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日本とASEAN東南アジア諸国連合の特別首脳会議に出席するため日本を訪れている、フィリピンのマルコス大統領は、16日、都内でNHKの単独インタビューに応じました。

この中でマルコス大統領は、南シナ海中国当局の船がフィリピンの船に対して放水や妨害行為など圧力を強めていることについて、「残念なことに、この数か月間で緊張は薄れるどころか、むしろ高まったと言わざるをえない。南シナ海の状況はますます複雑になっている」と述べ、危機感を示しました。

そのうえで、17日から議論が本格化する特別首脳会議に向けて、「平和を維持する方法を明確にしなければならない。事態が大きく動くなかで関係するすべての国々が協力しなければならない」と述べ、日本とASEANがこれまで経済分野で協力関係を強化してきたように、安全保障分野でも連携を深めるべきだとの考えを示しました。

一方、マルコス大統領は、日本とアメリカを含む3か国での協力関係も深めていくと強調し、共同訓練の実施などより多くの国々に協力を求めていく考えを示しました。

南シナ海領有権めぐり フィリピンと中国との対立は
ASEAN各国の中で、南シナ海の領有権をめぐって中国との対立が最も深まっているのがフィリピンです。

とりわけ南沙諸島、英語名スプラトリー諸島にあるセカンド・トーマス礁と呼ばれる岩礁の一帯の海域が両国の争いの最前線となっています。

フィリピン政府は1999年から岩礁に軍艦を座礁させ軍事拠点として兵士を常駐させていて、補給活動を毎月続けていますが、ことしに入ってから中国側による激しい妨害行為が相次いで起きています。

中国海警局の船はことし8月以降、放水銃を使用して水を浴びせるようになり、今月10日には放水を受けたフィリピン軍の補給船が損傷したほか、進路を妨げられた際に両国の船が衝突しました。

また、フィリピン政府は、中国側が海警局や海軍の船に加えて軍事的な訓練を受けた「海上民兵」が乗り組んだ大型の漁船を使って妨害行為を行っていると指摘していて、今月10日にはことしに入って最も多い46隻もの船が海域で確認されたと発表しています。

セカンド・トーマス礁の隣には中国が1995年に実効支配したミスチーフ礁があり、中国は2015年以降に埋め立てを行い、軍用機が離着陸できる3000メートル級の滑走路を設けるなど、軍事拠点化を進めています。

このほかフィリピン政府は、ルソン島の沖合にあるスカボロー礁で中国側がフィリピン漁船を漁場から閉め出したと発表したほか、南沙諸島のウィットサン礁では今月、フィリピンの排他的経済水域に130隻を超える中国船が居座っているのが確認されたとして、中国側に抗議しています。

#中比(マルコス大統領「残念なことに、この数か月間で緊張は薄れるどころか、むしろ高まったと言わざるをえない。南シナ海の状況はますます複雑になっている」「平和を維持する方法を明確にしなければならない。事態が大きく動くなかで関係するすべての国々が協力しなければならない」「日本とASEANがこれまで経済分野で協力関係を強化してきたように、安全保障分野でも連携を深めるべきだ」「日本とアメリカを含む3か国での協力関係も深めていく」「共同訓練の実施などより多くの国々に協力を求めていく」・NHKインタビュー)

フィリピンの漁師ロニー・ドリオさん(56)は10代の頃から南シナ海の中心へと船を出し、スカボロー礁(中国名:黄岩島)で漁を行ってきた。

だが、この場所は今、アジアで最も争いの絶えない係争海域の一つとなっている。ドリオさんによれば現在、フィリピン沿岸から約200キロ離れたこの海域で漁を行うことは、この環礁の領有権を主張する中国から「攻撃的な行動」を受けるために、ますます困難で危険なものになっているという。

スカボロー礁は、フィリピンが自国の排他的経済水域EEZ)内に位置すると主張しているが、2012年以降は中国が実効支配を続けている。

漁村マシンロックの沖にあるサンサルバドル島で暮らすフィリピン人漁師らは、中国側はスピードボートや放水砲を使用して彼らがこの海域に近づくことを妨害してくると、トムソン・ロイター財団の取材に話した。

こうした衝突は、フィリピンが南シナ海での警備体勢を強化する中で発生。同海は長年、米中衝突の火種にもなり得ると見られてきた。

情勢の緊迫を受け、サンサルバドル島に住む漁師の収入は激減した。環礁で自由に漁を行うことが不可能になり、時には魚を捕る前に追い払われるため、公海に出ることを余儀なくされている。

ただ、外洋での漁で燃料費がかさむため、漁師らは出漁の度にさらに遠くへと船を進めることを強いられている。漁に出るごとに借金が増えるという悪循環に陥り、より多くの漁獲を得なくてはならないからだ。

「私たちはただ生計を立てようとしているだけだが、漁場から追い出されてしまう。多くの漁師が中国の沿岸警備隊に遭遇することを非常に恐れている」とドリオさんは言う。

マシンロック出身の別の漁師ジミー・タバットさん(45)は、かつてはスカボロー礁に3日出れば、家族に十分に食べさせ、貯金もできるほどの漁獲量があったと話す。

「環礁内で漁を行えば、消費する燃料は比較的少なく、深さのある公海に出るよりも多く魚を捕ることができた」

スカボロー礁という名称は、1748年に同地で難破した英国の船名に由来する。フィリピンでは「バホ・デ・マシンロック」、もしくはタガログ語で「平穏」を意味する「パナタグ」という名で知られている。

南シナ海の90%の領有しているとする中国の主張は2016年、仲裁裁判所により退けられた。だが、中国政府はこの判決を受け入れておらず、2012年に環礁を占領して以降、沿岸警備隊トロール船の配備を継続している。

在マニラ中国大使館に本件に関するコメントを要請したが、すぐには返答は得られなかった。

ドゥテルテ前大統領が2016年に政権に就いて以降は中国との外交関係が改善。フィリピンの漁師らはスカボロー礁に戻ることができ、一時は平穏が訪れた。だが昨年、故マルコス元大統領の長男フェルディナンド・マルコス・ジュニア氏が大統領に就任し、親米路線を取ったことで、フィリピンと中国の緊張は再び高まっている。

ドリオさんは、漁師らが経済的にも精神的にも苦しんでおり、不安による発作やトラウマを抱える人もいると明かした。

スカボロー礁で心穏やかに、自由に釣りができるようになること。望むのはたったそれだけだ」とドリオさんはサンサルバドル島沿岸に停泊する自身の漁船近くで腰掛けながら語った。

「あの場所は私たちのものだ」

<「赤字漁」>

フィリピンの漁業者団体「パマラカヤ」によれば、豊かな水質を持つ浅瀬のスカボロー礁へのアクセスが制限されることにより、ザンバレス州の漁師は収入の約70%を失ったという。

タバットさんは、2012年以前は週に8000─1万フィリピンペソ(約2万─2万6000円)得られることもあった漁師の収入が、約2000─3000フィリピンペソにまで激減したと話す。つまり、従来と同程度の生計を立てるには3倍の時間がかかることもある。

「損失を出しながら漁に出ている。時には、家に何も持って帰れないこともあった」

フィリピン漁業水産資源局(BFAR)によると、南シナ海は38万5000人を超える登録済み漁師にとっての重要な漁場で、2018年から22年までの期間で30万4000トンの水揚げ量があったという。

資産の再構築や地方の発展を専門とする非政府組織「人民開発研究所(PDI)」が昨年行った研究によると、2012年以前には、スカボロー礁で一度の漁を行うたびに、さまざまな種類の価値の高い魚が最高3トン水揚げされることもあったという。

だが現在では、漁獲量の減少やサンゴ礁の破壊、中国船舶による「嫌がらせ行為」、荒れやすい天候の中でも漁師が浅瀬に避難できないといった影響から、この海域での漁が「経済的に実行不可能」になりつつあると同研究は指摘している。

同研究はまた、中国がオオシャコガイ採取のため岩礁を掘り起こしたために、スカボロー礁サンゴ礁が破壊されたと指摘した。

フィリピン沿岸警備隊は9月、西フィリピン海南シナ海のフィリピン名)の沿岸から200カイリまでの海域にあたるEEZ内で「中国側が頻繫に出入りする区域で広範囲に及ぶ被害が見られる」と発表した。

PDIのアウレア・ミクラテベス代表は、同地域での漁業権を保護するフィリピン政府の義務をまとめた憲章の作成を望んでいると述べた。

<権利のため団結する漁師たち>

漁師らも静観してはいない。2020年、環礁で漁を行う自由を求め、ザンバレス州や周辺地区の漁師1000人以上が「ビッキス漁民連盟」を設立した。

「連盟を設立したのは、私たちの切実な願いが聞き届けられなかったためだ。私たちは無視された」とマシンロックの漁師で連盟の広報を担当するエンレリト・エンポックさんは言う。

同連盟はフィリピン政府に対し、自国のEEZを改めて主張し、管理する積極的なアプローチを取るよう要請したという。また、スカボロー礁にフィリピン沿岸警備隊を常時配備し、マシンロックなどの地域で苦しい生活を送る漁師らに代替的な生計手段を提供することも求めたという。

BFARは、漁師らを対象に8000万ペソ規模の生計援助プロジェクトを立ち上げたほか、西フィリピン海上の漁船に対して燃料・飲料水・軽食など補給する事業を行っていると述べた。

ドリオさんは政府の援助に感謝を示しつつも、これまでに行われた支援における運営のずさんさを指摘。過去に提案された海藻養殖事業は周辺の水質に合わず、寄贈された船は長期間の漁業には向かないものだったと振り返った。

「海が荒れている時は、漁師の腹も荒れる」とドリオさんは言う。

「不安を感じず家族のための漁業が再開できるよう、政府が支援してくれることを期待している」

#中比(アングル:中国船に南シナ海追われ、「借金の網」絡まるフィリピン漁師 )

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