【正論】早稲田大学教授 榊原英資 「この国のかたち」変えるには
今の日本は、実は、歴史の大きな曲がり角にありながら、過去の成功体験に引きずられて大きくシステムを変えることが出来ず、右往左往している状況だ。
今回の選挙は、是非、この国のかたちをどう変えるかで争うべきだ。
近代産業社会からポスト近代社会への移行なのだが、これは制度の大幅な組み替えを含む大作業になる可能性が高い。明治維新以来の日本の近代化システムをどう変えていくかということなのだから。
明治維新まで、日本は基本的に極めて分権的社会であり、江戸時代の幕藩体制は、分権国家の一つの完成型であったということが出来るのだろう。西欧列強による植民地化を防ぎ、日本を近代化・産業化するために東京を中心とした集権国家をつくったことは決して間違いではなかった。
再び、江戸時代的、というよりは日本の伝統である分権国家に戻るべき時ではないだろうか。
道州制は望ましくもないし、また、実現可能でもないだろう。
周知のように、財政権、行政権は藩にあり、幕府では老中たちが藩を監督し、外交・軍事権は強固だったが、財政的にはほぼ400万石の大大名にすぎなかった。
現在、地方分権のモデルにしなくてはならないのは明らかに江戸時代的「藩」であろう。筆者は明治4年の廃藩置県になぞらえて、廃県置藩と呼んでいるが、具体的には300前後の基礎的自治体と国の二層構造とするのが望ましいのだろう。
地域の文化や伝統もほぼ藩を基準にして残っている
この国のかたちを大きく変えていかないと、日本の未来はないし、今から取り掛からないと手遅れになってしまう。