「金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ(第1回)の議事要旨と発表の模様(動画)を公表 https://t.co/5YtpUqRJNx
— 日本銀行 (@Bank_of_Japan_j) January 29, 2024
#日銀(「金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ(第1回)の議事要旨と発表の模様(動画)を公表)
非伝統的政策、効果・副作用の包括評価は困難=日銀ワークショップ https://t.co/nwNtjYOXSr
— ロイター (@ReutersJapan) January 29, 2024
日銀は29日、昨年12月に実施した金融緩和政策の多角的レビューに関する第1回のワークショップの議事要旨を公表した。識者から、日銀保有の上場投資信託(ETF)の分配金収入を日銀の財務健全性の確保に活用する案が示されるなど建設的な議論が見られた一方で、ワークショップのテーマである「非伝統的金融政策の効果と副作用」については、包括的に評価するのは難しいとの指摘が示された。
ワークショップは、金融市場、金融システム、日銀のバランスシート、非伝統的金融政策、パネルディスカッションの全5部に分かれ、日銀スタッフと学識経験者、市場関係者などが討論に参加した。
金融市場について、神戸大学の岩壷健太郎教授は、金融緩和により国債利回りが低く抑えられた結果、様々な市場の価格発見機能が損なわれている可能性があると問題提起した。国債利回りは様々な資産の基準金利となっているが「社債市場における企業の信用格付けと社債スプレッドの間の関係性や、株式市場における企業の資本コストなどにも影響が及んでいる可能性がある」と指摘した。
日本経済研究センターの左三川郁子・金融研究室長は、日銀の財務について、赤字や債務超過に陥っても政策運営能力は損なわれないことを国民に説明していくことが大事だと述べた。
ただ、出口局面の前に日銀が財務のシミュレーションを示すことには有益な面がある一方で「日銀がシミュレーションを公表すると自らの政策運営を縛ることにもなりかねない」とした。また、保有ETFについて「価格変動リスクの大きさや分配金収入の規模などを踏まえ、日銀の財務の健全性に向けて活用する余地があるのではないか」と提案した。
<非伝統的政策の貸出への効果巡り応酬>
金融緩和政策の効果と副作用について、企画局の開発壮平・政策調査課長は、日銀も欧州中央銀行(ECB)など海外の中央銀行も同じような問題意識を持っているが、「(政策の)効果と副作用を包括的に比較衡量できる枠組みの構築はできておらず、容易に解決できる問題ではない」と述べた。東京大学の仲田泰祐准教授は、金融政策の効果や副作用の識別が難しい点を踏まえると、「政策の影響についての不確実性がどの程度あるかを示すことも、今後の政策を考える上では有効なアプローチになり得る」と指摘した。
企画局が、非伝統的な金融政策が貸出金利の低下につながり、こうした政策がなかった場合と比べて貸し出し残高が「大きく押し上げられたことが示唆される」との分析を示したのに対し、メガバンク出身の田村直樹審議委員が「貸出金利が低下しても企業の資金需要が鈍かったという民間銀行在籍時の自身の経験を踏まえると、今回示されたQQE(量的・質的金融緩和)の効果は実感と比べてかなり大きいとの印象を受ける」と指摘する場面もあった。
田村委員は、今後の金融政策に生かすためにはマイナス金利などの個別政策の効果を分析することが重要だとも述べた。開発課長は、マイナス金利など個別政策の効果に関 しては「分析を深める余地がある」と応じた。
このほか、複数の有識者が金融政策が為替にもたらす影響について分析を深める必要があると述べた。金融政策の企画立案を担当する清水誠一理事は、為替政策は政府あるいは財務省の所管だと前置きした上で「金融政策の波及経路としての『為替チャネル』の重要性は十分認識しているが、金融政策を運営していく際には為替水準に目標を置くのではなく、為替の変動が実体経済・物価全体にどのような影響を及ぼしていくかという観点から情勢を判断していくことになる」との見解を示した。
清水理事はパネルディスカッションで、今後検討を深めていくべき点や残された論点として、さまざまなマクロ経済へのショックに対して非伝統的な金融政策がどの程度有効なのか、インフレ予想の動向の捕捉、中央銀行の財務の問題について国民への説明も含めた取り組みの3点を挙げた。
#日銀(ワークショップ議事要旨・非伝統的金融政策・企画局開発壮平政策調査課長「(政策の)効果と副作用を包括的に比較衡量できる枠組みの構築はできておらず、容易に解決できる問題ではない」」)