https://d1021.hatenadiary.com
http://d1021.hatenablog.com

川本 裕子 早稲田大学教授
 民主主義国家においてなぜ中央銀行は独立性を持つべきなのか。国民主権の下で、金融政策が例外的に扱われる背景には、国家債務の膨張で中央銀行が信用拡大を余儀なくされた結果、インフレが頻発し、国民経済に大きな損失が生じた歴史的経験がある。一九七〇年代の世界的なスタグフレーション(失業とインフレの同時拡大)の経験を経て独立性強化は大きな潮流となった。その後、中央銀行が独立性を高める中で世界経済は持続的に成長し、今ではこの独立性は国際的に共通した制度設計として確立している。
<中略>
 他方で国民生活に大きな影響が及ぶ中央銀行に対し、政治的な支持が与えられる仕組みがないと、最終的に制度として社会に定着しにくい。中央銀行の大きな政策裁量と引き換えに、最低限の民主的な統制や説明責任の強化が求められるのはそのためだ。
<中略>
政策決定は常に後追いのタイムラグを伴う不完全な経済情報に基づくしかない。
<中略>
 こうした難しい政策判断を厳しい時間的制約の中で行い、国会など公的な場での説明や市場参加者とのコミュニケーションで信頼感を確立するには、深い知見・経験と、決断力、リーダーシップなどの高度な資質が求められる。
<中略>
 人格・識見双方が求められる中央銀行総裁人事で、国会審議に求められるのは、こうした資質の有無を実質的に吟味するだけでなく、総裁任命についての国民の納得感を形成することだと考えられる。
<中略>
人材に関する判断の難しさはポテンシャルをどう評価するかにある

日経新聞朝刊)