「理想の上司」と言われ
— NHKニュース (@nhk_news) December 11, 2024
正義を貫く役を演じ続けてきた
俳優・天海祐希さん
知られざる葛藤と
それを乗り越えた現在地に迫りました
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「だめだめな自分を知っているから」
正義の味方や理想の上司…威厳あふれる役柄を多く演じてきた俳優 天海祐希さんは笑顔でそんな意外な言葉を返してくれました。
俳優として数々のキャリアを積み上げてきた天海さん。しかしその裏側では、できない自分を認め、そんな自分から逃げず、自分ができる限りの努力を重ねてきた日々があったといいます。
「期待に応えられるよう一生懸命努力して、役者としても人としても成長したい」
57歳となった今でもそう語る天海さんの輝きの源に迫りました。
(おはよう日本 キャスター 首藤奈知子・ディレクター 大北啓史・記者 本多ひろみ)
期待は成長のチャンス だめな自分を認めその先へ
「よろしくお願いします、天海祐希です」
インタビュー会場に現れた瞬間、その凛としたたたずまいに圧倒されていると、意外にも、私たちが挨拶するより先に少し低音のよく通る声で自ら名乗り、何人もいる取材クルー全員と目を合わせているのではないかと感じるほど丁寧にあいさつをしてくださいました。
首藤アナ「お忙しいところ、ありがとうございます」
天海さん「何をおっしゃいます!こちらこそありがとうございます」
28歳で退団した後、テレビドラマでは刑事や弁護士など、“正義を貫く”役を数多く務めてきました。
Q. 憧れの存在として天海さんのことを見ていらっしゃる方もとても多いと思うのですが、世の中のイメージについてはどう感じていますか?
天海祐希さん
「私、体も大きいですしシャキッと見えるから、常に正しい正義の味方のような役をいただけることが多くて、本当にありがたいことなんですけれども、『しめしめ!世の中の皆さん騙されてくれているな』と思って」
Q. 世間の期待に応え続けているな、と思うんですけれども。
天海祐希さん
「期待していただけることは、自分にとっても課題が出来ることですし、自分もチャレンジして成長できるチャンスをいただけていると思っているので。応えられているかどうかはわからないですよ、でも応えられるように一生懸命努力をするっていうことが、自分にとっては必要なことだなと思うので。本当に、人として、また役者として成長できるチャンスをいただけていると思っています。だめだめな自分を知っているからね」
Q. だめなところ、ありますか?
天海祐希さん
「みなさんに見せていないだけです。うまく隠している」
「できない自分なんて自分が一番よく知っているじゃないですか。自分ができないからこそ『そこを努力しよう』とか、できないから『こうなりたい』『こうしたい』って思うでしょ。できない自分がいるからこそ頑張る原動力にもなるので、だめだってちゃんと思って、自分にここが足りないっていう分析もして、じゃあこれをクリアするためにはどうしようっていうことを見つける」
映画「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」の主人公「紅子」役を演じる天海さん(右)
そんな天海さんが新たに挑んだのが、人気の児童小説が原作の映画「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」です。
願いや悩みを抱えた人たちが銭天堂と呼ばれる駄菓子屋に迷い込み、不思議な力を持つ駄菓子を食べることでさまざまな事態に巻き込まれていくというストーリー。
天海さんはその駄菓子屋の店主・紅子役に、長い時には3時間以上かかったという特殊メイクを毎回施して挑みました。
中田秀夫監督は、「『人生のレフリー役』である紅子は天海さんにしか演じられない」とオファーしたのだといいます。
Q. 今回、紅子役を受けたのは、どうしてですか?
天海祐希さん
「世界中の方が楽しんでいる原作があって、その世界観がちょっとこう、日本人らしい特色もあり、それでいて万国共通の『どうするかは自分次第なんだよ』っていう教えがあったり、一つ一つの中にちょっと怖いなって思うところがあったり、それでいてちょっとほっとできるところもあったり。これはお子さんたちだけではなく、私たちみたいな年上の人間にも刺さるようなお話だな、と思っておりました。それだけ人気がある原作を私がやっていいんだろうかっていうところがすごくあって、『これ、私で大丈夫なんですかね?』っていうことをお伺いしたら、『是非』って言ってくださったので、中田監督とも一度お仕事させていただきたかったし、これはちょっといいチャンスかもしれない、自分でもチャレンジできるかもしれないなと思って。そこが一番大きかったですね」
葛藤乗り越え… 今の自分に感謝する
世間の期待に努力で応えてきた天海さん。しかし、かつては同じイメージの役ばかりを演じることに葛藤を抱えたこともあったと言います。
天海祐希さん
「『同じ系統の役ばかりはな…』なんてすごく生意気なことを20代30代で思ったり、『イメージを壊していけたら』なんてちょっと偉そうなことを考えていたりしたんです」
その頃、天海さんが自分が演じてきた役への「責任」を感じさせられる出来事がありました。
それは、天海さんが、冷徹でありながらも子どもたちを成長へと導く教師・阿久津真矢を演じ話題となったドラマ『女王の教室』(2005年)が終了してしばらくたったときのことだったといいます。
天海祐希さん
「ある方をお見舞いに病院に行ったんですね。病院の駐車場で、向こうの方からお母様に連れられた小学1年生くらいの女の子が、ブワーっと走ってきて、『先生!』って。私の顔を見て『先生!』っていうから、その頃はもう(ドラマは)終わっていたんですけど、その子の目線までちょっとしゃがみまして、(阿久津真矢のセリフのように)『勉強していますか?お父さん・お母さんの言うことを聞いていますか?』って言ったら、『はい!』って言うのね。で、『お父さん・お母さんの言うことを聞いて一生懸命勉強してね』って言ったら、もうなんかすごくキラキラした目で『はい!』って言われたので、あ、私、ちゃんとしなきゃいけないと思って。その時に、こうやって私に重ねてくれてるんだなって。私が言った一言が、もしかしたら彼女の何かを変えてしまうかもしれないですし、責任は大きい。こういう出来事もちゃんとしなきゃって思う一つになっているかもしれないです」
「そういうイメージを持っていただけるって、箸にも棒にもかからなかったら、イメージすら持っていただけないじゃないですか。だから、イメージを持っていただけるっていうことは、それだけ知っていただけているんだなっていうことに気が付きまして。自分がやりたいということももちろん大事。夢を持ったり、希望を持ったりすることは大事。目標を持ったりすることももちろん大事ですけれども、今、自分にあるもので少なからずちゃんと満足をするっていうことも大事だなって思っていて、今の私の現状は今までの私が頑張った延長線上にある。そして、たくさんの方に助けていただいて、守っていただいて、見ていただいて、楽しんでいただけた結果、私はここにいるっていうことを考えると、自分がやりたいからこうなんだっていうことも大事なのかもしれないけれども、それ以上に、今ある自分をありがたいって感謝することが大事だなって思っています」
“自分らしくは甘えの言葉”
そんな天海さんがテレビや雑誌で度々口にしてきた言葉があります。
Q. 過去のお話で“自分らしくというのは甘えの言葉”だと言っていたのがとても印象的でしたが、どのような考えなのでしょうか?
天海祐希さん
「『自分らしく』というのは他の人に見えないものなので、基準が。そしたら『自分らしく』の一言で、低いところに目標をおくこともできるじゃないですか。『私らしくやればいいや』『このくらいでいいや』って思っちゃいそうな自分がいるので、だから『自分らしく』っていうのは私にとっては甘えの言葉になっちゃうかな。『自分らしく』じゃなくて『自分ができるところまで』っていう決め方じゃないと、ちょっと私はなまけてしまうので。だってもっとお芝居とか上手くなりたいですし、人としても成長したいですし、たくさんの皆さんに見ていただいて、明日もがんばろうって思ってもらえるような作品をつくるためには、それだけのエネルギーも欲しいし、パワーもほしいし。といったらやっぱり努力するしかないんですよね。私、本当にだめだめですから、だめだめな自分を知っているからこそ、自分をこうちょっと戒めないと」
「これだけのものを与えていただいて、これだけの場所にいさせていただいたら、厳しくなって当たり前だと思うんですよね。ひとさまにみていただけるところにいるっていうことはそれくらい自分に厳しくないと申し訳ない」
しんどい時は笑って乗り越えて
どこまでも謙虚でストイックな天海さん。
でも、努力しつづけることがしんどくなることはないのでしょうか?
Q. 本当にしんどい時に、どう切り替えているのですか?
天海祐希さん
「そこが成長するポイントなんです。いかに楽観的に受け止めて、楽しい方向にもっていくかということを考える。逃げるんじゃなくて、『大変になってまいりましたよ!』とか言いながら、ちょっと大変を楽しむ。『今、頑張ってる、俺!』って思いながら」
「ちょっと笑っちゃうようにしているんです。『笑える!』って言いながらやっています。あんまり苦しいとかいうものを認めちゃいけないんですよ。認めずに『ちょっと大変かも』っていいながら笑っている。『うわー!苦しい』って思っちゃうと、自分がそれを認めてしまった段階でもっとのしかかるような気がしていて、苦しいけれど笑っちゃう、みたいな。本当に大変なときに、ちょっとでも笑えたら」
天海祐希さん
「私自身もそうですけれども、時々は自分をいっぱい許してあげて、自分に課すことも今日くらいはいいか、みたいに気を抜いて、それでまた明日から頑張ろう、今日楽しかったから明日頑張ろうって思っていただけるような1つのきっかけに私たちの仕事がなると嬉しいな、と思ってるんですよ。もうゲラゲラ笑えたし、スカッとしたし、明日また頑張ろう!って思っていただけるのが、本当に私にとってはそれが原動力にもなるので」
Q. さまざまな挑戦をしてきて、次はどこへ向かうのでしょうか?
天海祐希さん
「『天海祐希と仕事したい』って言っていただけることが幸せだなと思うので、そう言っていただけるような自分でいたいなって思っています」
「新しい役をやるときにはもちろん期待も不安もありますし、またできない自分を目の当たりにするんだな…と思いながらやるんですけど、でも必ずこの作品に関わらせていただけてよかったなっていうものを自分の中に残したいと思っています」
取材後記
期待に応えるためは努力を惜しまないという天海さん。その高いプロ意識に圧倒されていると、こう話してくれました。
天海祐希さん
「私なんかよりも、働いていらっしゃる女性たちの方が、たくさん悩まれていますし、チャレンジされていますし、なおかつお子様をお持ちの方もいらっしゃいますし、ご家庭お持ちの方もいらっしゃいますし、それでいてお仕事されているって、私よりも何役もやってらっしゃるんですよ。本当に偉いと思いますよ。だって私なんて、撮影の現場に行くとき、ボロボロで行きますからね、朝。髪の毛だって別にはねていようが、もうきれいにしていただけますから。もうぼーっとしたまんまいきますよ。(皆さんは)ちゃんと会社に行くときにはちゃんとシャンとなさっていますし、それを考えると、もうそこの時点からしても偉い!本当に偉い!」
そして、そんな大変な思いをしている人たちにとって、自分たちが作るドラマが「明日も頑張ろう!」と思ってもらえるものになってほしいのだと繰り返し語っていました。
どこまでも謙虚で、託された一つ一つの作品に最大限の努力をして挑んでいる天海さん。
今回のインタビューを通して、だからこそ、私たちは天海さんが出演する作品に魅了されてしまうのだな、と納得できた気がしました。
頑張って頑張ってしんどい…と感じたとき、天海さんのことばを思い出し、前を向く勇気に変えたいと思いました。そして、天海さんの作品をみて、笑って、スカッとして、また頑張るパワーをいただこうと思います!
(12月12日「おはよう日本」で放送予定)
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