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低賃金、人手不足、力仕事──。英国の介護施設が人員確保に手を焼いているのは無理もないだろう。

そして、介護業界の幹部らは人手不足の問題が今後さらに深刻化する可能性があると口をそろえる。移民労働者が英国内の医療・介護関連職に就くビザ(査証)で入国する場合は家族も帯同することができる制度について、スナク英首相が停止する計画を発表したためだ。

移民労働者への依存度が非常に高い介護業界で懸念される影響に対処すべく、英政府は1月、より多くの国民を介護職に誘引する政策を提示した。

高齢化が進むとともに介護人材の需要も増加する中、この政策は極めて重要になり得る。成人ソーシャルケアに関する人材育成や事業計画作成を行う団体スキルズ・フォー・ケアによれば、65歳以上の人口は2035年までに1380万人に到達すると見込まれている。

こうした要因が英国の介護セクターに与え得る影響や重要視される理由について以下にまとめた。

◎なぜ介護セクターで人手不足が起きているのか

英医療・介護業界の独立業務監査機関ケア・クオリティー・コミッションが2023年に行った調査によると、2000近い介護事業者のうち半数以上がスタッフの確保が困難だと回答。3分の1が従業員のつなぎ留めに苦戦していると答えたという。

スキルズ・フォー・ケアによれば、介護従事者は英国内で最も賃金が低い職業の一つだ。時給の中央値は10.11ポンド(約1880円)と、清掃員(9.96ポンド)はわずかに超えるもののショップ店員(10.12ポンド)を下回る。

また、介護業界では労働搾取の増加に対する懸念も拡大している。

2022年、反奴隷労働を掲げる慈善団体アンシーンの相談窓口に寄せられた「現代の奴隷」状態に陥っている労働者のうち、106件が介護関連職に就いていた。同団体によれば、これは年間の相談件数全体のおよそ10%にあたるという。

低賃金かつ厳しい環境で過酷な労働を行う成人社会ケアの仕事には、多くの英国民が魅力を感じていない、とサイモン・ボッテリー氏は言う。同氏は保健医療基金キングス・ファンドの社会ケア部門でシニアフェローを務めている。

「根底にある介護事業システムの資金不足という問題をどうにかしない限り、低賃金での労働につながり、問題を解決できないだろう」とボッテリー氏はトムソン・ロイター財団が運営するニュースサイト「コンテクスト」の取材で述べた。

◎英国の外国人介護従事者はどれくらいか

スキルズ・フォー・ケアの2023年のデータによれば、介護人材の約19%が外国人で、ほとんどがナイジェリアやインド、ルーマニアポーランド、フィリピン、ジンバブエの出身だという。
英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)や新型コロナウイルス感染症パンデミック(世界的大流行)を経て介護セクターに生じた16万件以上の欠員を埋めるべく、政府が2022年に外国人労働者向けの新たなビザルートを導入後、介護人材の労働需要は強まった。

2023年9月までの1年間で発給された医療・介護従事者に対する技術能力者ビザは、前年の6万1274件から14万4000件に急増。移民関連の公式統計によれば、他のどのセクターよりも大きな伸びだった。

賃金の低さは、英国に比べ平均給与がはるかに低い国からの移民労働者に介護セクターが大きく依存している要因の一つだ。

英国で勤務する外国人介護士は、年に最低2万0960ポンドを稼ぐ。同国の高い生活コストを考えれば安いが、ジンバブエの教師が得る給料の10倍以上にあたる。

◎なぜ介護業界が懸念しているのか

2024年に総選挙を控える英国で、移民政策は大きな争点だ。クレバリー内相は2023年12月、医療・介護ビザなど合法的なルートで英国に流入する移民の数を大幅に減らす計画を発表した。

外国人の医療・介護従事者を巡りクレバリー氏は、他の技術能力者ビザ保持者を対象とした最低給与水準の引き上げ措置の対象にしないとした一方、家族の帯同禁止や、医療サービスの利用にかかる移民医療付加金(IHS)の66%上乗せなどを盛り込んだ抑制策について説明した。

介護事業者は、労働者らが家族を帯同できないなどの理由から英国に向かわず、オーストラリアや米国、中東、カナダなど、介護人材を必要とする他の国や地域を目指す可能性もあると懸念する。

「私たちが障壁を設けるたびに、人々が働きに来る国としての魅力は失われていく」と英国内の非営利介護事業者を代表するナショナル・ケア・フォーラム(NCF)幹部のビック・レイナ―氏は言う。

世界保健機関(WHO)によれば、60歳以上の人口は2050年までに21億人に到達するという。世界的な高齢化は「かつて無いペース」で進んでおり、医療・介護人材の需要も世界中で急増するだろう。

スキルズ・フォー・ケアは2023年の報告書で、英国の高齢化が進むにつれ、新たに44万件の介護士の雇用が発生すると推測している。

「移民の労働人材なしでは、こうした求人を埋められない可能性が高いだろう」とNCFのレイナ―氏は述べた。

イギリスの北アイルランドで2年ぶりに自治政府が発足し、アイルランドとの統一を掲げるカトリック系の政党から初めて就任したオニール首相は、歴史的に対立してきたプロテスタント系の政党などと協力する姿勢を強調しました。

北アイルランドでは、イギリスからの分離を求めるカトリック系住民と、反対するプロテスタント系住民との30年以上にわたる激しい対立のあと、1998年の和平合意に基づき、双方を代表する政党が共同で自治政府を運営してきました。

このうち、プロテスタント系最大勢力のDUP民主統一党は、2020年のイギリスによるEUヨーロッパ連合からの離脱後、北アイルランドとイギリス本土の物流の自由が失われたとして反発していましたが、スナク政権の法整備を受けて連立協議に復帰し、3日、2年ぶりに自治政府が発足しました。

首相には、議会第1党でカトリック系のシン・フェイン党のオニール副党首が就任し、アイルランドとの統一を掲げる政党から初めての首相となりました。

オニール首相は「われわれは出身や理想の違いにかかわらず将来をともに築いていけると信じている」と述べ、対立の歴史を乗り越えて協力する姿勢を強調しました。

シン・フェイン党は、過去に武装闘争を繰り返した過激派組織IRAアイルランド共和軍の政治部門が前身で、イギリス国王への忠誠を拒否する立場からロンドンの議会には出席しておらず、今後、スナク政権との関係を含め自治政府の運営が注目されます。

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