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――藤原定子が入った職御曹司とは、どのような場所なのでしょうか。
職御曹司は、中宮の身の回りのお世話や事務などをする中宮職(ちゅうぐうしき)の庁舎のことで、中務省(なかつかさしょう)に属している機関です。皇后や中宮が、仮によくいる場所であったりもするんですね。なにしろ、内裏の真横にありますから。

――どのような場合に、皇后や中宮が仮に職御曹司にいるのでしょうか。

例えば、蝕穢(しょくえ)です。当時の人々には「穢(けが)れ」という思想があり、血や死などを恐れていましたが、内裏内でも「穢れ」は発生してしまうわけですよ。そうすると、方違(かたたが)えをして「穢れ」を回避しなければいけませんから、そのときに職御曹司が利用されることもありました。

定子の場合は、兄・藤原伊周、弟・藤原隆家が花山院を襲撃するという大事件を起こしてしまい、ショックを受けて事件後に出家をしました。これにより、内裏の後宮に居続けることができなくなったので、内裏に隣接した職御曹司を新たな住まいとしました。この職御曹司しか、定子の行く場所はなかったと思いますね。

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――職御曹司は内裏のすぐ隣にあるのに、一条天皇は輿で移動するんですね。

内裏に隣接して近いとはいっても、職御曹司は内裏の外にありますから、天皇が歩いて定子のもとへ向かうようなことはしません。歩いても行ける距離のときには、腰輿(ようよ)という輿がよく使われます。左右に警護が2名付いていますが、彼らは近衛府に所属する武官です。そして、腰輿を担いでいるのは近衛府の下級役人たちです。誰も松明(たいまつ)を持たず、月明かりだけを頼りにしていることからも、お忍びで移動しているということがおわかりいただけるかと思います。

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――天気の悪い日は、この腰輿で移動するのは難しそうですね。

実は、腰輿にはセットになった傘があります。雨が降っている場合などには、腰輿に簡易雨よけセットを取り付けて使用することができるんですね。この腰輿は、天皇だけではなく皇后や中宮といった女性も乗ることがあるのですが、そのときには簾(すだれ)を下ろして使用します。