脚を切断する羽目になったモハメドさんは、今ではエチオピアの両親のもとで暮らしている。よく合わない義肢をつけ、松葉づえをついて歩く。

「家族の暮らしを良くしたくて、サウジアラビアへ向かった」のだと、2児の父でもあるモハメドさんは言う。「でも願ったことは実現しなかった。今では両親に頼りきりだ」。

「キリング・フィールド」

助かっても、深い心の傷を負った様子の人たちもいる。

イエメンの首都サナアで、ザーラさんは何があったのか、なかなか話すことができない。

18歳だというが、それよりも若く見える。彼女を守るため、ここでは仮名を使っている。

身代金や賄賂の資金として、イエメン北部の国境に着くまでにすでに約2500ドル(約36万円)を使っていた。その挙句、彼女を国境で待ち受けていたのは、一斉射撃だった。

一発の銃弾が片手の指を全部もぎとった。けがについて尋ねると、ザーラさんは顔を背け、答えることができなかった。

国連の国際移住機関(IOM)によると、年間20万人以上が「アフリカの角」から海を渡ってイエメンに入り、そこからサウジアラビアを目指すという危険な旅に挑む。

複数の人権団体によると、途中で大勢が監禁されたり暴力を受けたりする。

海を渡る、そのことだけでも危険だ。先週にはジブチ沖で移民船が難破し、24人が行方不明となっている。

イエメン国内に入っても、最もよく使われる移民ルートの随所に途中で死亡した人たちの墓が点在している。

2年前には、首都サナアの移民収容施設で火事が発生し、数十人が死亡した。施設は、イエメン北部の大半を支配する武装勢力フーシ派が運営していた。

ただし、HRWの最新報告書が描きだす暴力は、その規模と性質から、これまでとは様子が異なる。

「私たちが記録したのは要するに、大量殺人だ」と、報告書の筆頭著者、ナディア・ハードマンさんはBBCに話した。

「複数の人の話を聞くと、まるでキリング・フィールド(虐殺地)のような場所が、いくつかある様子だ。丘の斜面に沿って、たくさんの遺体があちこちに横たわっているのだという」

報告書は2022年3月から今年6月までの期間を対象にしたもので、爆弾など爆発物が含まれる武器が関係する事案28件と、至近距離からの発砲14件を取り上げている。

「生き延びた人たちから送られてきた、たくさんの生々しい写真や動画を目にした。かなりひどい恐ろしいけがや、爆発による傷が映っていた」

サウジアラビアとイエメンの間の国境沿いで埋葬される遺体を見守る移民たち。HRWは、国境沿いでどれだけの移民が殺害されたか推計するのは不可能だという

国境地帯は奥地にあり、生存者を見つけるのは非常に難しい。そのため、国境沿いでどれだけの移民が殺害されたか推計するのは不可能だと、報告書の筆者たちは言う。

「少なくとも655人だと考えているが、おそらく数千人規模だろう」と、ハードマン氏は言う。「加害行動は随所で組織的に行われており、人道に対する罪に相当するかもしれないと、私たちは事実にもとづき示している」。

サウジ治安当局がイエメンとの国境地帯で、移民殺害を繰り返しているという情報は、昨年10月に最初に浮上した。国連の専門家グループがサウジアラビア政府へ、そうした内容の書簡を送ったことがきっかけだった。

国連の専門家たちは、「サウジ治安部隊が移民たちを砲撃したり、小火器で銃撃したりしており、国境地帯で大規模で無差別な殺害が、組織的に行われている様子だ」と指摘していた。

恐ろしい内容とは裏腹に、この書簡はほとんど報道されなかった。

サウジアラビア政府は否定

サウジアラビア政府は、指摘された内容を深刻に受け止めているとしつつ、国境地帯での殺害が組織的で大規模なものだという国連側の主張は強く否定した。

「提示された限られた情報をもとに、王国の当局が調べたものの、指摘内容を確認あるいは裏付ける情報や証拠は見つからなかった」と、サウジアラビア政府は反論した。

多様な人の移動(混合移民)の状態を調べる世界的な研究ネットワーク「混合移民センター」は7月、助かった人たちを独自に聞き取り調査した上で、国境地帯で常態的に繰り返される移民殺害について新たに報告した。

この報告は、国境地帯の随所に腐敗する遺体が点在し、サウジの国境警備兵が拘束した移民に「どちらの脚を撃ってほしいか」と尋ねるなど、生々しい状況を明らかにしている。おびえる集団を攻撃するのに使われるのは、機関銃や迫撃砲だという。

HRWの今回の報告書は、この件に関するこれまでで最も詳細なものだ。複数の目撃者が話をしているほか、殺害の多くが行われるという複数の国境通過地点の衛星写真、さらには、にわか仕立ての埋葬地の衛星写真も含まれている。

報告書によると、イエメン側で国境に面したモナビに収容施設があり、武装した密入国業者が移民を連れて国境を越えようとする前、移民は一時的にここに入れられるという。

HRWが聞き取り調査した移民の1人によると、モナビの施設を運営するのは武装勢力フーシ派で、フーシ派は密入国業者と手を組んでいるのだという。

報告書は、フェンスに囲まれた施設の中に、鮮やかなオレンジ色のテントが密集している様子を捉えた衛星写真を掲載している。

イエメン国内を移民が通過するのによく使われるルートの随所に、墓が点在している。写真はイエメン北部サアダの墓地

新たな埋葬

HRWの報告書は今年6月までの事案を扱っているが、BBCの取材によって、その後も殺害は続いていると示す証拠が得られた。

イエメン北部サアダで撮影された映像をBBCが確認したところ、今月18日にも、国境で負傷した移民たちが病院にやってくる様子が映っていた。近くの墓地では、埋葬が行われていた。

BBCサウジアラビア政府に取材し、国連の特別報告者や「混合移民センター」、そしてHRWの主張について、コメントを求めた。サウジアラビア政府は、まだ回答していない。

#サウジアラビアHRW「イエメンとの国境沿いで移民数百人を殺害」)

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