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【検証】中国側のあいまいな「要請」に振り回された日本政府 自衛隊派遣見送り

ホテルで朝を迎えた福田首相は、携帯電話を取りだして町村氏にかけ、強い口調で指示を出した。

 「最優先なのは、救援物資を早く送ることであり、自衛隊機を出すことではない!!」

「自分の真意と違う動きになっている」

町村氏や二橋正弘官房副長官らは「中国は猫の手も借りたいほどの状況なんだ」(政府高官)、「日中関係進展のシンボルになる」(外務省幹部)と判断。直後から緊急援助物資をC130輸送機で輸送しようという動きが出始めた。

 防衛省にも、中国側の要請に対し、「(自衛隊機を派遣してほしいという)特定の意思があったものでもない」(石破茂防衛相)との「疑問符」がつきまとっていたが、官邸サイドの指示を受け準備を進めるしかなかった。

 町村氏らは、首相の意図を誤っただけでなく、中国政府内の真相も把握し切れていなかった。

中国の武大偉外務次官が、「(国内事情を)忖度(そんたく)してほしい」「理解してほしい」などと述べたという。

首相は、記者団に対し「日中両国同士が話し合った結果、民間機が一番いい、ということになったのではないか」と他人事のようにこたえた。

震災被害が刻々と広がり、中国は日本のリストに沿って支援を次々と要請。唯一残っていたのが自衛隊だった。

 日本側は真意の確認を急いだ。「中国の国防省とは幹部級で合意。外務省とも様々なレベルで確認した」(日中外交筋)。これを受けて自衛隊機派遣でも問題は生じないとの結論を下し、町村信孝官房長官は二十八日の記者会見で派遣検討の表明に踏み切った。
 ところが、その日の夜になって中国側の空気が変わった。自衛隊機派遣を拒むわけでもないが、同意するわけでもない。そんな煮え切らない態度になり、日本側の楽観ムードは一転した。
 二十九日、北京での斎木昭隆外務省アジア大洋州局長と武大偉中国外務次官との会談。武次官が求めたのは、日本からの自衛隊機派遣案の「自発的な取り下げ」だった。

報道で「自衛隊機派遣」の文字が躍るのを見た首相は二十九日午後、横浜市から町村長官に電話し「慎重に」と諭した。

 だが、派遣計画が幻に終わった原因をたどると、やはり日本側の政治的思惑が先走ったことに行き着く気がする。中国内の根回しが不十分のまま日本側から情報が漏れたのは、そんな浮足だった空気があったからではないか。いま日本が第一に考えるべきは未曽有の大災害に接し、中国側と協力してどうやって一人でも多くの人命を救うかだ。

日経新聞朝刊)
自衛隊機派遣見送りに中国軍幹部が謝意

中国人民解放軍の馬暁天副参謀総長は31日、シンガポールで開催されたアジア安保会議で、日本政府が自衛隊機による四川大地震救援物資の輸送を見送ったことに関連して「(日本が)中国の歴史や伝統に理解を示してくれることに感謝している」と述べた。