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【対談 李登輝前総統・安藤忠雄氏】日台の未来 地球の未来1

私は歴史を学ぶが、批判はしませんよ。見るのはいつも将来。

教育には、建築をやったりする専門教育と、教養の二つがある。哲学も歴史も芸術も科学も、基礎教養として専門以外にある程度知っておく必要が人間としてあります。プラス、国を愛し、人民を愛すること。昔の日本教育はこうだった。

若いときに教養を教え込まれてこそ、歴史を土台に哲学的に物事を考えることができるのです。民主とは何か、人はなぜ人を愛せるのか、という問題を理解してこそ、新しい将来へと突破することもできる。ところがね、人々が技術ばかりに目を奪われる今の社会は、どうもへんてこになってきた。そうは思いませんか。

 だから、技術の発展が世界で同時進行する中、よほど確立した自己を持っていないと、精神構造がバラバラになってしまう。ところが、人々の実生活には確立した自己を持つような時間がなく、瞬間的な情報を山のように抱え込むばかり。つまり心のよりどころを見失い、世界中の人たちの精神がバラバラになっている、と案じます。

【対談 李登輝前総統・安藤忠雄氏】日台の未来 地球の未来2

かつてパトリック・ラフカディオ・ハーン小泉八雲)は、日本はまれに見る文化的国家であると世界に紹介した。家族、地域社会が健全にはぐくまれ、地域ごとに個性を持ち、多様性を有していると。立派な文化をつくった日本人は戦後、確かに物質的、技術的な発展で妨げられた面もあるが、そろそろ、モラルを持って日本的な精神を保とうと、考え始めているんじゃないかな。

 残念なことに日本人は戦後、おとなしくなりましたね。米国による占領政策の影響もありますが、教育も平均化して、非常におとなしい民族になってしまった。

日本における戦後の教育は、アメリカ流の自由主義になりましたね。

近代化、経済至上主義による世界の画一化が始まると、この多様性が失われていきます。情報化社会が進展していますが、バーチャルな(仮想の)世界がものすごいスピードで拡大する一方、多様性をもったリアルな(現実の)世界が崩壊しようとしている。これはなんとしても食い止めねばなりません。

私はバーチャル・リアリティーというのですが、技術の発展で情報が世界を飛び交うでしょ。便利なことはいいが、人間はうまく使いこなしておらず、情報の半分は虚構じゃないのか。各人がモラルを持ち、個を確立して自分を持たなければ、安藤先生のご指摘の通り、バラバラになってしまうんだ。

サミットで議長国となる日本は、経済大国という側面ではなく、「環境立国・日本」を世界に訴えるべきです。そこで自然と共に生きてきた日本人、すばらしい哲学をもった日本人を世界に発信したいと考え、「海の森」を世界中の人たちに見てもらおうと思っています。

先人の知恵に学び、多様な価値観をこの地球上にとどめ、そして自然の中で人間が生かされていることを自覚し、謙虚に生きていかねば。

安藤さんみたいな大建築家にしても、最後に求めるのは永久の真理だ。