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大前 研一氏 「禁じ手」を使わざるを得ない米国

 さて、ではこの協調利下げをどう評価するべきか。わたしはの見解は否定的である。「このようなことをしてもあまり効果がない」と声を大にして言いたい。現在、処置が必要なのは資金の流動性確保なのである。金利引き下げではない。流動性が確保できないと、取り付け騒ぎが起こったときに銀行は倒れてしまうからだ。

プレミアムとして5%くらい上乗せしないと貸してくれない。それが現在の相場といったところだ。

 それに「本当に危ない」とみられたら、いくら金利を上乗せしてもどのみち貸してくれるところはない。

 このG6中央銀行の利下げを決めたのは、バンク・オブ・イングランドのキング総裁や米国FRBバーナンキ議長たちだ。実は彼らは、ハーバード大学のクラスメイトである。だからわたしは「電話で相談して決めてしまったのではないか?」と見ている。

 しかし、彼らのようなマクロ経済学者たちの思考は狭い。マネーサプライと金利をいじることしか考えていない。逆に言えば、それしか操作できる手法を持っていないのだ。頭の中にはこの二つしかないものだから、わたしが言っているような流動性危機に対する政策といったものは、学者として経験したことがないのだ。金融機関の修羅場のなんたるかを理解していない。

 だからわたしは、金融機関に対して金利3%で無限の供給をしてあげなさいと言っているのだ。

現在の金融危機はフェーズ1である「流動性危機」の状況にあるということを認識しておいていただきたい。これからフェーズ2「不良債権問題」、フェーズ3「貸し渋りによる企業の倒産」と進んでいくわけだ。ところが、現在の各国中央銀行の対応がまずいために、フェーズ3(倒産、失業、不景気の継続)にいきなり突入していく可能性がある。

これでオバマ氏が大統領になれば、海外に出ている仕事を米国に戻そうするだろう。

 忘れてはいけないのは中国だ。中国は米国への輸出で経済が潤ってきた。そして中国の好景気が日本に中国特需を生んでいた。その中国がこけたら、当然日本にも大きな影響を与える。特に中国特需で潤っていたような重厚長大産業には直撃だろう。

 これらのことを常識的に考えれば、ワークアウトが終わるのに5年から10年はかかると考えていい。奇跡でも起こらない限りは――。

 FRBは10月7日に「民間企業の発行したCP(コマーシャルペーパー:企業が短期の資金調達のため発行する無担保約束手形)を買い取ってあげましょう」という新制度を発表した。

そうなれば、また米国債やドルを印刷することになる。それはドルの信用低下、希釈につながるのだから、状況はさらに恐ろしいことになるだろう。